小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

明治時代から〝オフサイトミーティング〟の場だった熱海こそ、ワーケーションやリトリートに最適な理由

2025.07.20

「熱海会談」や会議などビジネス会議の地として選ばれてきた熱海

4月にDMO(Destination Management Organization/観光地域づくり法人)の「熱海観光局」が発足し、静岡県初となる宿泊税を導入した熱海市。温暖な気候と豊富な温泉で知られ、美しい海岸線や新鮮な海の幸、おいしいスイーツなどで人気の観光地だ。昨今は観光だけでなく、ワーケーションやリトリート、“2拠点生活の地”としても選ばれている。

◎関連記事はこちら◎

DMO「熱海観光局」や「宿泊税」など熱海市の〝持続可能な観光〟の実現に向けた取り組み

旅先での観光や食事、宿泊は人々を幸せな気持ちにしてくれる。日常生活を離れ、リラックスやリフレッシュ、新たな発見ができる旅は、人々のウェルビーイング向上に欠かせな…

熱海と東京の2拠点生活、キシリトール・ブームの立役者が実践するウェルビーイングな暮らし

コロナ禍を経て定着しつつある、リモートワーク。新しい働き方から、2拠点生活や移住を始めた人も少なくない。「どこにいても仕事ができる」という環境は、生活拠点の選択…

あたみ桜/写真提供:熱海市役所

仕事でのパフォーマンスを最大限に引き出すため、または自分らしい生き方を追求するため――理由はさまざまだが、「拠点を切り替えることでよりウェルビーイングな生活を実現できる」と考える人々が、熱海を選んでいる。

梅園/写真提供:熱海市役所

熱海市では2013年から、JTBとの取り組みの一つとして個人旅行向けプラン『意外と熱海』を展開し、熱海を訪れた人が「意外とよかった」と感じるような隠れた魅力を発信している。24年からはこの『意外と熱海』をビジネス利用向けにリブランディングし、新事業『意外と熱海 for Biz』としてスタート。企業の研修プログラムや会議・研修会場、ワーキングスペース、宿泊施設、体験コンテンツの紹介・予約など、熱海でのビジネスのワンストップ窓口としてサポートしている。

熱海市庁舎/写真提供:熱海市役所

今回は、そんなワーケーションやリトリートの拠点としても選ばれる熱海について、熱海市長の齊藤栄氏に話を聞いた。

齊藤栄熱海市長

――熱海は観光だけでなく、ワーケーションやリトリート、2拠点生活の地としても選ばれています。熱海市とJTBでは『意外と熱海for Biz』も展開していますが、熱海がビジネスパーソンに選ばれる理由は何だと思いますか。

齊藤栄熱海市長(以下、齊藤)「熱海の強みは、やっぱりアクセスの良さ。これはもう断トツだと思っています。新幹線のこだまで、東京から50分。品川は40分弱で着きます。このロケーションがワーケーションにとって最大の利点だと思っています。

私はもともと東京の品川・戸越生まれで、ご縁があって20年前に熱海に移住しました。翌年に市長選挙があって今に至ります。住み始めた当初、まず何に驚いたかって、朝の美しさ。(家から)毎日、海が見えるんですね。そこから昇る太陽。海の暗いところから太陽が上がってくるんですが、上がる前はちょうどその海の上の空が七色になるんですよね。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……虹色になって、そこからだんだん明るくなっていく。毎日、その様子が違うんです。海は本当に刻一刻と表情が変わるので、毎日この太陽と海を見ると、『あぁ、今日も1日頑張ろう!』という気持ちになります。

四季の道/写真提供:熱海市役所

熱海はそういった、自然景観も個人的にはナンバーワンだと思っています。ですが、自然が美しい、海産物が美味しいというのは、全国あちこちにあるんですよね。ではなぜ熱海がワーケーションの地に選ばれるかというと、やはりアクセスの良さです。これは決して現代の話だけではなく、実は明治時代から熱海でワーケーションが行われていました」

――明治時代からですか?

齊藤「そうです。『熱海会談』といって、当時の初代総理大臣の伊藤博文や大隈重信が、熱海で会議をやっているんです。我々は『熱海会談』と呼んでいますが、熱海で国会の開設や明治憲法、新聞の発行など、いわゆる“国家の方針”になることを議論していたのです。きっと東京で会議するよりも、非日常空間でやった方が頭も冴えるし、楽しい。またエグゼクティブというか、やはり特別な人たちですから、そういった方々の中では別荘文化もあります。熱海に別荘を建てたり、高級旅館に泊まったりという記録も残っています。日本の明治維新以降のこの国の将来が、実は熱海で議論されていたのです。今でいう“オフサイトミーティング”ですね」

――そんなに昔から熱海でオフサイトミーティングが行われていたのですね。

熱海は明治時代からエグゼクティブ層による「熱海会談」が開かれていた

齊藤「昭和に入ってからは、パナソニックホールディングスを一代で築いた実業家の松下 幸之助さんが、全国の販売会社や代理店の責任者を招いて、熱海ニューフジヤホテルで会議を開いています。当時は深刻な不況で電機業界も厳しい経営状態だったようで、販売会社や代理店の責任者の不満を聞き、『結論が出るまで帰らない。何日でもやるぞ』と議論したそうです。どうしたら起死回生できるかという、復活をかけた会議が熱海で行われたわけです。政治家や企業経営者が、将来の日本や経営について議論する。当時はまだ“ワーケーション”や“オフサイトミーティング”なんて言葉もなかったですが、熱海は昔から、歴史的にもそういう場所なんですね」

ジャカランダ遊歩道/写真提供:熱海市役所

――ワーケーションの地としての歴史が長いですね。

齊藤「私が今、熱海で目指しているワーケーションやオフサイトミーティングの対象は、ビジネスエグゼクティブです。東京で企画を考えるよりも、このロケーションで海を見ながら、温泉にもいつでも入れるという“非日常の空間”でやった方が、切り替えもできて集中できると思います。歴史的にも熱海は重要な会議の場所に選ばれてきました。

ファミリー層や観光客、団体客、最近は個人客になっていますが、そうしたお客さまは基本的には週末にいらっしゃる。それに加えて、平日にビジネスエグゼクティブにも利用していただきたい。旅館を1棟貸し切った企画会議を、それこそ先ほどの松下幸之助さんの『結論が出るまで何がなんでもやるぞ』みたいな、そんな気持ちになれるような場所にしたいと思っています」

――熱海がビジネスパーソンにとっても重要な街であるということが分かります。

すぐに東京に移動できる利便性と自然や温泉を兼ね備えた熱海

齊藤「実は去年の4月に、この『意外と熱海for Biz』のキックオフイベントを東京で行ったのですが、ゲストとして経営コンサルタントの大前研一さんに来ていただきました。大前さんは私と大学が同窓でプライベートでも親交があるのですが、大前さんは実は熱海でホテルも運営していて、ご自身の別荘もお持ちです。このキックオフイベントで対談させていただいて、『なぜ熱海がビジネスエグゼクティブにとっていいのか』を語っていただきました。

世界で活躍されている方や、ビジネスエグゼクティブの皆さんは、何かあったらすぐ東京に帰らなければいけない。熱海の場合は、地震が起きても新幹線は一番早く復旧するでしょう。そしてこの非日常空間。これが熱海の持つ最大の強みだと思います。

今は宿泊者数が300万人と言っていますが、これ以上増やすのは簡単ではないと思っています。それは熱海に限らず、全国の温泉観光地で『コロナ前まで戻った』というところは本当に少ない。私も、“今までと同じこと”をしていたら戻らないと思っています。だから新しいお客さまを開拓していかないといけない。その新たなターゲットが『ビジネス利用』です。特に平日ですよね。週末は実はもうキャパシティがだいぶ埋まってきているので、平日に来ていただく。ワーケーションの場としての“新しい熱海”を作って行きたいです」

リトリートの地としても可能性のある十国峠「熱海には資源がある」 

十国峠から見える富士山/写真提供:熱海市役所

――ワーケーションは仕事のために活用するものですが、一方で、来ているけれど働かない、リトリートもあります。観光とも違い、温泉や瞑想、森林浴など、熱海を“充電の時間”として利用するビジネスパーソンもいますね。

齊藤「もちろん、熱海は観光やワーケーションとしての街だけではありません。私は基本的に、『熱海は人を癒す街』だと思っています。同じ静岡県でもエリアによって雰囲気が違うのですが、熱海はロケーション、自然、“気”のめぐりなど、基本的には人の心と身体を癒す場所だと考えています。

そういう意味では、例えば、十国峠はさらに人を呼び込めるコンテンツになると思っています。熱海市と函南町との境に位置する日金山の山頂、標高770mの低山なのですが、そこからまず富士山が見えます。そして“十国”ですから、伊豆、駿河、遠江、甲斐、信濃、相模、武蔵、上総、下総、安房の十国が見渡せるんですね。駿河湾と相模湾、静岡側と神奈川側の両方の海が見えます。超絶景で素晴らしいです。

気軽にハイキングができる十国峠/写真提供:熱海市役所

ケーブルカーやハイキングで上り下りができますし、本格的な登山靴などを用意しなくても運動靴で気軽に楽しんでいただける。グランピングもありますし、途中でビュースポットもあるため、それこそリトリートとしても活用できます。インバウンドのお客さまにも喜ばれる場所になると思います」

――観光でも仕事でもなく、“自分を整える場所や時間”として利用できそうですね。

十国峠は熱海の新しいコンテンツになると語る齊藤氏

齊藤「DMO『熱海観光局』のCEO・上田和佳さんにもお伝えしたのですが、十国峠のような場所で、ビジネスエグゼクティブの方などに、開発や企画合宿とは違う意味でリトリートしていただいて、リフレッシュしていただくことができるのではないかと思います。

また、昔は会社で運動会や飲み会をしていましたが、今はそういうこともなくなっています。このため、今は会社で『チームビルディング研修』ということを行っています。熱海であれば、その恵まれた自然環境を使って、例えば『誰が一番早く十国峠に登れるか』とか、漁船を1艘借り切って『どうやったらたくさん魚が釣れるかみんなで議論してください』とか、そういうチームビルディング研修を行うことも可能です。ロケーションと海、山、温泉、景観、食など、熱海にはそうした資源が全てそろっていますから」

ただ観光するだけでなく、ワーケーションやリトリートの地としても魅力が詰まっている熱海。非日常な場所で心身ともにリラックスし自分を整えることで、よりウェルビーイングな状態で仕事もプレイべートもバランスがとれるのかもしれない。

取材・文/コティマム 撮影/横田紋子

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年7月16日(水) 発売

DIME最新号は、誕生45周年のガンプラを大特集!歴史を振り返り、ガンプラが今後どのように進化していくのかを総力取材。プラモデル制作に役立つ〝赤い〟USBリューターの特別付録付き!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。