
学歴詐称疑惑の渦中にある伊東市・田久保市長が行なった謝罪会見が注目を集めた。特にその服装についてはかなり非難や批判的が集まっている。今回は、市長が謝罪会見でどのような服装を選ぶべきだったのか、また服装が持つ影響について考察していきます。
本来であれば、どのような服装で謝罪に臨むべきだったか
田久保市長が謝罪会見に臨むにあたって、本来ならば無難で落ち着いた服装、たとえば紺スーツなどが適切だった。というのも謝罪会見の本来の目的は、謝罪内容に注目してもらうこと。服装に目がいってしまうことで、会見の本質が伝わりにくくなるのは避けたいところである。
しかし、田久保市長が選んだのは「鮮やかなピンクのジャケット」だった。
年間100件を超える服装コーディネートを行なっているパーソナルスタイリストの勅使河原祐子さんは「視覚情報の重要性」について説く。
「謝罪という場においてピンクのジャケットはかなり違和感を覚えた人も多かったと思います。私たちが他者とコミュニケーションをする際、視覚からの影響はかなり大きい。『メラビアンの法則』によれば、コミュニケーションにおいて視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%という割合で影響を与えるとされています。謝罪の場で、ピンクのジャケットを選ぶことは無意識的に私たちが”抱く”イメージを壊してしまったと考えられます」
ピンクのジャケットはどのような時に着るべきアイテムなのか?
「ピンクは、ポジティブなシーンやブランディングにおいて効果的に活用できる色です。ピンク色は調和を象徴し、柔らかい印象を与えるため、特にセミナーやプレゼンテーションなど、人々の間に温かい雰囲気を作り出したいときには最適なカラーです。過去に経営コンサルタントの方のスタイリング提案を行った際にも、セミナー講師としての登壇において『暖かい雰囲気で参加者同士が和気藹々とワークに取り組めるような雰囲気作り』のために、ピンクのアイテムを提案し、好評を得た経験があります。
このようにピンクは確かにポジティブなシーンに適していますが、謝罪の場において『調和』や『温かい雰囲気づくり』は求められていません。自己のブランディングの観点から何か意図があったかもしれませんが、それ以上に、TPOをわきまえない人間というイメージを作り上げてしまった感は否めないでしょう」(勅使河原さん)
政治家と色と言えば、東京都知事の小池百合子さんのグリーンが印象的だ。
「小池さんはブランディングが非常に上手です。緑は清潔感、癒しといったイメージを共有できますし、小物としてさりげなく忍ばせることができます。ネガティブイメージを持ちにくいカラーなのもあらゆるシーンで着用可能です。TPOを選ばないブランディング戦略という意味では、多くの政治家の参考になる例かもしれません」(勅使河原さん)
謝罪の理想カラーは”紺”
政治家や芸能人など公の場で謝罪をする人はもちろん、ビジネスシーンや日常生活においても謝罪の場で最も重要なのは「違和感を与えないこと」だという。服装が謝罪の内容に集中できるようにするためには、以下のポイントを押さえておきたい。
「例えば、謝罪相手が年配の方の場合はTシャツはジャケットを着用していても悪印象を与えてしまうかもしれません。つまり一番違和感を与えないような服装が理想で、男性なら無地のスーツと白シャツ、女性なら白のブラウスにロングスカートが理想です。スーツやスカートのカラーを黒にしてしまうと重くなりすぎたり、喪服のような印象を与えかねないので、理想は”紺色”です。紺色は信頼感を与えるカラーかつフォーマルさを演出できます。迷ったら”紺”ということだけは覚えておきたいですね」(勅使河原さん)
謝罪の場での選択を間違えて批判されるのは政治家や著名人だけではない。彼ら・彼女らの失敗を自分の糧にしたいものだ。
取材・文/峯亮佑