
石破首相の妻・佳子夫人の服装について、SNSを中心にさまざまな意見が飛び交っている。特に批判が集まったのは、今年5月、佳子夫人が外交の場で『SNIDEL』(スナイデル)を身に纏い現れたことだ。SNIDELといえば、10〜30代に絶大な人気を誇るファッションブランドで「スナ系女子」という言葉も生まれる程にシンボリックなブランドである。佳子夫人は68歳。60代の女性が10〜30代向けの服を着ることに対して違和感を抱く人が多かったのだろうか。問題はそれだけではないと、ファッションのプロは解説する。
SNIDELという確立されたイメージと首相夫人のイメージとの間に大きなギャップ
年間100件を超える服装コーディネートを行なっているパーソナルスタイリストの勅使河原さんは次のように指摘する。
「今回の批判の一因には、”首相夫人”という立場に求められる服装とのギャップがあります。佳子夫人の服装が、親しみやすさを強調しすぎていた印象を受けた人も多いでしょう。スナイデルが若者向けの「モテ服」や量販ブランドであることを考えると、『首相夫人』という特別な立場には不向きだと感じる人がいるのも無理はありません。
首相夫人は、日本を象徴する”スペシャルな立ち位置”であり、本来、その服装もその立場を反映したものであるべきです。さらに外交の場では、自身をそのようにブランディングする必要もあるでしょう。ブランドイメージが強すぎるブランドや一目で『⚫︎⚫︎のブランドだ』とわかるような服は、あまり好まれません。代わりに、オーダーメイドとして仕立てられた着物であったり、知る人ぞ知るといったブランドを身につけるのがベストだったように感じます」
歴代首相夫人は、ファッションを通したブランディングが秀逸
佳子夫人のファッションに対して、過去のファーストレディたちの服装との比較から、改善の余地が見えてくる。たとえば、安倍元首相の妻・昭恵夫人は、日本のファッションブランド(ハナエモリなど)を積極的に着用しており、日本の文化を世界に伝える大きな役割を果たしていました。また、岸田前首相の妻・裕子夫人は、今のトレンドを意識しつつ、上品でさりげない服装をしており、特にジャケット使いが好印象を与えていた。
勅使河原さんは佳子夫人へ次のようにアドバイスをする。
「今後、佳子夫人の服装をよりファーストレディとして”らしさ”を演出するなら次のことを意識するのが良いのではないでしょうか?
・日本のデザイナーや伝統技術を活用したアイテム
・旬を意識したデザインや色味
・一目でブランドがわからないようなシンプルで上質なアイテム選
・ジャケットのバリエーションを増やす
特に、ノーカラージャケット+パンツやスカートの組み合わせが、華奢な体型により良くフィットし、上品かつ洗練された印象を与えてくれます。華奢な佳子夫人はカチッとした襟付きのスーツを着ると”着られてしまう”可能性があるため、少し柔らかい印象のアイテムが適しています」
佳子夫人は5月の批判を受けてか6月にカナダで行なわれたG7ではパンツスーツを着用していた。首相や首相夫人は日本の顔である。ファーストレディには、ファーストレディにふさわしいファッションがあるということを学んで欲しいものだ。
取材・文/峯亮佑