
今年6月に発表され、現在はベータ版によるテストが行われているiOS 26。UIが刷新されたAppleの次世代OSであるが、この記事で注目したいのは「通話スクリーニング機能」である。
筆者自身、様々な得体の知れない電話に対応せざるを得なかった場面に何度も遭遇している。明らかに台本を読んでいる口調で「NTTコールセンターです。お客様の電話番号は、契約更新料未納のため本日中にご利用ができなくなります」と言っていた。それ以上は聞くに値しない電話である。
が、そのような電話が頻繁にかかってくるとしたら——さすがに対応に難儀してしまう。迷惑電話を予め察知し、それに対応しないで済む機能があればどんなに便利か。そうした仕組み作りを、Appleはやろうとしているのだ。
固定電話を解約するシニア世代が相次ぐ
シニア世代の間での「固定電話の解約」が相次いでいるという。
これはTBS NEWS DIGの記事『“固定電話じまい”シニア世代の解約急増、背景にはセールスや詐欺電話の存在も…』に詳しいことが書かれているが、ある人の家の固定電話には営業の電話やその他迷惑電話しかかかってこず、それを回避するために固定電話の契約を打ち切ってしまう人が少なくないという。今や営業の電話しかかかってこないことが説明されている。「営業の電話」の中には、特殊詐欺につながるものも当然あるだろう。
ちょうど、筆者の自宅の固定電話にもそのような留守電録音が。今すぐ料金を払わなければ、この電話が止められてしまうらしい。てか、固定電話にはこのような変な電話しか来ない!
我が家ですらこのような具合なのだから、全国で固定電話の解約が相次ぐのは無理のない話である。そもそも、今やスマホの機能は固定電話のそれを大きく凌駕している。iOS 26の通話スクリーニング機能は、知らない番号から電話がかかってきた場合、まずは自動音声で相手の身分や用件を聞き出してから着信音を鳴らすという仕組み。相手が話したことは文字起こしされ、画面に表示される。それを見て電話を受けるか、或いは拒否するかを選択できるのだ。
この通話スクリーニング機能がiPhoneに実装されたら、「自動音声の営業電話」などはたちまちのうちに一掃されてしまうのではないか。
iPhone SE 2にも提供
「自動文字起こし」は、留守番電話という機能自体を生まれ変わらせたと言っても過言ではない。
相手が録音したことを、耳で聞かずに目で確認することができる。これにより、相手の発言をまさに一瞬で把握することができるようになったのだ。そして、通話スクリーニング機能とは言わば「留守番電話の延長線上」である。
フルスクリーンのスマホだからこそ実現できる機能とも言える。
iOS 26は、嬉しいことにiPhone SE 2に対しても提供される予定だ。SE 2は、中古市場ではトップクラスの人気を誇る機種。「初めてのiPhone」にSE 2を選ぶ人も少なくないだろう。それに対してOSのアップデートが告知されたということは、機種の延命が公約されたという意味である。
となると、こんなシチュエーションは想定できないだろうか。
「お母さん、中古のiPhone買ってあげるから固定電話解約しない?」と、東京在住の子が実家の母に呼びかける場面である。
固定電話は「財産」だった
固定電話は、かつてはそれ自体が財産だった。
より正確に書けば、携帯電話が普及する以前は電話加入権が高値で売買されていた。この電話加入権というものは借金をする時の担保にできるほどで、そのような金融業者も存在していた。この時代を知っている人からすれば、「固定電話を解約するのはもったいない」ということになりがちかもしれない。
が、上述のように最近では中高年世代でも「固定電話はもういらない!」と考える人が増えている。そして、iOS 26に実装される通話スクリーニング機能が広く知れ渡るようになれば、もはや固定電話に意義を見出す人は(法人や団体等を除いて)少数派になっていく可能性は大いにある。
「相手が言ったことを即座に文字起こしする機能」は、それこそ中高年世代に強く求められているものではないのか。言葉は音声よりも文字にしたほうが、確認も咀嚼も迅速かつ容易である。
過信はできないけれど……
ただし、特殊詐欺集団がこの通話スクリーニング機能の隙を突くような手口を今後考案する可能性も否定できない。
このあたりはやはり「いたちごっこ」という側面があり、犯罪の影を根から摘み取ることは不可能と言わざるを得ない。通話スクリーニング機能の文字起こしを逆手に取るやり方、即ち文字にしたら余計に不安を煽ることができるような文言を特殊詐欺集団が編み出す……ということも予想できる。
そうしたこともあるため、「通話スクリーニング機能を導入すれば特殊詐欺の電話を完全に防げる」と過信するのも良い判断とは言えない。
が、それでも「取るべき電話を事前に選定できる」という意味で、通話スクリーニング機能は我々の生活になくてはならないものになるかもしれない。
そんなiOS 26の正式リリースは、2025年秋に予定されている。
【参考】
iOS 26-Apple
“固定電話じまい”シニア世代の解約急増、背景にはセールスや詐欺電話の存在も…-TBS NEWS DIG
文/澤田真一