
アメリカのトランプ大統領が2025年7月7日、日本からの輸入品に対して8月1日より25%の関税を課すことを通知した。
この措置により、対米輸出金額は年間で4〜6兆円減少する、との報道もある中で、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から、最新の市場分析リポートが届いたので概要をお伝えする。
トランプ米大統領は日本などに新関税を通知、米国市場は株安、長期金利上昇、ドル高で反応
トランプ米大統領は米東部時間7月7日正午(日本時間8日午前1時)過ぎから、貿易相手国に新たな関税率の通知を始めた。
公表された書簡によると、今回対象となったのは14か国で、8月1日から適用される関税率は、日本と韓国、マレーシア、カザフスタン、チュニジアが25%、南アフリカ共和国とボスニア・ヘルツェゴビナが30%、インドネシアが32%などとなっている(図表1)。

7月7日の米金融市場の動きをみると、米関税政策に対する警戒再燃などから、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数は前営業日からそろって下落。主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も下落した。
また、米関税政策によるインフレ懸念が改めて意識され、10年国債の利回りは上昇(価格は下落)、米ドルも対主要通貨で上昇した。
■日本の税率は若干引き上げられて8月1日に発動へ、石破政権には対米交渉の進展が望まれる
日本は4月2日に公表された相互関税で、基本税率10%と上乗せ税率14%の合計24%を課されましたが、上乗せ税率は7月9日まで一時停止中のため、現時点では基本税率のみの適用となっている。
報道によると、8月1日から基本税率10%に15%が上乗せされ、合計25%の税率が適用される模様だ。また、日本宛ての書簡では、自動車や鉄鋼・アルミニウム製品などの分野別関税と、今回の25%の関税は別扱いであることが記されている。
トランプ氏にとって、関税はあくまで交渉材料であり、貿易相手国から譲歩を引き出し、通商上の成果を得ることが真の目的と思われる。
今回、米国は日本との交渉が難航するなか、税率を若干引き上げ、発動日を8月1日に設定し、日本に交渉の猶予を与えた印象だ。石破茂政権は7月20日の参院選の投開票日に向け、選挙戦の最中ではあるものの、対米交渉の進展が望まれる。
■日経平均は今朝落ち着いた動きに、目先は各国の対米交渉の行方や、トランプ氏の言動に注目
日本株は、昨年末から、日経平均株価が米関税政策の懸念などを背景に年初来安値をつけた4月7日までの期間、外需株より内需株、グロース株よりバリュー株、大型株より小型株のパフォーマンスが相対的に良好だった(図表2)。

ただ、4月7日から日経平均が年初来高値をつけた6月30日までの期間ではこれらがほぼ逆転した。今後、米関税政策への悲観が強まれば前者、楽観が強まれば後者のような動きになりやすいと思われる。
なお、米関税政策を巡り、米インフレへの懸念が強まれば米長期金利上昇とドル高・円安、景気悪化への懸念が強まれば米長期金利低下とドル安・円高に振れる可能性が高まると考えられ、ドル円はしばらく1ドル=140円から150円を中心とするレンジ相場が見込まれる。
本日(2025年7月8日:編集部註)の日経平均は朝方、プラス圏に浮上するなど、落ち着いた動きとなりましたが、目先は、各国の対米交渉の進展度合いや、引き続きトランプ氏の言動が注目される。
構成/清水眞希