
大願成就を願って神社を巡拝し、受けた神玉を紐でつなげるなどしてお守りにする神玉巡拝。まるで『ドラゴンボール』を探し求める冒険のような企画が、2020年元日から茨城県日立市、高萩市、北茨城市一帯で始まった。現在は関東を中心に北海道、東北、東海、中国地方の全13地域で取り組まれている。
神玉巡拝を始めた地域の各神社には、幅広い年齢層の人たちが巡拝のため訪問。Instagramには約1万5000件の関連投稿がされるほど話題を呼んでいる。
神玉巡拝の企画に関わった大甕(おおみか)神社(茨城県日立市)で禰宜(ねぎ)を務める朝日正敬さんは、企画の経緯を次のように明かす。
「地域の神社を巡り、それぞれの神社が持つ歴史と地域の魅力を知ってもらうために、地元の若い神主が中心となり企画しました」
大甕神社が参加する常陸國多賀郡 神玉巡拝は現在10の神社が参加。御朱印集めで訪れた参拝客が神玉巡拝を始めるようになり、クチコミやSNSなどを通じて広く知られるようになった。
福島県いわき市で実施している神玉巡拝では、今まで参拝客がほとんど訪れなかった真弓神社に多くの参拝客が訪れるようになった。市の観光協会も協力し、観光スポットを紹介する冊子やグルメマップをつくって参拝客に配布。神玉巡拝を軸に地域を盛り上げようとしている。
「これほど多くの神社が参加し、いろんな地域で盛り上がるとは思ってもいませんでした。地方の小さな神社は参拝客を集めることが難しいので、参拝客を増やすことと地域を盛り上げることのきっかけとして共感いただけたのかもしれません」
はるか昔から、人々は神社を巡拝する道中で食事や観光を楽しみ、その地域の文化に触れてきたのだそう。このまま神玉巡拝ブームが広がれば、おのずと各地の観光も盛り上がり、地域活性化に一役買うことは間違いないだろう。
神様の御力が宿った「神玉」とは?

神社を巡り参拝することで願いごとが研ぎ澄まされ、進むべき道が開けてゆく。巡拝の証として受けとることができるのが、各神社ならではの印や文字が記された木製の玉=「神玉」だ。写真の神玉は発祥の地である常陸國多賀郡 神玉巡拝に参加する10神社のもの。
全国13地域で神玉巡拝が楽しめる!
茨城県北部の神社で2020年から始まった神玉巡拝。翌2021年には北海道札幌市、江別市、北広島市の7神社による北海道神玉巡拝が始まった。それから各地の神社で注目され、現在は全国13地域で行なわれるまでに広がった。地元の神玉をすべて集めた後は、県外の神玉巡拝へ出向く人もいるという。

発祥となったのは茨城県旧常陸國多賀郡の大甕神社
現在は10の神社が参加しているが、当初は7神社で始まったことからSNSなどで『ドラゴンボール』にたとえられた。大甕神社のほか、艫(とも)神社(日立市)、高萩八幡宮(高萩市)、花園神社(北茨城市)などで神玉を受けることができる。

奥州相馬では最多の12神社が神玉を展開
福島県の浪江町、飯舘村、南相馬市、相馬市、新地町に所在する12神社で実施されている奥州相馬 神玉巡拝。巡る神社は神玉巡拝を行なう地域の中でも最多数である。路線や高速道路に沿って、ほとんどの神社が一直線上に連なり位置する。

インバウンド人気が見込めそうな富士山麓の神社参拝も!
富士山麓神玉巡拝は7神社で実施。参加神社のひとつ、新倉(あらくら)富士浅間神社(山梨県富士吉田市)は春になると、境内にある新倉山浅間公園の展望デッキから富士山と桜と五重塔(忠霊塔)が一度に眺められることで世界的に有名である。

取材・文/大沢裕司 編集/井田愛莉寿