
人間の感覚器官の不調は、内臓不調とは違うダメージがある。「目が見えなくなってしまったらどうしよう」とか、「このままずっと聞こえないままだったら」と想像するのは辛い。特に耳の不調は単に聞こえなくなるだけではなく、自分の出す声や、何かを飲み込んだ時など、絶え間のない違和感がある。生活の質へのダメージが大きい。目と同じく機能が失われると再生できない点では、耳も同じで、重要な器官なのに、案外、そのケアは忘れられがちなのである。
イヤホン・ヘッドホンが原因の耳トラブル
そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前病院院長の内尾紀彦先生によると、「耳トラブルは夏に多くて、2023年の厚生労働省の調査でも12万人が外耳炎になっています」と言う。先生によると、こうした耳トラブルの原因には大きく3つあり、1)イヤホン・ヘッドホンの長時間利用、2)耳掃除のし過ぎ、3)高温多湿な環境、が耳トラブルを引き起こしていると分析している。
NTTソノリティ(東京都新宿区、代表坂井博氏)が全国の男女500名を対象にしたアンケート調査によると、夏のイヤホン・ヘッドホン利用は87.4%。一日1時間以上、イヤホン・ヘッドホンを利用している人は48.3%で、実際にイヤホン・ヘッドホンによる不快感を感じたことがある人は43.2%もいた。
しかし、不快感を感じても、対処をしたことがある人は17.1%で、我慢をしている人は54.6%。何もしていない人を合わせると82.9%の人は何も対策をしていなかった。こうした実態を前に、内尾先生は「耳ケア」の必要性を訴えている。
「耳トラブルの原因として高温多湿な環境をあげましたが、特に梅雨や夏の高温多湿な環境や、プールやシャワーと言った物理的な刺激からも、外耳道が湿ってふやけ、皮膚のバリア機能が低下してしまい、外耳炎になりやすくなります」(内尾先生)
外耳炎は耳の入り口から鼓膜までの外耳道部分の皮膚が、細菌や真菌(カビ)に感染して炎症を引き起こす病気である。
最近はイヤホン・ヘッドホンの長時間利用が増えていること。そして、汗で湿ったイヤホンを耳の中に無理に押し込んだり、耳掃除のし過ぎで摩擦や擦れから細菌感染するリスクが増えていると内尾先生は注意を呼び掛けている。夏のヘルスケアというと、ほとんどの人がUVや暑さ、汗対策で、耳をケアをする人は全体のわずか11%と低い。夏こそ耳対策は必須であると内尾先生は言う。
「耳のトラブルは放置しておくと、外耳道真菌症といって耳カビが発生しやすくなったり、炎症が長引き、治りにくい状態になる慢性化の危険があります。さらには腫れや膿によって外耳道がふさがれ、一時的に聞こえが悪くなる聴力低下を招いたり、重篤な合併症(中耳炎や内耳炎、側頭骨にまで炎症が及ぶ悪性外耳道炎など)を引き起こし、重症化する可能性もあります。耳にかゆみや違和感を感じたら、がまんや無理をせず、医師と相談してください」と呼び掛けた。
セルフチェックで自分の状態を知る
実際に自分の耳はどんな状態になっているのか、内尾先生とNTTソノリティは「セルフチェックシート」を作成した。まずはチェックしてみよう。
チェックが0~1点の人は「快耳ゾーン」、2~4点が「潜在不快ゾーン」、5~8点が「予備軍ゾーン」、9~12点が「ケア必要ゾーン」、13~15点が「医療介入推奨ゾーン」である。500人が行ったデータでは、下記の通り、予備ゾーンが10人に一人という結果となった。
調査を行ったマーケティング&クリエイティブ・コミュニケーションGディレクター清野裕美さんによると、「ある研究ではイヤホン表面の細菌数は便座の20倍というデータもあります。これは例えるならば生乾きの靴下や、長時間履いたレインブーツの中と同じぐらいのレベルです。耳トラブル予防のためにも、オープンイヤー型はお勧めです。通気性が高く蒸れにくいので外耳炎リスクは軽減されます」としている。
耳をふさがないオープンイヤータイプは、耳の中に入れるイヤーピースが無いため、耳の中がかゆくなりにくい。外耳炎の予防につながるだけでなく、周囲の音が聞こえるため、安全性も高くなる。「実際にオープンイヤーを使っていただいた方からは、涼しさを感じているとか、耳への負担が無い、イヤホンに耳垢が付かないといった声を頂いています。アンケートでも実に半数近くの方がイヤホンやヘッドホンで不快感を感じている人がいる中、ぜひオープンイヤータイプを試していただきたいですね」(清野さん)。
NTTソノリティの音響ブランドnwm(ヌーム)のオープンイヤー型デバイスは、通話や通信の課題解決から生まれた音の技術を駆使して開発された。独自のPSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)技術はある音波に対して180度位相を逆転させた波形を重ねると音が消える原理を応用して、音を閉じ込めて音漏れを抑えている。イヤホンなのにまるでスピーカーのような新体験を提案する「耳スピ」として、7月末まで対象商品を購入した33人に一人、1万円のキャッシュバックを行うなどのキャンペーンを実施している。
内尾先生のアドバイス「毎日の耳掃除をやめて」
最後に、内尾先生からビジネスパーソンへのアドバイスがある。「耳ケアでやりがちなのですが、よく、お風呂から出た時に綿棒などで耳掃除を習慣にしている人が多いのですが、これは注意が必要です。日本人は耳掃除が好きな人が多いのですが、海外では耳掃除はしない方が良いとされている国がほとんどです。
耳垢や古い皮膚は自然に排出されます。耳掃除は月に1~2回程度、見える範囲を優しく拭うぐらいで十分です。汗をかいた後や水泳・入浴後は清潔なタオルで耳の入り口や耳介を優しく拭きとります。どうしても不快感がある場合は、ドライヤーの冷風を耳から30センチ以上離して数秒程度風をあててみてください。
耳のためには、過度な耳掃除をしないことと同時に、疲れとストレスをためないこと、睡眠不足に注意が必要です。最近、ストレスを感じるビジネスパーソンにメニエール病の人が増えていますが、リンパの流れがよくなる有酸素運動が効果的であることがわかってきました。運動はおすすめです。
多くの人がメニエールになったかな?と感じる最初の気づきは、聞こえが悪い、めまいがする、耳鳴りがしたりふさがった感じがする、ふわふわした感じがする、です。そうした症状を感じたら、すぐに病院に行って欲しいと思います。
最後に、絶対にこうなったら病院に来て欲しいという症状があります。耳垂れの症状が出た時や、痒み、耳がふさがった感じがしたり、聞こえが悪くなったら、ぜひ病院で診察を受けてください。耳鳴りも、一日以上続く時は何らかの病気が隠れていることがあるので、医師に相談して欲しいと思います」と教えてくれた。
内尾紀彦(うちお・のりひこ)先生
そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院院長。耳鼻咽喉科専門医、 日本音声言語医学会認定音声言語認定医、めまい相談医。 東京慈恵会医科大学を卒業後、同大学の耳鼻咽喉科学教室、JCHO東京新宿 メディカルセンター、富士市立中央病院耳鼻咽喉科での勤務を歴て、2021 年7月から「そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院」院長に就任。 フジテレビ「めざましテレビ」、テレビ朝日「ミュージックステーション」 などメディア出演多数
文/柿川鮎子