
筆者の親は80代半ば。3年前に27年続けてきた仕事から離れて、ようやく自分の時間が持てるようになり、現役時代にできなかったことに精力的に向き合っています。心身ともに健康で、まだしばらくの間は元気に過ごしてくれると思う反面、「いざ」がいつ来るかわからないという不安にもかられます。これはアラ環世代にとって、共通の悩みといってもいいのではないでしょうか。
高齢者のケガの多くが自宅内で発生しているとか、それをきっかけに認知症を発症する人もいるという話を聞くと、やはり元気なうちに安全への対策が万全な住まいへの住み替えの大切さも感じます。
最近、よく目にする「シニアレジデンス」は高齢者向けのサービスや設えが魅力的に映りますが、引っ越しには大きなストレスがかかるのではないだろうか、引っ越しした先で新しい人間関係をうまく作れるだろうか、食事は口に合うだろうか、小さいことも子どもとしては気にかかるのではないでしょうか。
そこで今回は、1990年に創設されて以来、人気施設であり続ける千葉県夷隅郡御宿町にある介護付有料老人ホーム(入居時自立)「ラビドール御宿」を訪ねました。
約1万400坪という広大な敷地にわずか204室の環境が生む「ゆとり」
東京駅から特急で約80分。JR御宿駅からラビドール御宿の専用バスで5分ほどで「ラビドール御宿」に到着します。ラビドール御宿がある御宿台は別荘地として開発されたいわばリゾート地。そのため周辺の道路は広々としていて、手入れもしっかりされており、またデザイン性の高いきれいな家が並んでいます。高い建物もなく、高台に開けたつくりで、空は広い。早くも居心地の良さを感じます。
建物に一歩入った際のロビーの天井は2階分の高さがあり、大きく取られた天井窓から外光が差し込みます。ここでも“開かれた”印象を受けました。
ラビドール御宿が開設したのは1990年。バブルのころを知る者としては、さすがバブル期らしい贅沢な空間の使い方に感心させられます。いまは効率が優先される傾向にありますが、曲線の多いデザインは往時の設計の魅力です。
敷地面積は約1万400坪と広大で、その6割は庭園として、四季折々の景色を楽しめるように整えられています。敷地には多少のアップダウンはありますが、それも「歩こう」という気持ちにさせ、健康のためにもちょうどよい塩梅です。またその高低差が木々に奥行きをもたらし、庭を豊かに見せる効果を発揮していました。
朝の散歩で鳥のさえずりに耳を傾け、午後は庭園のベンチで読書を楽しみ、夕方には海からの風を感じながら1日を振り返る。そんな「自然と触れ合える時間」が楽しめそうです。
ロビーではスタッフと立ち話に興じる入居者が多いのに驚きます。見ていると、外出先から戻っておしゃべりに興じ、食事が終わっても入居者同士でも話が弾み、すぐに部屋に戻らない様子から、仲の良さがわかります。社会との関わりは気持ちにハリをもたらし、他者との活発なコミュニケーションは認知症予防にも役立つとはよく聞きますが、こうした小さなふれあいが「老け込ませない」一助になっているのだな、と感じました。
35年以上の歴史が築いた「本物のノウハウ」と、変わらないスタッフたちの温かさ
ラビドール御宿が開設した1990年、有料老人ホームは全国で200~300棟ほどでした。そして35年を超える間に1万7000棟とその数を増やしています。
新しい施設には最新の設備が揃い、その新しさや快適さに大きな価値を見いだせそうですが、介護付有料老人ホームのパイオニアともいえる存在であり、長年の経験から生まれるスタッフの細やかな配慮と成熟した対応力は短期間に実現するものではありません。
ここには開設当時から勤務するベテランスタッフが多数在籍しています。入居の相談から日々の生活サポートまで、すべて同じスタッフが一貫して担当するのも大きな特徴です。一般的な高齢者施設では、その多くで営業部門が現地ではないところで活動しており、とそのため、入居までの担当と入居後の担当が変わるということが起こり、入居後に違和感を覚えることもあるそうです。
しかし、ラビドール御宿では入居前に担当したスタッフが、そのまま入居後の暮らしもサポートします。ホームスタッフは、時には一緒にゴルフやテニス、俳句を楽しむ仲間になることもあります。
こうしたコミュニケーションの積み重ねをもっとも感じられるのが、「名前を呼ぶ」こと。「入居者を名前で呼ぶなんて、当たり前のことでしょ」と思うかもしれませんが、入居から日が浅くてもフロントのみならず、レストランスタッフまで名前で呼ぶのだとか。これは体験入居をしている人にも同様だそうで、「名前を呼んでくれる安心感が入居の最後の一押しになった」という人もいるそうです。
入居者同士の心地よい刺激「知的コミュニティ」
一方で、入居者主導の勉強会「雑学の集い」は、いわば「ラビドール大学」で100回を数える長寿企画となっています。これは単なるレクリエーションではありません。入居者の方々が持つ豊富な知識と経験を分かち合い、互いに刺激を与え合う「知的コミュニティ」なのです。こうした文化は、一朝一夕では生まれません。長い歴史の中で育まれた、ラビドール御宿ならではの財産といえます。スタッフも「ついていけないほど高度な内容」と苦笑いするほど充実した内容は、入居者の方々の知的好奇心がいかに旺盛であるかを物語っています。

施設内には、温水プールやテニスコート、陶芸室、ビリヤードなど、レクリエーションに対応した共用施設が整っています。またサークル活動も活発で、とくにゴルフサークルのメンバーは15人、月1回の定例ゴルフ会も行われているそうです。なかには年間60回以上ラウンドするというツワモノも。また釣りが趣味という人は、漁港へもクルマで5分ほどの距離という地の利を生かして、海に出ているそうです。
最期まで「自分の部屋」で過ごせる安心感と、家族のような絆で結ばれたコミュニティ
元気なうちから入居する場所としての価値を大いに感じますが、果たして「いざ」という段階になったらどのような生活が待っているのでしょうか。
多くの施設では、介護が必要になると「介護棟」への住み替えが必要で、その際に、それまで暮らしていた部屋に住む権利が失われる施設もあります。またサービス付き高齢者向け住宅の場合は、介護サービスを受ける際は、近隣の介護サービス事業者と別途契約をしなければなりません。
しかしラビドール御宿は違います。敷地内にケアセンター「アンシャンテ」を併設しており、介護が必要になり、暮らす場所が変わった場合でも、元の居室の権利は終身にわたって継続されます。
一時的に具合が悪くなり、ケアセンターに移ることもありますが、頭のどこかに「いつでも自分の部屋がある」という安心感は、何物にも代えがたいものでしょう。当然ながらリハビリへの意欲も自然と高まり、実際にその気持ちから一般居室に戻られる方も少なくありません。また敷地内にはラビドールクリニックが併設され、亀田総合病院とも連携しているので医療面でも安心できます。万が一の際には御宿霊園内にラビドール御宿墓苑もあり、御宿の豊かな自然のなかで永眠することもできます。
平均的に90%という高い入居率を維持し続けているのは、こうした「本物の豊かさ」があるからこそ。
案内してくれた担当者は「入居を急いで決める必要はありません」と、過去の入居者のエピソードを教えてくれました。
「ラビドール御宿は四季によって、違った表情を見せるんです。ですから、おすすめは春夏秋冬、それぞれの季節でお泊りいただくこと。いろんなシーンを見て、感じていただけば、入居してから、『こんなはずじゃなかった』ということもなくなります。入居者のなかには10年近く幾度となく通われて、入居を決めた方もいらっしゃいます」
すぐに決めなくていい。だからこそ、まずは体験入居や見学会に親を誘い、シニアレジデンスの本質を確認してみてはいかがでしょうか。
介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)「ラビドール御宿」
https://www.laviedor.or.jp/
所在地:千葉県夷隅郡御宿町御宿台132
交通:JR外房線「御宿駅」より専用バス5分(1日8便運行)
事業主体:一般財団法人千代田健康開発事業団
開設:1990年(平成2年)
入居要件:60歳以上、自立の方
敷地面積:34,360平米(10,393坪)
土地・建物権利形態:事業主体保有(抵当権なし)
一般居室:204室(全室個室/S・M・Lタイプ 41.23平米~67.40平米)
介護居室:ケアセンター「アンシャンテⅠ・Ⅱ・Ⅲ」40室 (全室個室/18.0m²~23.4m²)
入居一時金:一人入居の場合2590万円~5590万円(利用料は全額前払い)
特別サービス費用(介護費用):473万円(税込)
月額利用料:15万7800円(税込)
居住の権利形態:利用権方式
医療体制:ラビドールクリニック併設(医師3名、看護師9名常勤)
協力医療機関:(1)一般財団法人千代田健康開発事業団付属診療所(診療科目/内科、協力科目/内科 協力内容/日常の診療、定期健康診断及び健康相談、他の医療機関への紹介、夜間緊急待機) (2)医療法人鉄蕉会 亀田総合病院(診療科目/内科、外科、脳神経内科、呼吸器内科等全35科 協力科目/診療科目と同じ 協力内容/通院・入院への協力、一般財団付属診療所への医師派遣、看護指導)
介護保険:千葉県指定介護保険特定施設、千葉県指定介護予防特定施設
一般型特定施設である有料老人ホームの介護にかかわる職員体制/2:1以上
取材・文/小泉庸子