
2025年6月に発売されたのが、軽ハイトワゴンのパイオニアの1台である7代目となる新型ムーヴ。プラットフォームにダイハツ最新のDNGAを採用し、6代目までのリヤヒンジ式ドアから両側スライドドアを備えたハイトワゴンとなり、カスタムグレードを廃し全グレードともに”カスタム寄り”の同一エクステリアデザインとなったのが大きな特徴だ。新型ムーヴの概要については、すでにこの@DIMEで報告済みだが、ここでは新型ムーヴのNAエンジンを搭載する主力グレードのXと、ターボエンジン、RSとGグレードのみに備わる電子パーキングブレーキ&オートブレーキホールド機能、全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)、LKC(レーンキープコントール)、CTA(コーナリングトレースアシスト)などを標準装備するRSの2モデルを都内の一般道、首都高速道路で試乗した印象をお伝えしたい。
NAエンジン搭載のXは乗り心地が快適
まず乗ったのは52ps、6.1kg-m、WLTCモード燃費22.6km/Lを発揮するNAエンジン搭載のXだ。新色のグレースブラウンクリスタルマイカのボディカラーはじつに高級感と立体感があり、7代目ムーヴがターゲットにする50~60代のユーザーにもぴったりだと思えた。開発陣に「いい色ですね」と伝えたところ、思わぬ情報が得られた。というのは、このグレースブラウンクリスタルマイカの塗装は凝っていて、クリアコートに黄色を混ぜることで、深みのあるブラウンを発色するとともに、ハイライトで白飛びしない見映えを実現しているのだそうだ。
運転席に乗り込めば、まずはたっぷりとしたサイズ、ソファ感覚のシートのかけ心地の良さが好ましい。シートフレーム、クッション密度はムーヴキャンバスやタントと同じものらしいのだが、シート表皮を伸びやすい素材とし、体への当たり、体の心地よい沈み込みによる自然なホールド感を狙ったそうだ。その目的は見事に達成されていると言っていい、文句なしのシート、いや、軽自動車最上級のかけ心地が得られるシートだと感じた。
インパネの質感、インパネ周りの収納の豊富さはさすがダイハツの軽自動車であり、平均点以上。1眼メーター周りのインフォメーションの視認性も文句なし。しかし、ドア内張りのプラスチッキーさが、「いかにもコストダウンしました」と感じられ、惜しまれる部分。
旧来型の”足踏み式パーキングブレーキ”を解除して市街地を走り出せば、出足から軽やか、スムーズに加速する。すでに説明したシートのかけ心地の良さ、そしてマンホール、段差などの乗り越えをマイルドにこなしてくれる不快な突き上げ、ショック皆無と言っていいDNGA×14インチタイヤによる乗り心地の良さ、扱いやすいパワーステアリング穏やかな反応、加えてエンジンノイズやロードノイズの抑え込みによる車内の静かさなどによって、じつに快適な走行感覚を味わうことができた。ダブルAピラー前側の細さによる斜め前方の視界、そして後方視界も文句なしだった。
が、首都高のゲートに向かう急こう配に差し掛かると、とたんに印象は変わる。ダイハツのNAエンジンはトルキーで日常域ではなかなかの走りっぷりを示してくれる・・・というのが、ボクのこれまでの印象だったのだが、登坂路ではいきなり非力感が顔を出したのだ(前を走る新型ムーヴRS=ターボモデルはスイスイと登っていった!!)。つまり、登坂路ではかなりエンジンを高回転まで回す必要があるということだ。救いは、その場面でもエンジンノイズが不当に高まらないことだが、オールラウンダーとは言い難い動力性能に感じることになった。もちろん、平たん路では不足ない動力性能である。
高速道路に入ると荒れた路面でも乗り心地の快適感は失われず、ジョイントの乗り越え、いなし方もなかなか。カーブでのグラつき感も意外なほど少なく、安定感はなかなか。運転初心者でも不安なくカーブを曲がれるようにしつけられている。さらに、強風のレインボーブリッジで感じられたのは、ハイトワゴンにして意外なほど横風に強いということ。ふらつきなくビシリと直進してくれたのだから恐れ入る。