
PayPayポイントは、ある意味ではクローズドなポイントサービスである。
PayPayもしくは同サービスが提供するクレジットカードを利用した場合でしかPayPayポイントが発生せず、それ故に「何かしらの理由でPayPay以外の決済手段で買い物をした」という人には厳しい仕組みだ。筆者自身、普段はPayPayを使ってはいるが、時としてモバイルSuicaを使ったり、WAONを使ったり、たまに現金を使ったり……ということはある。そんな場合にもPayPayポイントが付与されるというのなら、確かに好ましい話だ。
6月23日、東北・北関東を中心に店舗展開するドラッグストアチェーンの薬王堂が「PayPayポイントアップ店」という取り組みを開始した。この取り組みの中で、PayPay以外の決済手段へのポイント付与も始めるに至ったのだ。
決済手段を問わずPayPayポイントが!
「ポイントを貯めてますか?」
実店舗での買い物の際、店員からそう声をかけられる機会はよくあるはずだ。楽天ポイントやdポイントなどは、他社の決済サービスや現金での決済の場合もポイント付与を認めている。PayPayで支払いつつ、受け取るポイントは楽天ポイントを選択する……ということも可能だ。
しかし、逆に楽天ペイで支払ってポイントはPayPayポイント……ということはできない。いや、より正確に言えば「一部店舗では既に開始され、全国的にはこれからできるようになると思われる」。冒頭に説明した通り、薬王堂が既にこの取り組みを開始し、今後は同様の仕組みが全国の各種店舗にも拡大すると見られている。
では、具体的にどのような手順でポイントが付与されるのか?
有人レジでの会計の場合、まずはPayPayポイントを貯めたいという意思をレジ店員に伝える。ここでPayPayのバーコード画面を店員に見せ、それをスキャンしてもらう。その後、支払いがPayPayの場合は再度のスキャンは不要。PayPay以外の決済サービスであれば、それを店員に提示する。もちろん、現金決済でも構わない。
この仕組みを取り入れている店舗は、上述の通り今のところは薬王堂のみである。が、これは見方を変えれば「新しい仕組みの実証実験」であり、日本全国の実店舗で同様の仕組みが取り入れられるのは時間の問題と考えていいだろう。
「ポイントお付けしますが」の質問に感じる煩わしさ
ただ、筆者個人はこの仕組みに対して心配している点もある。
それは、レジ作業がより面倒になっていくという現象に対する懸念だ。
現状でも、「決済方法を問わないポイントサービス」のせいでレジ店員に毎回余計な質問をされてしまう事態に筆者は遭遇している。
名を出してしまうと、サンマルクカフェはレジでの会計の際に必ず「ポイントをお付けしますが、いかがでしょうか?」と聞かれる。旧Tポイントと旧Vポイントが併合する前のウエルシア薬局みたいな具合に、とにかくレジで会計を済ませようとする度に同じ質問が待っているのだ。積極的にポイントを貯めているというわけではない人にとっては、ちょっとした煩わしさを感じる部分ではないか。
このあたり、レジ店員にとっても相当な負担になっているのではと邪推してしまう。いや、「邪推」どころか間違いなく負担になっているだろう。そう言い切れる理由は、筆者はスーパーマーケットの店員や選挙の投票所スタッフをした経験があるからだ(投票券を配る際は、必ず「衆議院選挙小選挙区の投票券です。候補者の氏名を書いてください」と一人一人に声をかけなければならない)。
どのような決済手段にも対応するポイントサービスが複数存在するせいで、血の通った人間に負荷を与えてしまっている現実は受け止めなければならない。
となると、PayPayポイントに限らず「どんな決済方法に対してもポイントを付与する」という仕組みは、セルフレジに組み込まれてこそその価値を十二分に発揮するのではないか。
決戦場は家電量販店!?
が、一方で「ポイントをお付けしますが、いかがでしょうか?」が利用客から大歓迎される状況を想定することもできるはずだ。
家電量販店での数万円単位の買い物などは、まさに「ポイントを付けてくれ!」と利用客が叫び出すような状況だろう。1回に数万円の買い物をすれば、還元されるポイントも数千円分に上るのが普通だ。これを故意に逃す人は、あまりいないだろう。
したがって、今後この仕組みが大手家電量販店で取り入れられた時――そう、まさにこの時がPayPayポイントにとっての「ターボ発動」の瞬間ではないか。現時点でPayPayがそのような企画を予定している(または公表している)というわけではまったくないが、振り返ってみればPayPayという決済サービスは良くも悪くも家電量販店を舞台にしたキャンペーンで知名度とユーザー数を獲得してきた。
これからPayPayポイントが楽天ポイントやdポイントを一気に出し抜くシナリオがあるとしたら、その決戦場はやはり家電量販店ではないか。
いずれにせよ、この新しい取り組みをきっかけに今までとは毛色の違うキャンペーンが打ち出される可能性があることは考慮しておくべきだろう。
【参考】
「PayPay」の支払い以外でも「PayPayポイント」が貯まる!「PayPayポイントアップ店」が実店舗で誕生-PayPay
文/澤田真一
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