
スマホやPCの画面を拡張するデバイスとしては、長らくモニターが一般的であったが、近年新たに、ARグラスと呼ばれる、眼鏡型のデバイスが登場し始めている。
VRゴーグルのように、仮想世界に没入するためのヘビーなデバイスがある一方で、眼鏡型のARグラスは、現実世界に空間ディスプレイを落とし込むように使えるのが特徴だ。
そんなARグラス市場を引っ張る、XREALというメーカーをご存じだろうか。日本市場参入からは5年が経過し、積極的な展開、ローカライズで、2024年の総記事数は4000超、Amazonでの検索キーワードは、AR部門で、年間平均70%を超える、今大注目のメーカーだ。
そんなXREALが、新たに「XREAL One Pro」を発表。発売は2025年7月24日で、直販価格8万4980円となる。XREAL One Proは、1月に発売されたXREAL Oneの上位モデルという位置づけで、新たに設計された光学モジュールを搭載することで、視野角を広くしながら、より扱いやすいARグラスになっている。
ARグラスってどんなデバイス?
ARグラスのXREAL One Proや、ベースモデルとなるXREAL Oneは、スマホやPCと有線接続し、拡張ディスプレイとして利用できるデバイス。パッと見の印象はほとんど普通の眼鏡だが、よく見るとレンズ部分に光学モジュールが搭載されており、ディスプレイの投影ができる。
目の前の空間にディスプレイを投影するため、かなり大きな画面として出力できるのが、ARグラスの特徴。一般的なモニターのように、設置場所を必要としないため、デスク上の省スペースに役立つ。もちろん、軽量な眼鏡型であるため、屋外に携帯していけば、そのまま自宅に近い作業環境が構築できるのも魅力だ。
近年は、そんなXREAL上で動くソフト、アプリを開発する企業も多く、AIを活用し、3D映像のキャラクターと対話ができるアプリなども登場している。XREAL One Proの体験会場では、登録している人物を視野にとらえた際に、その人の名前や会社名、役職といったパーソナルな情報を表示するアプリなども体験できた。
通常使用であれば、仮想ディスプレイとして活躍するのに加え、アプリが拡充していけば、スマホやPCではなかなか実現できない世界観を提供してくれる未来も見えてくる。眼鏡型デバイスは、非常に期待感のある市場ともいえるだろう。
「XREAL One Pro」は新しい自社開発光学モジュールで薄く、軽く、広く
XREAL One Proには、XREAL自社開発の光学モジュール「X Prism」が採用されているのが、大きなアップデートポイントだ。これにより、従来モデルよりも薄く、コンパクトな設計になり、質量は44%減少。視野角は57度まで広がっている。
ディスプレイ表示は、メーカー公称値で最大428インチとなっているが、目の前に空間ディスプレイを表示するという性質上、そこまで極端に、特大のディスプレイが置かれるというわけではない。あくまで視認性を確保した状態で、視線いっぱいにディスプレイが広がるようなイメージだ。
また、従来モデルの課題でもあった、真下や側面からの光の侵入、反射に強くなっており、屋外での使用がより快適になった。光学モジュールの刷新に伴い、ユーザーの瞳孔間距離に合わせ、MサイズとLサイズが選択できるようになっているのも、ありがたいポイントだ。
画面表示は、32:9のウルトラワイドや、21:9のワイド表示に対応しており、コンテンツに合わせた表示が可能。解像度は1920×1080のフルHDで、最大120Hzリフレッシュレートに対応。画面輝度は最大700ニトに向上している。
視線に合わせ、画面が追従して動いてくれる表示モードに加え、空間の一定位置にディスプレイを固定して表示するモードも選択できる。調光機能は、表示コンテンツの後ろで、周囲の状況がしっかりと見える0%、ややぼんやりと見える35%、コンテンツのみが暗闇の中に浮かんでいるように見える100%の3段階から設定できる。
スピーカーには、前モデルと同様に、BOSEの音響チューニングが施されている。具体的な数値は公表されていないが、音質もしっかりと向上しているとのことだ。発表会場での視聴は、周囲のノイズも大きく、難しい環境であったが、しっかりとコンテンツの音声を聴きとることはできた。自宅で映画を楽しむといった使い方であれば、基本的にストレスは感じないだろう。
XREALとグーグル、クアルコムが共同開発する「Project Aura」にも期待
XREALは、グーグルのAndroid XRを搭載するスマートグラス「Project Aura」の開発も進めていることが、グーグルの開発者向け会議「Google I/O 2025」でも発表されている。
具体的な展開時期として、2026年にアメリカでの発売を予定しており、XREAL創業者の徐馳CEOは、日本でも26年の早い段階で発表したいと意気込みを見せた。
発売されれば、Android XRとして初の光学シースルー型ARデバイスとなり、GeminiといったAI機能も搭載予定。プロジェクトにはクアルコムも参画しており、Snapdragonとの連携も予定されている。
取材・文/佐藤文彦