
一般的にタンパク質とプロテインは同じ意味だが、タンパク質が栄養素を指すのに対して、プロテインはタンパク質を含む食品全般を指すことが多い。タンパク質の需給バランスが崩れ、世界的なタンパク質不足が起きる可能性をプロテインクライシスという。2030年頃から2050年頃には、タンパク質の需要が供給を上回る可能性がある(注1)という認識が少しずつ浸透してきた。
食用タンパク質には動物性と植物性があり、植物性は動物性に比べるとCO2排出量が少なく、水資源の消費が少ない上、健康面でも心臓病のリスク低下といった効果がある。最近では動物福祉への関心も高まり、動物性から植物性タンパク質への切り替えは、必須の流れとなってきた。
植物性プロテイン飲料は国内でも大手各社が参入したことで市場競争が活発化している。2024年時点で約696億円。2033年には1,345億円規模まで拡大すると予想されている。植物性プロテイン飲料はどういった目的で摂取されているのか。また、効果的な飲み方について管理栄養士で日本抗加齢医学会指導士の森由香子先生に聞いてみた。

過去7年で市場規模約530%の伸長を実現
実際、プロテインユーザーはどのような目的でプロテイン飲料を摂取しているのだろうか。江崎グリコ健康イノベーション事業本部健康事業マーケティング部マネージャー江川直さんによると「筋肉増強やスポーツのためだけでなく、日常の健康的な体づくりニーズが拡大しています。日々積極的にプロテインを摂取している層の約半数は、日々の健康的な体づくりを目的に摂取しています」と教えてくれた。
そうした背景を受けてプロテイン飲料は拡大し続け、過去7年で市場規模約530%の伸長を実現している。

植物プロテイン飲料というと長い間、大豆原料のソイミルクが中心だったが、エンドウ豆や玄米などの雑穀など、さまざまな原料の商品が登場してきた。その中でも最近注目されているのが、アーモンドが原料のアーモンドミルクである。
アーモンドミルク市場は2014年から10年目の2023年までに、約800%という急成長を実現している。植物プロテインドリンクとしてそのまま飲用するだけではなく、特に粉末プロテインの割り材としてアーモンド飲料を利用している人が多かった。
マネージャーの江川さんによると、「私どもでは一粒で二度美味しいフレーズにしたアーモンドグリコを1955年から発売し、日本人にはあまり馴染みがなかったアーモンドを国内に広めた歴史があります。 1958年にはアーモンドが粒のまま入ったアーモンドチョコレートを発売し、主力商品になりました。そして2017年にはより美味しくアーモンドの栄養を摂取できるよう飲むアーモンドとして『アーモンド効果』を発売しました」と言う。
『アーモンド効果』はお菓子の原料だったアーモンドを、健康利用したいと考える消費者向けに開発した飲料で「飲むアーモンド」というキャッチフレーズで展開している。独自のアーモンド凍結粉砕技術などを使って、飲みやすく仕上げた結果、国内アーモンドミルク市場で、売り上げナンバーワンの商品となった。さらに今月から植物性プロテインを配合した『アーモンド効果PROTEIN』を新発売している。

ビジネスパーソンにプロテインが必要な理由とは
注目を集めている植物性プロテイン飲料だが、動物性に比べると吸収スピードがゆるやかで、食事替わりや間食として最適であると、栄養士の森由香子先生は言う。
森先生は日本抗加齢医学会指導士として、アンチエイジングに役立つ食事や飲料についても指導しているが、アーモンドミルクは特にビタミンEが含まれ、抗酸化作用により体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助けることが可能だと言う。
さらに、最近は特に若いビジネスパーソンの間で朝食を欠食し、毎食たんぱく質を摂っていないといった実態についても、注意を呼び掛けている。
「毎日忙しいビジネスパーソンにとって、植物性プロテイン飲料はエネルギー、たんぱく質がとれて筋肉量維持、低下を予防出来る可能性があります。たんぱく質はとりたいけれど、脂質や糖質はとりたくないという生活習慣病を気にしている方に、植物性プロテイン飲料はとてもよいと思います。
動物性プロテインは接種スピードが速いので運動前後に摂取し、植物性プロテインは食事替わりや、お腹が空いた時に摂取すると言う様に、使い分けるとさらに効果が増します。
そして、大事なのは骨格筋量や筋力を増加させるためには、推奨されているたんぱく質の『摂取量を確保することが重要』だ、ということです。量を問題視した方が良いのです。必要なたんぱく量は毎食20-30gで、 競技選手では体重1kgあたり1.2~2.0gです。ご自身の日常生活で摂取できているか、振り返ってみるのも良いでしょう」とアドバイスしてくれた
また、森先生はたんぱく質と同時に、食物繊維の必要性にも注意してくれた。「令和5年国民健康栄養調査によると、食物繊維が足りなくて、30~49歳男性は、平均17.9gとなっています。2025年食事摂取基準の目標量は、22g以上だから、平均値で見ても、少ないのです。
『アーモンド効果』のように、食物繊維が含まれるドリンク材を上手に取り入れながら、一日に必要な目標量を満たすことは、とても大事です。食物繊維は特に腸活に貢献できます。腸が健康であれば免疫機能も整い、元気な体をつくってくれますよ」と教えてくれた。
飲むだけで手軽にヘルスケアが実現する植物性プロテイン飲料。江崎グリコによると、『アーモンド効果』は現在、日本だけでなく中国、台湾、タイ、フィリピンに輸出されており、今後は6月にマレーシア、9月にシンガポールでの発売も予定している。牛乳、豆乳に続く第三のミルクとしての地位は、確実視されている。
注1:農林水産省フードテックをめぐる状況 令和6年11月大臣官房新事業・食品産業部

管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士 森 由香子先生
東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻) 修士課程修了。日本サルコペニア・フレイル学会会員・日本認知症予防学会会員・日本排尿機能学会会員・日本時間栄養学会会員。
医療機関をはじめ幅広い分野で活動中。クリニックで、入院・外来患者の栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導、フランス料理シェフとの病院食や院内レストランの共同メニュー開発、料理本の制作などの経験をもつ。食事からのアンチエイジングを提唱し、「かきくけこ、やまにさち」Ⓡ食事法の普及につとめている。著書に『最新版 老けない人は何を食べているのか』『60歳から食事を変えなさい』(以上青春出版社)、 『健康診断の数値がよい人は何を食べているのか』(廣済堂出版) 『100 年長生き食 料理が苦手でも、ひとり暮らしでもできる!』(Gakken)、『老けない身体をつくる 「朝のダブルたんぱく」習慣 』(すばる舎)など多数。
森由香子のパーソナル栄養指導
文/柿川鮎子