
Amazonが提供する音楽ストリーミングサービス「Amazon Music Unlimited」に、2025年6月26日より新たなサービスがスタート。音楽だけでなくオーディオブック「Audible」のコンテンツも楽しめるようになり、リスニング体験がさらに充実した。
「Amazon Music Unlimited」に新たな魅力が加わった
そもそも「Amazon Music」は、「Amazonプライム」会員が追加料金なしで楽しめる音楽コンテンツ。1億曲以上の楽曲やプレイリストを広告表示なしにシャッフル再生でき、人気のポッドキャストも楽しめる。
「Amazonプライム」と言えば、Amazonの配送無料の特典が際立っているが、「Amazon Music Prime」に加えて、映画やTV番組が楽しめる「Prime Video」、写真を容量無制限で保存できる「Amazon Photos」なども用意されている。料金は月額600円または年額5900円だ。
一方、「Amazon Music Unlimited」は、「Amazon Music Prime」のすべての機能に加えて、HDというプレミアムな音質でオンデマンド再生できるサービス。お気に入りのアーティストのアルバムをすべて聴くなど、楽曲を指定して聴くことができる。料金はAmazonプライム会員の場合、月額980円または年額9800円。プライム会員以外は月額1080円になる。このほか同時に6台まで利用できるファミリープランも用意されている。

この「Amazon Music Unlimited」の会員やファミリープランの会員であれば、「Audible」の高品質なカタログから、毎月1 冊のオーディオブックを楽しめるようになった。これはアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドでの展開に続くもの。1 冊の長さは問わず、いつでも好きなタイミングで再生し、翌月も引き続き聴くことができる。もちろん新たに別の1 冊を選ぶことも可能だ。
もっとオーディオブックを楽しみたい場合は、「Audible」から個別に作品を購入したり、会員になることもできる。「Audible」には世界中の人気作品90万冊以上が揃っていて、聴き放題のプレミアムプランは月額1500円になる。

「Amazon Music」や「Audible」の日本での展開
サービス開始の前日に行なわれた「Amazon Music × Audible プレス発表会」では、Amazonのアメリカ本社から「Amazon Music」と「Audible」の責任者が来日。それぞれのサービスの日本市場について説明した。
「Amazon Musicは世界中で毎日、数百万人のお客様にご利用頂いています。日本のAmazon Music Unlimited会員数は過去5年間で約3倍に増加しました。私たちはライブ配信、限定グッズ、渋谷に開設した多目的スタジオ『Amazon Music Studio Tokyo』での新しいコンテンツの展開などを通じて、アーティストが新しいファンにリーチできるよう支援しています」と、Amazon Music統括責任者 ライアン・レディントン氏。
昨年の「FUJI ROCK FESTIVAL」のライブ配信は数千万回の視聴者数と、これまでのフェスのライブ配信で最も多くの視聴者数を記録。最近、刷新した「Japan Top 50」のプレイリストは、再生回数が以前より60%増加するなど、その実績についても説明した。
「Audibleは日本でローンチしてから10周年。日本は世界でも最も成長が著しく、重要な国のひとつとなっています。そこで村上春樹氏の作品の独占配信権を獲得。東野圭吾氏とのコラボレーションで、オーディオファースト作品も制作しています。最近では黒柳徹子氏の『窓際のトットちゃん』にもデジタル技術で命を吹き込みました。今後も大手出版社やクリエイターとの共同制作で、日本向けのコンテンツを拡充していく予定です」と、Audible CEOのボブ・キャリガン氏。
Audibleの強みは、ベストセラー、フィクション、ライトノベル、ビジネス書など、90万タイトル以上の圧倒的なコンテンツ量。これらのオーディオコンテンツをプロの声優や俳優などの声で楽しむことができる。聴き放題の提供を始めた2022年1月と2025年5月末を比較すると、会員数は166%に増加。リスニング時間は7倍以上にもなっている。2025年にリリースするタイトル数は前年の40%増を見込んでいると言う。

発表会には新しい学校のリーダーズほかゲストが登場
発表会にはゲストとして、新しい学校のリーダーズ、SUPER EIGHTの安田章大、小説家の平野啓一郎が登場。「Amazon Music」や「Audible」の仕事を通じて感じたことや、オーディオコンテンツの魅力などについてトークセッションを行なった。
「Audible」で多くの作品を配信し、「複雑な世界で、より善く生きる」をテーマにした学びシリーズ「A University」をプロデュースした平野啓一郎氏は、「耳で聴きながら物語世界を想像する場合、どの程度のことまで理解できるんだろうかと、書いて読む小説とは異なる部分を感じます。一方で朗読だとリズムに乗せられていくみたいな部分があって、理屈よりも音に納得させられてしまうことがあるんじゃないかと思います。一番いいところは、ながらができるようになること。集中する時間がないから文学作品から遠ざかっているという人に、通勤時間や料理を作ったりしながら聴いてほしいですね」と語る。
湊かなえの「夜行観覧車」を朗読した安田章大氏は、「字から入ってくる情報と、耳から入ってくる情報は感じ方が違うと思います。耳は敏感なので、情景が浮かんだり、匂いがしてきたりと、いろんな感受性が引き出されます。僕自身、五感、六感を使っていく中で耳はすごく頼りにしているポイント。相手に気持ちを伝える時にも空気の振動を得て感情が揺さぶられることがあるので、声で伝えられるのがAudibleの一番の強みだと思いますね」。
Amazon Originalの「BABY」をリリースした新しい学校のリーダーズは、「私たちの楽曲を日本だけではなく世界の皆さんに届けたい。その部分をAmazonさんに協力いただいているのは本当に感謝です。声で何かを表現するというのは、アーティストとしては歌やMCがありますが、朗読というのもひとつのカテゴリ。このアーティストがこの本を読んだらどうなるんだろう。そんなワクワクするエンターテインメントのひとつのカテゴリとして確立されていったら楽しそうだなと思います」とSUZUKA氏が語った。

取材・文/綿谷禎子