
東京都心は再開発が進み、新築マンションの平均販売価格が1億円超えるという報道がなされている。最近では品川エリアに全戸1億円超のマンションが販売され、その倍率の高さが大きな話題となった。
では、東京23区全体の平均平米単価はいくらで、また、特に平米単価が伸びた区はどこだろうか?
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」はこのほど、2025年におけるLIFULL HOME’Sで掲載した東京23区の新築マンションの平均価格を区単位で発表した。
ついに東京23区全域で平均平米単価が100万円以上に!上昇率は葛飾区が港区を上回る

マンション価格はエリアや立地だけでなく、同じ建物でも部屋ごとに価格や面積が異なるケースが多いため、平均価格の1平米(m²)あたり平米単価を算出し、比較した。
2025年1-5月の新築マンションにおいて東京23区全体の平均平米単価は207.4万円、前期比120.1%となった。区ごとでみると23区のうち9割の21区で前期の価格を超え、最も平米単価が伸びたのは葛飾区(前期比155.3%)で、港区(同142.%)、大田区(同140.2%)が続く。葛飾区は前期に23区で唯一平米単価が100万円を切っていたが、39.5万円となり、今回23区全域で平米単価が100万円以上になった。
平均専有面積は66.67m²となり前期よりも1.14m²広くなった。23区で専有面積が最も広いのは中央区の82.87m²で、80m²を超えたのは港区(81.83m²)の2区のみだった。5m²ごとに見ると75~80m²は2区(世田谷区、目黒区)、70~75m²は5区(江戸川区、新宿区、文京区、板橋区、渋谷区)、65~70m²は4区(杉並区、中野区、大田区、豊島区)、60~65m²は5区(千代田区、北区、足立区、練馬区、江東区)、55~60m²は3区(品川区、荒川区、台東区)となった。
55m²を下回ったのは葛飾区(50.39m²)、墨田区(45.15m²)の2区のみだった。23区の6割にあたる14区の平均専有面積は65~75m²に収まり、さらに平米単価が高い中央区や港区をはじめとした都心エリアでは平均面積が広い傾向にあることがわかった。
広がる東京23区の平均平米単価帯、再開発によりわずか2年間で5階層へ拡大。固定化されつつある上位の価格帯に加わったのは?

2023年から2025年の平均平米単価の推移をみると、2023年の価格帯は上位・中堅・標準1・標準2といった4階層に区分でき、中堅~標準価格帯に20区が集まっている。2025年には平米単価の上昇に伴い、最上位、高価格帯の階層が加わり、標準2がなくなり5階層となった。また、2023年の平米単価の最高価格と最低価格の差は180.7万円だったが、2025年は314.9万円と同じ23区内でも差が大きくなっていることがわかる。
このなかでも港区は2023年に上位価格帯に位置していたが、単独で抜け出し、2025年には他の区を大きく上回り平米単価400万円超の最上位価格となっている。また、2023年には上位価格帯に位置していた渋谷区や千代田区が高価格帯に移行し、中堅価格帯の区も上位価格帯へ伸長している。複数の億ションが供給されている中野区は2年で平米単価が100万円以上上昇し、山手線内を中心とした区が集まる上位価格帯に加わった。
23区内では複数の再開発が並行して進んでいるため、今後も新しい価格帯の登場や平米単価の価格帯内での入れ替わりがあるかもしれない。
LIFULL HOME’S総研 副所長/チーフアナリスト中山登志朗(なかやま としあき)氏 考察コメント

2023年以降定期的に公表している東京23区の新築マンション価格推移ですが、コロナ明けから年を追うごとに価格上昇が顕著になり、今年の東京23区平均は1億4,402万円、平均坪単価も685.6万円と坪600万円の大台を突破し、前年比+20.1%の大幅上昇となりました。3年連続して平均価格が1億円突破という異例の価格水準で、更に上昇する傾向が顕著です。
また、平米単価の価格帯別に推移を追うと、2023年時点ですでに平米単価200万円を突破していた千代田区、港区が2025年にはさらに320.7万円および424.3万円まで上昇しており、僅か2年の間に各々1.2倍、2.0倍に急騰しています。同じく中央区では約1.9倍、文京区は約1.2倍、渋谷区も約1.8倍となっていますが、新宿区は約0.9倍とやや下落しており、同じ都心の行政区でも価格変動に違いがあることがわかります。
なお、都心周辺では品川区が約1.3倍、中野区も約1.8倍に2023年から面積単価が上昇し、豊島区が約1.6倍、荒川区が約1.7倍、台東区が約1.5倍など、都心隣接エリアの価格が特に強含んでいます。つまり、都心の価格が急騰することで利便性の良好な隣接エリアの価格も連動して上昇し始めているのです。
本来、マンション価格は利便性に応じて価格の高いところほど下がり難く、価格の低いところは下がりやすいという特性があるのですが、この状況が続く限り、今後は価格水準が東京23区では標準的な板橋区や練馬区、足立区、江戸川区など、城東・城北エリアの行政区でも価格が明確に上昇し始めるものと考えられます。
一方、マンションを販売するデベロッパー各社は価格の急騰に対してほぼ東京都心部および周辺部での新規供給に絞り込み、国内外の富裕者層および投資(投機)目的の購入者など、ほぼ限られた購入者層に向けて物件販売を継続しています。結果的に新規供給は今後漸減し、2025年は首都圏の新築マンション分譲が2万戸を割り込む可能性もあります。
実需層は東京23区“外”での購入、および都内で中古マンション、リノベーションマンションの購入を専ら検討することになりますが、中古マンション価格も連動して上昇しており、一般的な給与所得者層の都内でのマンション購入はハードルが極めて高い状況と言えます。
ほぼ都心に限られていた“局地バブル”が徐々に周辺エリアにも拡大していることが明確に示されたデータです。
<調査概要>
・集計対象:東京都内で分譲された新築マンションのうち、LIFULL HOME’Sに広告掲載された物件を行政区&自治体単位で集計
・集計期間:2024年1~5月および2025年1月~5月を比較し対前期比を算出
・集計条件:専有面積30m²未満の住戸および平均専有面積が30m²未満の分譲期は除外
・集計方法:各マンションにつき、分譲期ごとに最高価格/面積と最低価格/面積を抽出し平均値を算出
出典元:LIFULL HOME’S
構成/こじへい