
いろいろ言われてはいるが、政治家は5万円以下なら領収書なしでもOKだ。一方で一般の会社員や個人事業主はそれが通用しないため、そういった経費精算の不公平に関することがニュースやトピックスになることが多い。
登録者数110万人超のYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原由一氏は、30歳以上70歳未満の男女全国1000名を対象に「経費精算における領収書・レシートの扱い」についてアンケート調査を実施して、その結果と解説を発表した。これをもとに一般の人に関する領収書に関する勘違いや「都市伝説」について考えてみよう。
7割弱が「領収書またはレシートをもらう」派

「経費立替や経費精算のために日頃から領収書やレシートをもらうことはあるか?」という質問では、もっとも多かった回答は「レシートだったり領収書だったりをもらう」(66.2%)だった。「レシートではなく、何でも領収書をもらう」という領収書派は14.7%で、「まったくもらわない」という人も19.1%いたという。レシートか領収書をもらう人は8割を超えていたという。
領収書に関する“間違い”を5割超が経験

日頃から領収書やレシートを受け取っていると答えた808名に、「領収書に関して間違った処理をしたことはあるか?」を質問すると「特にあてはまるものはない」(49.1%)が最多だった。残りの50.9%は何らかのミスを経験しており、もっとも多かったのは「クレジットカードのレシートを領収書の代わりとして使っていた」(29.0%)だった。ほかにも「電子データで送られてきた領収書を紙に出力して保管していた」(16.1%)、「折半した飲食代をまとめて領収書でもらい、全額を経費処理した」(14.5%)、「高額な外注費を現金で支払い、領収書を発行した」(13.7%)、「交通系ICカードを私的利用に使いながら、旅費交通費として処理した」(6.6%)といった回答があった。
3割が領収書やレシートをなくして経費にできなかった経験あり

「領収書やレシートがないために経費に計上できなかった経験はあるか?」という質問では、「特にない」(54.3%)が多数だったが、45.7%は何かしらの理由で経費計上を断念していたことがわかったという。理由としては、「領収書・レシートの紛失」(30.8%)、「自動販売機の利用」(23.8%)、「慶弔費」(8.0%)、「海外でのチップなど」(6.4%)が挙がった。約3割が龍収書やレシートを紛失したことで経費精算をあきらめていたという。
“領収書の都市伝説”を税理士の菅原由一氏がコメント
菅原氏によれば、経費に関する「領収書は必ずもらわないといけない」や「レシートより領収書が安心」など誤った情報(=都市伝説)は世の中にあふれているという。こうした誤解は、脱税につながる可能性もあるので、正しい領収書・レシートの扱い方をきちんと学ぶべきという。菅原氏による経費精算の都市伝説についてのコメントは次の通り。
・都市伝説1:とにかく「領収書」をもらえば安心?
「じつは「領収書さえあれば経費になる」という考えは大きな誤解です。特に手書きの領収書は、税務調査で不正を疑われやすい傾向があります。実際、税務署は筆跡や支払いの裏付けまで確認するケースもあります。逆にレシートは購入内容の内訳が明記されているため、証拠能力が高く、信頼性があるとされています。例えば飲み会などで折半した代金を代表者が立て替え、全額分の領収書をもらって経費処理するとこれは明確な脱税行為です。一方、レシートであれば、人数や明細が記載されているため、より適切な証拠となります」(菅原氏)
・都市伝説2:クレジットカードの利用明細も領収書代わりになる?
「クレジットカードの利用明細やレシートは、正式な領収書・レシートとしては認められないケースが多いので注意が必要です。経費処理には正式な書類が必要となるため、カード利用の場合もできる限りレシートや領収書を保管しましょう」(菅原氏)
・都市伝説3:高額な外注費も現金払いでOK?
「外注費のような高額な支出は、基本的に銀行振込で支払うのが原則です。現金で支払った場合、領収書の信ぴょう性が疑われる可能性が高く、税務署が厳しくチェックすることもあります。手書きの領収書は特に注意が必要で、不自然な取引と判断されれば「架空経費」として脱税認定されるリスクもあります」(菅原氏)
・領収書が出ない場合はどうする?
「自動販売機の利用や慶弔費、海外でのチップなど、領収書が発行されないケースもあります。その場合は、日付・内容・金額・領収書が出なかった理由を明記したメモを残しておけば領収書代わりになります」(菅原氏)
・電子領収書・請求の保管ルールにも注意が必要!
「現在、電子データで受け取った領収書や請求書は、電子データのまま保管することが義務づけられています(電子帳簿保存法)。ファイルを作成し日付も記録して、検索したらすぐに取り出せる状態にしておかなければ、経費として認められません。但し、現在は猶予期間中のため、紙での保存も認められていますが、厳格化されたときに備えて、電子保管への移行を進めておくことが望ましいでしょう」(菅原氏)
・その他の注意点
「Suicaなどの交通系ICカードを使った個人の買い物(交通費以外)も旅費交通費としてまとめて経費処理すると脱税になります。税務署に相談した際は、担当した人によって回答が変わることもあるため、「誰が・いつ・どのように」回答したかを必ず記録しておくことが重要です。巷にあふれる「領収書の都市伝説」に惑わされず、正しい知識とルールに基づいて経費処理を行いましょう。不安な点がある場合は、税理士や専門家への相談をおすすめします」(菅原氏)
■菅原由一氏プロフィール

1975年、三重県生まれ。東京都在住。2022年12月に開設したYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は、チャンネル開設から2年2か月で登録者数100万人を突破。ブログ 『脱!税理士 菅原のお金を増やす経営術!』は全国税理士ブログランキング第1位を獲得し、アメブロ【公式】トップブロガーに選任。主な著書は『究極の資金繰り』、『激レア資金繰りテクニック50』(共に幻冬舎)など。2024年に発売した『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』は、刊行から9か月で累計発行部数10万部を突破するヒットを記録。
■「経費精算における領収書・レシートの扱い」調査概要
調査期間:2025年6月13日
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国の30歳以上70歳未満の会社員(正社員)、経営者・役員、自営業、自由業の男女
サンプル数:1000名
出典:「脱・税理士スガワラくん 調べ」
構成/KUMU