
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では、6月末現在、蔦屋重三郎が吉原から日本橋への進出を開始。出版プロデューサーとしての彼の更なる活躍が描かれていく模様ですが、大河ドラマファンに超オススメの展覧会が千葉市美術館で開催中です。
その名も「江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」と題された浮世絵展で、7月21日(月・祝)まで開催されています。
蔦重の人柄や彼が生まれ育った吉原について知り、浮世絵黄金期の名品に浸る
展覧会名に「蔦屋重三郎」と銘打っているように、本展は蔦重に関連した浮世絵の名品をたっぷりと鑑賞することができます。

「第1章 蔦屋重三郎という人物」と「第2章 蔦重を育んだ吉原と遊女のイメージ」では、蔦重の出版プロデュ―サーとしての人柄や技量、また蔦重が生まれ育った吉原について伺い知ることのできる作品を展示。

「第3章 吉原の本屋から『版元蔦屋』誕生へ 安永から天明期の浮世絵」「第4章 蔦重の偉業 歌麿、写楽、長春のプロデュース」「第5章 蔦屋が活躍した豊穣期」では、浮世絵界における蔦重の功績がわかると作品群とともに、蔦重と同時代に活躍した版元らが手がけた浮世絵を鑑賞することができます。




広々としたスペースに作品がゆったりと展示されていて間近に観ることができるので、歌麿の絵入狂歌本に施された凹凸の空摺(からずり)や写楽の役者絵のキラキラ光る雲母摺(きらずり)を上下左右、さまざまな角度からじっくり鑑賞できます。
浮世絵の進化を版画と肉筆画で総覧。〝浮世絵の教科書〟ともいえる展覧会
また、今年は「べらぼう」人気を見込んで浮世絵展が全国各地で開催されていますが、本展では、浮世絵の初期から蔦重の活躍した多色摺の錦絵が大きな発展を遂げた黄金時代を経て、その後〝世界のUkiyo-e〟へと進化するまでの浮世絵史を辿ることができます。
前述した蔦重関連の作品のほかに、会場内の「プロローグ」と「エピローグ」のコーナーでは、蔦重が活躍した前後の時代の浮世絵が展示されており、浮世絵の始祖といわれる菱川師宣から多色摺の錦絵を創始した鈴木春信、蔦重が発掘した喜多川歌麿や東洲斎写楽、そして、蔦重の没後に大活躍した葛飾北斎、渓斎英泉、歌川広重ら、人気絵師の作品をまんべんなく鑑賞することができるのです。


また、通常、浮世絵展というと、浮世絵版画の展示が主になりがちですが、本展では他展と比べて肉筆画が多く展示されているのも大いに注目すべきポイントです。師宣の「美人立姿図」や6曲1双の「墨田川・上野風俗図屏風」をはじめ、歌麿の「納涼美人図」など、唯一無二の貴重な肉筆画も鑑賞することができます。
このような贅沢な展示が可能なのは、千葉市美術館が国内でも有数の浮世絵コレクションを所蔵しているからです。同館は1995年にオープンしましたが、その設立は1985年に渓斎英泉作品のコレクター兼研究者であった今中宏氏の250点から成るコレクションを取得したのがきっかけ。以後、現在に至るまでに寄贈や寄託も含めて約2500点余りの浮世絵を所蔵しています。
講座や多色摺体験、演奏会も開催。「重ね捺しスタンプ」も観覧記念におすすめ
さらに、本展では会期中に以下のイベントも開催されます。
■7月12日(土)/美術館学芸員による市民美術講座
「浮世絵の誕生からジャポニスムまで」をテーマに開催(展覧会チケットにて聴講無料)
■7月13日(日)/美術館ボランティアによる「多色摺木版画立ち寄りワークショップ」
浮世絵の多色摺の技法を体験(無料)
■7月20日(日)/千葉交響楽団メンバーによる「弦楽四重奏コンサート」
大河ドラマ「べらぼう」のメインテーマソングや、「海の日」にちなんだ楽曲を演奏(入場料:1000円、高校生以下500円)
各イベントの会場や開催時間、定員、参加方法など、詳細はHP【江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ | 企画展 | 千葉市美術館】にて確認してください。いずれも予約は不可で開催当日の受付となるので、今からでも間に合います!
展覧会を観覧後は5階のロビーに設置されている「重ね捺しスタンプ」を体験してみることをおススメします。画は、本展「エピローグ」で飾られている歌川広重「名所江戸百景 亀戸天神境内」の縮小版。

お子さんでも簡単に浮世絵版画の多色摺体験ができます。完成品は持ち帰りができるので観覧記念にぴったり。スタンプ台紙の裏側はハガキ仕様になっているので、絵ハガキとして使うこともできます。

「開館30周年記念 江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」展
千葉市美術館にて7月21日(月・祝)まで開催中

https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/25-5-30-7-21/
浮世絵展の予習・復習に最適! クイズ形式で学ぶ浮世絵の入門書が誕生
こうした浮世絵展や「べらぼう」の世界に興味のある方におすすめしたい情報がもうひとつ! それは新刊『クイズで学ぶ浮世絵入門』です。

本書は、千葉市美術館で開催されている展覧会と同様に、蔦重の仕掛けた名作をはじめ、初期の菱川師宣から幕末・明治に至る人気絵師の見るべき作品を多数掲載。浮世絵を楽しみながら全82問のクイズを解いていくことで、浮世絵の見どころや絵師のことに加えて、江戸の暮らしや文化も伺い知ることができます。

美人画、名所絵だけではない、遊び絵から時事報道まで広がる浮世絵ワールドの奥深さをこの本から知ることで、今後、展覧会での観覧がより楽しくなるはずです!
『ジャンル別・絵師別に作品の見どころがわかる 楽しく脳活 クイズで学ぶ浮世絵入門』

定価:1650円(税込) B5判/96ページ 小学館
ISBN978-4-09-389812-6
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389812
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構成/DIME編集部