
2025年6月10日より、日本マイクロソフトより「Surface Pro」の12型モデルが発売された。構成的には、2024年発売の「Surface Pro 11th Edition」の廉価モデルという立ち位置で、本体価格は、ストレージ256GBモデルが14万9380円、512GBモデルが16万4780円。
Surfaceシリーズといえば、ノートPCとタブレットの中間的立ち位置になる、2in1タイプが代名詞。新しいSurface Proも、シリーズの特徴である、セパレートデザインを継承しており、取り回しの良さ、タッチ操作の快適さが1つの魅力となる。
加えて、廉価モデルという位置づけではあるが、Snapdragon X Plus 8-coreや16GBメモリを搭載することで、一般的な活用方法だけでなく、Windows 11の最新AI機能まで、まんべんなく、快適に動作するのが、Surface Proの特徴。今回、メーカーからレビュー機をお借りできたので、使用感について紹介していく。
持ち運び用、自宅用のどちらでも活躍するSurface Proの魅力
Surface Proは、最新AI機能が利用できるCopilot+ PCと呼ばれる製品の一員でもある。Copilotに話しかけることで、検索やタスク管理、創作といった作業にAIが活用できる。
加えて、Snapdragon X Plus 8-coreの省電力性や、コンパクトで持ち運びやすい形状から、持ち運び用のデバイスとして有用なのは、いうまでもないだろう。
ただし、個人的には、Surface Proは自宅のデスクに据え置いて活用するのにも適したデバイスだと感じている。では、詳細をチェックしていこう。
■コンパクトになって取り回しがよくなったSurface
新しいSurface Proは、12インチのPixelSense LCDディスプレイを搭載する。解像度は2196×1464、縦横比は3:2で、最大90Hzの動的リフレッシュレート(規定値60Hz)に対応する。Surfaceらしく、タッチコントロールも可能だ。

上位モデルと比べると、解像度やリフレッシュレートにコストカットの側面が見られるが、実使用上の不満は特に感じていない。PCゲームなどをガンガンプレイするような端末ではないため、このスペックでも十分という人がターゲットともいえるだろう。しいて言えば、SDR最大400ニト(標準)という明るさは、屋外での使用時に、若干物足りなさを感じることがある。

上位モデルは13インチディスプレイを採用しているため、小さくなったことを不満とする人もいるかもしれないが、個人的には、12インチとコンパクトになったことで、より取り回しがよくなり、Surfaceらしい魅力が増したと感じている。

本体質量は約686g、専用のタイプカバーを装着しても、合計1kgちょっとという軽さに収まっており、カバンに入れた際の存在感も、いい意味で薄い。インターフェースはUSB-Cが2つと少なく、過去モデルに搭載されていた、専用の充電ポートが廃止されているが、1つは充電、もう1つはハブを接続して拡張という使い方であれば、USB-C×2でも事足りるシーンが多い。

携帯性に優れるのはもちろんだが、デスクにおいて、自宅作業用PCとして使う場合も、外付けモニターやキーボード、マウスと接続するのであれば、本体はコンパクトなほうが、スペースを圧迫しなくていいと感じる人もいるはず。一般的なラップトップPCと違い、キーボードを付け外しできるため、その分のスペースも有効活用できるのが、個人的には気に入っているポイントだ。また、Webカメラの画質もよく、Web会議にも使いやすい。
ハイエンドデスクトップPCのように、ゲームや動画編集をガツガツとこなすといった使い方には向かないが、筆者のように、文書作成やWebブラウジング、動画再生といった使い方が主であれば、持ち運び用、自宅用、もしくはハイブリッドな使い方でも、非常に便利だと感じている。屋外での使用が多い人には、オプションから選択できる、モバイルデータ通信を選択するのもおすすめだ。

なお、本モデルでは、サステナビリティの観点から、充電器が付属しない点には注意が必要。多くのスマートフォンと同様に、USB-Cケーブルで充電ができるため、新しいケーブルが必要ないという人には、むしろ朗報かもしれない。充電器が欲しい場合は、オプションから「Surface 45W USB-C 充電器」を購入すればいい。
■タッチペンは取り出しやすく、キーボードは打ちやすさを感じる
いずれも別売になるが、Surface Proは、これまでのモデルと同様に、タイプカバーキーボードや、専用タッチペンを併用できる。「Surface Pro 12 インチ キーボード」は2万7280円、キーボードと「Surface スリム ペン」のセットは、4万4880円となるので、必要に応じて購入するのがおすすめだ。
従来のSurfaceキーボードは、開く際にヒンジ部分が折れ曲がり、キーボードに角度がつくようになっている。傾斜のおかげで、タイピングしやすくなるという人もいるだろうが、薄いタイプカバーの性質上、たわみを感じてしまうことがあった。
Surface Pro 12 インチ キーボードは、傾斜がつかないデザインに変更されており、机面と平行において作業ができるようになっている。これにより、タイピング時の安定感が増しているのが、個人的には非常に気に入っているポイントだ。

キー配列は、矢印キーが小さいものの、一般的な日本語配列となっており、バックライトもついているため、使いやすさは十分。Copilotキーもしっかりと搭載されている。タイプカバーながら、横に広くスペースを確保したタッチパッドが搭載されているのもありがたい。

キーボードとセットで購入できるSurface スリム ペンは、これまでキーボード上部に格納する形だったが、新たに本体背面に、マグネットで吸着させるデザインに変更されている。カバンに入れて持ち運ぶ場合、ほかのものと干渉して外れてしまうことがあるのが難点だが、取り付け、取り外しがしやすくなっているのは利点。また、キーボードを使わず、本体とSurface スリム ペンのみを持ち出したいという人には、この仕様のほうが適している。

■廉価モデルでもAI機能は快適に動作する
搭載SoCはSnapdragon X Plus 8-coreで、上位モデルからコア数が少なくなっている。一方で、従来のSurfaceシリーズの廉価モデルから比べると、16GBと比較的大容量のメモリを搭載しているため、AI機能も安定して動作する。
AI機能に関しては、基本的にWindows 11のCopilotに内包される機能に準拠する形となり、画面上の動きを定期的に記録し、あとから簡単に振り返ることができる「リコール」機能や、Copilotによる画像生成などが利用できる。


デバイス内に保存している写真を検索する際には、フォルダアプリの検索窓から、画像に写っている被写体の情報を入力することで、AIが該当する画像を検索する機能なども利用できる。PC内のどこにデータを保存したかわからなくなっても、AIが代わりに見つけ出してくれるというわけだ。
OutlookやWordといったMicrosoft 365の各アプリにも、AI機能がどんどん内包されており、メール文の自動生成なども、快適に活用できる。なお、Surfaceシリーズといえば、買い切り版のOfficeソフトがセットになってついてくるのが通例だったが、今回は、Microsoft 365 Personalが24か月間使用できるサービスが利用できる。
バッテリーは、最大16時間のローカルビデオ再生、最大12時間のアクティブなWeb使用に対応する。PC向けSnapdragonシリーズの特徴でもあるが、省電力性に優れており、屋外での長時間利用にも、ある程度耐えられる印象だ。
■コンパクトモデル好き、Microsoft 365ユーザーには特におすすめ
廉価モデルであり、動画編集用、ゲーム用のデバイスを探している人には向かないが、AI機能の快適さ、コンパクトで持ち運びやすく、省スペース性にも優れるSurface Proは、多くのユーザーのニーズを満たすデバイスだろう。専用キーボードの仕様変更も、個人的には本モデルを推したいポイントだ。
また、すでにMicrosoft 365を契約しているユーザーからすると、2年間は月額料金なく、Office系アプリが利用できるようになるため、よりお得感が強い。買い切り版のOfficeソフトを使っている人からすると、3年目以降にランニングコストがかかることになるが、14万9380円という本体価格を鑑みれば、十分選択肢になるはずだ。
取材・文/佐藤文彦