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「独身税」論争が過熱、過去の失敗から学ばないのはなぜか

2025.07.01

2026年4月から導入される「子ども・子育て支援金制度」が”独身税”だと批判が広がっている。

医療保険料に上乗せされるかたちで徴収されるため実質的な増税だと指摘されるほか、公的医療保険に加入しているすべての国民が負担を強いられる一方で、子育て世帯を支援政策に充てられるため単身者は直接的な恩恵を受けることがない点から「独身税」と揶揄されているのだ。

「独身税」という歴史的に見て失敗の政策

「独身税」は少子化対策や人口政策の一環歴史上、多くの国家で導入されてきた経緯があるが成功したことはないと言われている。

イタリア、ドイツ、ソビエト連邦などに独身税の事例があるが、代表例なのが東欧国家・ブルガリアの事例だ。

ブルガリアでは1968年から1989年にかけて、成人未婚者に対して課税する「独身税」が導入された。対象となったのは、25歳以上の未婚男性と20歳以上の未婚女性で、収入の5〜10%が税金として課された。

少子化対策として期待され導入された政策だが、結果としてその効果はほとんど見られることはなく、むしろ、未婚者に対する社会的な圧力が強まり、所得が少ない若者層にとっては経済的な負担が増す一因となった。出生率の改善が見られることはなく、最終的には、ブルガリア政府は1989年に独身税の廃止をしている。

独身税が未婚者の結婚を促進するどころか、社会全体の不満を増幅させる結果となり、政策の見直しが必要とされたわけである。

こうした過去の失敗から、先進国では少子化対策が急務なものの、現在、独身税を導入している国家は存在しない。

「それで、私たちは一体いくら負担させられるの?」のわかりにくさ

「独身税」への批判は歴史上、失敗を繰り返してきたことだけではない。多くの国民が疑問を抱くのには理由の一つが「わかりにくさ」だ。

こども家庭庁の「子ども・子育て支援金制度について」というページを見ると、制度について次のように説明されている。

「支援金制度は、少子化対策のための特定財源であり、3.6兆円のうちの1兆円程度を確保します。支援金は、医療・介護の徹底した歳出改革と賃上げによる実質的な社会保険負担軽減効果の範囲内で導入することとしており、令和8年度から令和10年度にかけて段階的に構築することとしています。ご高齢の方や事業主の皆様を含む全世代・全経済主体から、医療保険料とあわせて所得に応じて拠出いただきます」

しかし、多くの人が気になっている「それで、私たちは一体いくら負担させられるの?」について明記されていない。

ページ下部から「子ども・子育て支援金制度のQ&A」のページに飛び、ようやく確認できる。非常に細かく、わかりにくいためホームページに書かれていることをそのまま紹介したい。

***

Q6. 子ども・子育て支援金の額はいくらになりますか?

支援金にかかる個々人の具体的な拠出額については、加入する医療保険制度、所得や世帯の状況等によって異なります。
なお参考として令和10年度において

・全ての医療保険制度加入者一人当たり平均で月額450円程度
・これを医療保険制度別にみると、健康保険組合や協会けんぽなどの被用者保険で月額500円程度、国民健康保険で月額400円程度、後期高齢者医療制度で月額350円程度

と想定しています。
※詳細は下図参照。
※被用者保険の金額は事業主負担分を除いた本人拠出分

また、国民健康保険制度や後期高齢者医療制度においては医療保険制度と同様に低所得者等に対する保険料の軽減措置を実施します。さらに、国民健康保険においては、18歳年度末までのこどもに係る支援金の均等割額は10割軽減の措置を講じます。

出典:こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度のQ&A」より

また、支援金は、以下のようなことに使われる。

児童手当の拡充:現在の児童手当の支給額が増え、さらに高校生まで支給されるようになる。
妊婦への支援:妊娠や出産時に10万円の支援金が支給される。
保育支援:子どもが保育園に通う時間を柔軟にする新しいシステムが導入。
育児休業中の給付:育児休業を取るときに、給与の100%が支給される。
育児時短勤務支援:子どもが2歳未満の場合、時短勤務中の給与の10%が支給される。

「少子化対策」の大義名分だけでは国民は納得しない

これからの日本にとって少子化対策は避けて通れない重要な課題なのは間違いない。しかし、「子ども・子育て支援金制度」が引き起こしている論争を見てもわかるように、その方法には慎重さが求められる。特に、全世代からの負担を求める一方で、一部の層が直接的な恩恵を受けないという点については、丁寧で明確な説明や不公正感の解消は必要不可欠だ。社会全体でバランスの取れた解決策を見つけることが、今後の政策において重要なのではないだろうか。

文/峯亮佑

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