
中国最大級と言われるECセール、「中国618商戦」が6月20日に幕を閉じた。今年は中国政府の“国家補助金”による割引施策も加わり、例年以上に盛り上がりを見せた模様だ。本記事ではその結果をご紹介する。
「618商戦」とはなにか?
中国では毎年、「618」や「独身の日(11月11日)」といった大規模なECセールが2回開催される。「618」は、中国の大手ECプラットフォーム・京東(JD.com)が創業日である6月18日にあわせて開始したセールが起源である。
今では、アリババ系「淘宝(タオバオ)」や「TikTok(抖音)」など、主要プラットフォームのほぼすべてが参加するEC最大の商戦となっている。

618セールは年々始まりが早くなっており、今年のセール期間は各社最長。「淘宝」では、5月15日~6月20日の計37日間、「京東』は、5月13日~6月20日の計39日間に及んだ。
2025年の618の総合売上高は、8556億元(約17.3兆円)と前年同月比15.2%増と好調だった。
特に家電、通信端末が人気で、家電ブランドはMidia(美的)、Haier(ハイアール)、格力(グリー)、小米(シャオミ)が人気だった。
売上シェアは、1位淘宝(Tmall)が38%、2位京東が23%、3位TikTok(抖音)が15%、4位拼多多(pinduoduo)が8%で、特に家電を強みとする、京東の伸びが顕著だった。
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国家補助金で「iPhoneも15%オフ」に!

今回の「618商戦」における最大の特徴は、中国政府が実施した“国家補助金”制度の導入である。これは消費促進政策の一環で、中国人民IDカードを保有し、税金を払っており、淘宝なら支払方法をAlipayにすることなどの条件が揃えば、対象商品購入時に最大15%の割引が適用されるというものだ。
今年は、特に家電や通信端末の売上が伸びた。
iPhone製品も対象となっており、元の金額15%割引される。ただし、国家補助金には限りがあるため、淘宝のiPhoneの正規店の商品で、5月下旬に早くも補助金枠が上限に達し、国家補助金が利用できなくなってしまった。
また、今回のセールは割引方法が簡素化しており、割引率、割引価格、割引後の価格が消費者に分かりやすく表示されていた。
そして、1つだけの購入でも割引されるため、まとめて無理に買う必要もなかった。
そのほかにも、「紅包(ホンバオ=お年玉的な割引)」の配布や、会員向け商品券、新機種への下取り支援といった多層的なインセンティブが展開され、消費者の購買意欲を一段と刺激する要因となった。
HUAWEIの最新スマホで、保有するHAWEIスマホとの交換で無料もしくは安い価格で新しいスマホと交換することができるものもあり、大きく話題になった。
年末商戦の“先食い”となる可能性も

今回の618セールは家電、通信端末を中心に大きく売上が伸び、非常に好調だった。
しかしながら、今回のセールには、国家補助金があったこと、セール期間が長かったことで、ネット通販の本番セールである年末の需要を先食いしている可能性もある。次なる焦点は、11月11日に予定されている「独身の日」セールだ。
今回を上回る勢いを維持できるかどうかは、中国国内の消費マインドを測る試金石となるだろう。ぜひ行方に注目しておきたい。
※1元=20.21円換算
(参考)
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文/大堀貴子
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