
【『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』出版記念インタビュー企画】
【オーストリア出身のヤナさんに聞く日本文化の魅力】Vol.2・日本の〝アレンジ力〟が生んだセーラー服
日本のガールズバンド「SCANDAL」に衝撃を受け、日本でのアーティストデビューを目指して海を渡ってきた、シンガーソングライターのヤナさん。Vol.1では紹介したように日本のドラマにハマっていたという学生時代には、オーストリアのどんな学校に通っていたのだろうか。3月21日に発行された『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』(小社刊)を見ていただきながら、ヤナさんが印象に残っている学校行事や、日本の制服に対する熱い思いなどについて話をお聞きした。
シンガーソングライター・ヤナさん
オーストリア出身。ウィーン大学を卒業後に音楽活動を本格化。作詞作曲、編曲、ミキシング、レコーディングをすべてひとりで手がけている。高校生の頃から日本の音楽に憧れ、熱心に日本語を勉強し、J-POPもカバー。現在、日本国内でのメジャーデビューを目指す、シンガーソングライター「やないも。」として活動中。YouTubeチャンネル「やなっちチャンネル」は登録者数12万人超。自身が加入しているソニーミュージックのバンド「ゆるミュージックほぼオールスターズ」の一員として、2025年4月25日に「EXPO 2025 大阪・関西万博」で行なわれた「フューチャーライフゾーン フューチャーライフヴィレッジ(TE2)ステージ」に出演。世界中から来場した観客を魅了した。
オーストリアの小学校は4年まで!10歳に直面する進路選び

ーーヨーロッパの地図を見てみると、オーストリアは、ドイツ、スイス、チェコなど、いろんな国々が隣接しているんですね。
ヤナ そうなんです。隣接している国からの影響を受けやすくて。オーストリアの同じ国内でも地域差が結構あります。
ーーヤナさんが住んでいたのは?
ヤナ スロベニアの国境に近いドラーヴァ川の周辺です。オーストリアは母国語がドイツ語なんですけど、私の住んでいた地域はスロベニア語がしゃべれる人も多く、ドイツ語とスロベニア語の〝中間の言語〟(ヴィンディッシュ)も使われていました。
ーーいろんな言語が飛び交うような環境だったわけですね。
ヤナ わけがわからないでしょ(笑)。いろんな国と隣接しているから、地域によってドイツ語の言い方も違っていて。スイスに程近いフォアアールベルク州で使われている〝スイスのドイツ語に近い方言〟は言い回しが独特すぎて、理解するのが一番難しいらしいです。
ーー地図をよく見てみるとイタリアも隣接していますね。
ヤナ イタリアは私の学校の修学旅行先でした。私の通っていた学校のパートナー校もあって、交換留学している人もいましたよ。
ーーヤナさんが通っていた学校では、ドイツ語以外にどんな言語を学んでいましたか?
ヤナ 「ウサギ」や「リンゴ」といった簡単な英語は幼稚園から学び始めて、小学校からは英語の授業がありました。
ーードイツ語と英語をほぼ同時並行で勉強していく感じなんですね。混乱することはないんでしょうか?
ヤナ 両言語とも書き文字に使うのは同じローマ字だし、日本のみなさんが想像するよりも大変ではないんですよ。しかも英語は、小学校でも簡単な内容しかやりませんし。わりとみんなが楽しみながら英語に親しんで学んでいました。
ーーカタカナも漢字もある日本語はやっぱり難しいんでしょうか。
ヤナ そうですね。だから小学生で母国語を学ぶ勉強量は、オーストリアと日本では、だいぶ差があるという印象です。ちなみに、私が通っていた学校ではスロベニア語の授業もありました。
ーーそんなオーストリアの小学校は、日本と違って4年間しかないそうですね。
ヤナ 卒業する際には生徒の希望に合わせて選べる様々な進学先が用意されています。絵画や音楽といった芸術系に強い学校があれば、理系に優れた学校もある。言語をメッチャたくさん学べる学校もあるし、得意不得意に合わせて選べるんです。
ーーヤナさんは小学校4年間の後、どんな学校に進級されたのですか?
ヤナ 私はわりとフツーの学校に通うことにしたんですけど、クラスに全然なじめなくて……。1年後には、仲のいい友達がいる学校へ転校しました。
ーー小学4年生の時点で進路の決断を迫られることに、当惑する子供もいそうですね。
ヤナ 正直、小学4年生はまだまだ子供。「この学校は遠いね」とか「近くて通いやすそう」とか。そういう理由で選ぶ人も全然います。私が子供の頃はすごくシャイで、自分からガツガツ行けないタイプだったから、友達のいる学校を選んでよかったです。
オーストリアの学校は7時40分に始業!?朝が早いからこそ欲しかった制服制度

ーーオーストリアの学校は、そのほとんどが制服はないそうですね。ヤナさんが通われていた学校もなかったんでしょうか。
ヤナ ありませんでした。日本でいう〝小学校〟や〝中学校〟では、服装について何か言われるようなこともなかったと思います。進学した〝高校〟でも、校長先生から少しだけ注意されたくらいで。脇の下が大きく空いているルーズなタンクトップを着るのは男女ともにダメとか。当時流行していたレギンスをそのままはくだけなのはNGとか。短すぎるスカートも指摘されることはありましたけど、厳しくはなかったです。
ーー服装の規則がゆるいのは、ヤナさんとしてはどうでしたか。
ヤナ う~ん、個人的には制服はあったほうがよかったかなと思います。「この子はファッションセンスないかも」って思われることもないし。オシャレな服を買えなくても、制服があればみんなと一緒の服装で登校できますから。しかも、同じ学校の生徒という一体感が出るのもいいなって。そして何よりも、着ていく服装が決まっているほうが、毎朝悩むこともないからラクですよね。オーストリアの学校って、朝がメッチャ早いし。
ーー授業の開始時間は?
ヤナ 7時40分からとか。
ーーそれは早い!
ヤナ 特に私が通っていた専門学校のような〝高校〟は、ほかのところに比べて授業の量が多くて。長い日には朝7時台に登校して、夕方17時くらいまで学校にいることもありました。そういうキツい日もあったので、服装について考えずに1日をスタートできたら、少しでもラクになれたのにって。まぁ〝ないものねだり〟 なんですけどね(笑)。
ーーそんな学生時代にハマっていたという日本のガールズバンド「SCANDAL」は、前回お話を伺った楽曲のことはもちろん、制服で歌唱する姿も大好きだったそうですね。
ヤナ そうなんです! すごくかわいかったし、日本の制服に憧れるきっかけになりました。先日、昔は学校だった施設を借りて、SCANDALさんを〝完コピ〟した衣装を着て、ミュージックビデオを撮影したんですけど、メッチャうれしかったです。「夢がかなった~!」って。その時の映像を見返すたびにウキウキしますよね。
ーーその時とはまだ違った制服を今回試着されて、感想はいかがですか?
ヤナ すごくかわいい! テンションが上がっちゃいますよね。セーラー服ってもともと英国の水兵さんが着ている〝マリーン(海)な印象〟がありますけど、それを制服としてかわいく仕上げるのは〝さすが日本!〟って思います。
個人的な印象なのですが、日本のアニメにいろんな種類の制服が出てくる中でも、セーラー服って何だかんだ目立っているように感じるんです。ブレザーの制服とも全然違う雰囲気だし、すごく特別な感じがしますよね。
『イラストでたどる~』は素敵な制服ばかり!ヤナさんは歴史的な背景にも興味津々

ーーそんなセーラー服をはじめ、女子の装いを中心に100年あまりの制服の歴史を振り返る『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』について、ご覧になった感想をお聞かせください。
ヤナ 個人的におもしろいと思ったのは、戦後からの採用例が紹介されている第2章。戦前から着られることの多かったセーラー服だけでなく、洋風の様々な装いが採用されていったんだなと。襟にブローチみたいなものが付いたジャケットや、ミリタリーっぽいトレンチコートみたいなものもありますよね。歴史的な背景についてもしっかりと解説されているし、とても興味深かったです。
それと、ちょっとのアレンジで雰囲気が変わるのも、すごく素敵だなって。ほら、よく見てみると、似ているようで違うでしょ!? リボンのかたちとか、ボタンの数とか、ポケットの位置とか。
ーー制服に憧れて学校を選ぶ生徒もいらっしゃるんですよ。
ヤナ それ、わかります! 毎日のように着るものだから、好きな制服なら、それだけで学校に行きたく気持ちになれますよね。着ることでテンションも上がるし、そのほうが結果的に勉強も学校生活も楽しく頑張れるんじゃないかな。
ーー本の中で紹介している制服の中で、着てみるならどれがいいですか?
ヤナ えぇー、メッチャ迷いますね。素敵なのがいっぱいありすぎて。赤いスカートとか、白い長袖のセーラー服とか、色に特徴があるのもいいなぁ。ワンピース系もよさそうだし。〝着崩し〟のブームとして紹介されている反抗的なギャルスタイルも楽しそう。シャツのボタンを空けて、リボンを垂らし、スカートを短くして、ルーズソックスをはく……メチャメチャかわいいなぁ~て。もうホント、全部、好きです!
ーーヤナさんは本当に日本の制服がお好きなことが伝わってきました。ヤナさんなら、ギャルスタイルの装いも上手に着こなせそうですね。ありがとうございました。
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撮影/洞澤 佐智子 ヘアメイク/芳賀仁美
取材・文・編集/田尻健二郎 取材協力/カンコーショップ原宿セレクトスクエア
『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』好評発売中!
大正時代から令和時代まで、100年あまりに及ぶ学生服の変遷をたどる書籍「女子高生制服100年図鑑」が発売中。全国42校を例に挙げながら、イラストおよび写真で紹介している。制服のイラストは、書籍・広告のほか『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』といったアニメのEDイラストなども手がけてきたイラストレーターめばちさんが、計129点を本書のために描き下ろし。めばちさん特有のふんわりとしたやさしいタッチの絵で、制服の歴史をたどる構成も話題。
学校および制服の選定には、170年の歴史を誇る老舗学生服メーカー菅公学生服に協力を仰ぎ、制服研究の第一人者として知られている森伸之氏による監修のもと、新旧105着の制服を紹介している。
■関連情報
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311585
■公式Instagram
https://www.instagram.com/100years_school_girl_uniform/