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キルギスの国技〝ヤギラグビー〟がいろいろ謎すぎる!

2025.07.02

『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』(辰巳出版)を上梓したフリーライター&フォトグラファーの白石あづさ氏。2か月間かけて中央アジア5カ国(カザフスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス)を巡ったなかから、キルギスのとある村の祭りで見たのどかな〝テント組み立て競争〟と、世にも珍しい〝騎馬ラグビー〟 の様子をご紹介します。

※本稿は、『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』より内容を一部抜粋・編集したものです。

国旗にテントが入っている?

馬は人の翼――。

かつては遊牧民が馬に跨り大地を駆け回っていたキルギス。中央アジアの中でも特に親日国として知られており、遊牧文化が今も息づく山岳国だ。

「迷ったら馬を信じよ」「峠では馬を替えない」など大切な相棒である馬のことわざがたくさん残っている。しかし、ソ連時代の定住化政策によって、今では遊牧生活を送る人はごくわずか。それでも馬は今でも大事にされているし、移動式住居のユルタは観光用キャンプや冠婚葬祭などで使われる身近な存在だ。

キルギス国内のユルタの多くはトン村より少し西にあるクズル・トゥー村で作られている。今日はその村でフェスティバルがあるという。ステージで鷹狩りの実演やキルギスの英雄マナスの叙事詩の口上などが盛大に行われた後、村人お楽しみの「ユルタ組み立て競争」が始まった。

キルギスの人々にとってユルタはただのテントではない。何しろ国旗に描いてしまうくらい大切な存在だ。始まりの合図とともに、丸いトゥンドゥクをチーム一の力持ちがプルプルと踏ん張って棒を持ち上げている。

その間に他の人はウークという長い竿本をトゥンドゥクにあけた穴に刺し、竿と柵を一本ずつ革紐で結んで屋根を作る。骨組みが完成すると羊の毛で作った何mもあるフエルトを外側に巻いて完成だ。普通なら1時間以上かかるのに、若者チームの見事な結束によりわずか9分で完成させ勝利した。

本物の死体ですよ!

興奮冷めやらぬ中、今度はメインイベントの「ウラク・タルティシュ」の試合を告げるアナウンスが流れた。地元チームと隣町のボコンバエバのチームによる男子選手各5人が馬に乗って颯爽と登場し拍手を浴びている。

昔から中央アジアに伝わる遊牧民のゲームで、ポロのようなものだという。「騎馬ラグビー」とも呼ばれるらしい。ただの競技ではなく「遊牧民精神」の象徴でキルギスの国技であり、国内500以上のプロアマチームが活動しているとか。が、ラグビーとの大きな違いは球ではなく首を落としたヤギの体を取り合うことだ。

「あのヤギはぬいぐるみとか剥製じゃなくて?」

通訳のスユン君に聞いてみる。

「ウラク・タルティシュとは、『ヤギを引く』という意味です。当然、本物の死体ですよ。試合が激しすぎて人も死体になる事故も……」

「ひぃ、穏やかなキルギス人のイメージが崩壊しそう」

「勝ったチームはヤギをもらえます。そして皆で煮て食べます」

試合が始まると馬同士がぶつかり合い、選手たちは30~50kgほどあるヤギの手足を引っ張り合う。土埃が舞い、時折、人が落馬したりヤギを拾おうと頭を下げた時に別の馬に蹴られたりする。ほとんど手放しで乗っている選手もいて、すごい乗馬技術だ。

〝球〟は玉ねぎと炒めます

ハーフタイムにロバに乗った8歳くらいの男の子が砂だらけのヤギを拾って満面の笑みでグラウンドを走り、笑いと拍手が起きた。きっとちびっ子の憧れの競技なのだろう。

残念ながら地元チームは負けてしまったが、勝った選手は、「このヤギで芋と肉と玉ねぎを油で炒めてクルダックという料理を作ります。負けた選手も呼んで一緒に食べますよ」と漢気を見せた。

皆、10代で中高生くらい。日本だったら危ないと親が止めるだろうけれど、選手たちは「馬が好きだから全然、怖くなんてありません」と堂々としていて、とてもまぶしい。

私は惚れ惚れとして言った。

「さすが騎馬民族の末裔だねえ」

「ええ、馬に乗れない人はキルギスの男じゃないと言われます。まあ、ここに例外はいますけど」とスユン君がスンとした。

『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』

トルクメニスタンの砂漠で燃える穴「地獄の門」や、カザフスタンの太古の海底「白い絶景」ほか、タジキスタンの秘境やウズベキスタンの青いモスクなど、650枚の写真とともに中央アジアの絶景と今を切り取った旅行記です。

発売日:2025年7月1日発売
出版社:辰巳出版
著者:白石あづさ
体裁:A5・208ページ(オールカラー)
https://amzn.asia/d/bknnlMK

構成/DIME編集部

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