親が離婚しても、何もしなければ子どもの苗字は変わりません。子どもの苗字を変えたい場合は、家庭裁判所に氏の変更許可を申し立てるなどの手続きが必要です。
子どもがいる状態で離婚しようと考えているなら、子どもの苗字に関するルールや手続きを確認しておきましょう。
1. 親が離婚しても、子どもの苗字は変わらない
夫婦が離婚すると、戸籍の筆頭者でない側は原則として旧姓に戻ります。これに対して、離婚した夫婦間の子どもの苗字は、親同士が離婚しても変わりません。
たとえば、夫婦である田中A太さんと田中B子さんの間に、子どもの田中C郎さんがいるケースを考えます。
田中A太さんと田中B子が離婚して、B子さんの苗字が旧姓の「鈴木」に戻ったとします。この場合、子どものC郎さんの苗字は「田中」のままです。
子どもの苗字は、どちらの親が離婚後の親権者になる場合でも、何もしなければ変わりません。たとえば上記のケースでは、鈴木B子さんが親権者になる場合でも、子どもであるC郎さんの苗字は「田中」となります。
2. 苗字は戸籍に連動している|親が離婚しても、子どもの戸籍はそのまま
日本の現行法制度上、同じ戸籍に入っている人は全員同じ苗字を名乗ることになっています。
たとえば前述のケースでは、離婚前は田中A太さんを筆頭者として、B子さんとC郎さんが同じ戸籍に入った状態です。3人の戸籍は同じなので、全員「田中」姓を名乗ります。
A太さんとB子さんが離婚すると、筆頭者でないB子さんが戸籍から離脱します。それに伴い、B子さんは旧姓の「鈴木」に戻りました。
一方、子どものC郎さんの戸籍は変わりません。離婚前と同様に、A太さんとC郎さんが同じ戸籍に入った状態となります。したがってC郎さんの苗字は、A太さんと同じ「田中」のままです。
3. 離婚後も婚姻中の姓を使い続けることはできる|ただし、子どもとは別の戸籍
戸籍の筆頭者でない側も、役所に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すれば、離婚後も婚姻中の姓を使い続けることができます。提出できる期間は、離婚届と同時または離婚の日から3か月以内です。
たとえば前述のケースでは、B子さんが「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すれば、離婚後も「田中」を名乗ることができます。
その結果、B子さんと子どものC郎さんの苗字が同じ「田中」となります。
しかし、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しても、離婚によって戸籍から離脱することは変わりません。
B子さんとA太さん・C郎さんは同じ「田中」姓だとしても、B子さんだけは別の戸籍に入った状態となります。
4. 子どもの苗字や戸籍を変更する方法は?
離婚によって旧姓に戻る側が子どもの親権を得た場合、子どもと苗字や戸籍が異なるのは不都合だと感じる場面があるかもしれません。
子どもの苗字を自分と同じものに変更するためには、まず家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる必要があります。
子どもが15歳未満の場合は親が代理で申立てを行いますが、15歳以上の場合は子どもが自ら申立てを行います。
参考:子の氏の変更許可|裁判所
家庭裁判所によって子の氏の変更が許可されたら、子どもの本籍地または届出人の住所地の市区町村役場に以下の書類を提出します。
・入籍届(子ども1人につき1通)
・家庭裁判所の許可書謄本
・届出人の本人確認書類
入籍届が受理されると、子どもは自分と同じ戸籍に入ります。
たとえば前述のケースでは、C郎さんについて上記の手続きを行えば、C郎さんの苗字を「田中」から「鈴木」に変更し、B子さんと同じ戸籍に入れることができます。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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