
借金を返せなくなったときは、自己破産をすれば返済義務が免除されます。
自己破産と聞くと「財産が処分される」「生活ができなくなる」などのネガティブなイメージを抱くかもしれません。しかし実際には、自己破産した人が生活できなくなることはなく、むしろ根本的な生活の立て直しに繋がるケースが多いです。
1. 自己破産をしたら、財産はすべて処分される?
自己破産に対しては、「財産がすべて処分されてしまう」というイメージを持っている人がたくさんいるようです。しかしこれは誤解で、実際には処分されない財産もあります。
たとえば、以下に挙げる財産は自己破産をしても処分されません。
・99万円以下の現金
・生活に欠くことができない一定の財産
・業務に欠くことができない一定の財産
など
預貯金についても、総額20万円以下の場合は回収しない運用をしている裁判所が多数となっています。
家や車などの高価な財産は処分されますが、わずかしか財産を持っていない場合には、全く財産が処分されないケースも珍しくありません。
数十万円程度の現金が手元にあれば、当面の生活費は賄うことができるでしょう。
2. 自己破産をした後の収入はどうなる?
「自己破産をすると仕事ができなくなる」「収入が没収されてしまう」といった誤解もよく見られるところです。
たしかに自己破産をすると、一部の職業は制限されます。ただし、制限される職業は士業(弁護士・公認会計士・税理士・弁理士など)や警備員などに限られています。
会社員や公務員などはほとんどの場合、職業制限の対象になりません。職業制限を受けなければ、自己破産後もこれまでどおり仕事をして収入を得ることができます。
自己破産後に行った業務によって得られた収入は、破産手続きを通じて没収されることは一切ありません。全額が手元に残るので、生活費に充てることができます。
3. 自己破産をすると、借金などが免責されて収支が改善する
自己破産の大きなメリットは、借金などの債務が免責されることです。税金などは免責されませんが、借金やクレジットカードの未払金などはすべて免責されてゼロになります。
自己破産後はこれまでどおり仕事の収入を得られる一方で、借金などの債務を支払う必要がなくなるため、収支が大幅に改善します。その結果、根本的に生活を立て直すことができるでしょう。
4. 自己破産後にお金がない場合の対処法は?
無職の人や、安定した職業に就いていない人は、自己破産後に十分な収入を得ることができず、結局借金生活に逆戻りするのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、自力で十分な収入を得られない場合には、公的な支援制度を利用できることがあります。経済的に困っている人が利用できる支援制度としては、以下の例が挙げられます。
(1)生活福祉資金貸付制度
生活費などに充てるお金を、無利子または低金利で借りることができます。各市区町村に設置された社会福祉協議会が申請を受け付けています。
(2)住居確保給付金
離職や廃業などによってお金がない場合に、最大9か月分の家賃が給付されます。市区町村(郡部に住んでいる場合は、原則として都道府県)の窓口が申請を受け付けています。
(3)生活保護
親族などからの援助も受けられない場合に、生活費等に充てるための最低限のお金が給付されます。市区町村または都道府県に設置された福祉事務所が申請を受け付けています。
参考:生活保護制度|厚生労働省
必要に応じて公的支援制度を利用しつつ、不要な支出を減らせば、自己破産後も生活を成り立たせることは十分可能です。借金の返済が見通せなくなったら、ネガティブなイメージに捕らわれずに、自己破産を検討することをお勧めします。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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