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ポテチが1袋1000円弱!かんたんに行ける国ではなくなったアメリカで開催される2026年W杯の行方

2025.06.29

 世界の32クラブが参加し、アメリカで開催されている2025年FIFAクラブワールドカップ(W杯)。日本からは22-23シーズン・AFCチャンピオンズリーグ(ACL)王者の浦和レッズが参戦したが、17日(日本時間18日)のリーベルプレート戦を1-3、21日(同22日)のインテル戦を1-2で敗戦。25日(同26日)のラスト・モンテレイ戦を待たずしてグループリーグ敗退が決まってしまった。Jリーグとして「世界の壁の高さ」を突きつけられる結果となったのである。

 浦和が1・2戦目を戦った会場はシアトル、3戦目はロサンゼルスだったが、筆者は前者を訪問。1週間ほど滞在し、”アメリカの今”を知る機会に恵まれた。

浦和レッズが2025年クラブW杯で2試合を戦ったシアトルは親日的な町

 最初に足を踏み入れた94年アメリカW杯を皮切りに、96年、2006年、2014年と過去4回同国に赴いている筆者だが、これまで訪れたのは、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ダラス、マイアミ、アトランタ。カナダ国境に近いワシントン州のシアトルは初めてだ。明治時代に日本郵船が横浜港から直接航路を開設したことで日本人の居住者が多く、今も他都市に比べて日本人・アジア人の比率が高いところだ。加えて、イチローがシアトル・マリナーズで偉業を達成したことも追い風となり、親日的な雰囲気が高いと言われている。

Tモバイルパーク前のイチローの巨大な写真(筆者撮影)
アメリカ西海岸の大都市・シアトルを一望する(筆者撮影)

シアトル・タコマ空港~市街地までのウーバー金額は9000円。市街地のホテルは3万円超

 その町に到着して、真っ先に驚いたのが物価だ。コロナ禍以降の急激な円安とアメリカ国内でのインフレによってさまざまなモノの値段が高騰しているというニュースは耳にしていたが、シアトル・タコマ空港から市内のレンタルハウスまでウーバーを使おうと調べてみると、いきなり60ドル(約9000円。以下、1ドル=150円で計算)と出てきたので断念。公共交通機関利用に切り替えた。

 シアトルはライトレール(路面電車)が走っていて、全区間3ドル(約450円)。2~3駅の移動だと日本の2倍になってしまうが、遠くまで行くなら割安になる。スイカやパスモと同じような「オルカカード」を3ドルで購入し、必要な金額をチャージしながら使えるのも便利。バスやモノレールも同じ料金体系だ。滞在先から試合会場のルーメン・フィールドが公共交通機関で行き来できる範囲内だったのでかなり助かった。

ルーメン・フィールドで行われた浦和対リーベルプレート戦(筆者撮影)

 現地での滞在はホテルを選ばず、レンタルハウスにした。というのも、市街地のホテルはどこも3万円以上。2万円以下で泊まれる手ごろな宿がほぼなかったからだ。空港エリアまで行けば1万円台はあったが、ライトレールで30~40分の移動を強いられるため、どうしたもんかと頭を悩ませたのだ。

 そこで、次なる手段として、Airbnbの予約サイトを物色。ルーメン・フィールドから2駅南に行ったビーコンヒルの一軒家を見つけ、取材仲間とシェアすることにした。お値段は8泊で30万円。1泊当たり3万7500円で、1人当たり1万8750円だったが、この金額はダウンタウンのホテルよりはるかに安かった。今のアメリカに赴くのであれば、このくらいの宿泊費は最低限ということになる。我々日本人にとってハードルは上がる一方のようだ。

スーパーの野菜コーナー。値段は日本の倍以上(筆者撮影)

野菜が軒並み高く、お菓子も気軽には変えず。日系スーパー「宇和島屋」は頼れる存在

 レンタルハウスの利点は自炊ができること。その環境を生かすべく、早速、近所のスーパーマーケットへ行ってみると、何もかもが想像以上に高かった。日本のスーパーで売っている100円の野菜パックの一回り大きいものが2・5ドル(375円)、トマト1パックが3ドル(450円)、卵も1パック6ドル(900円)といった具合だ。

 豚肉は大型パックで10ドル(1500円)とやや割安だったが、お菓子類も1ドル台は全く見当たらない。海外でよく売っているLays(レイズ)のポテトチップに「6・19ドル(930円)」という表示がついているのを見た時には、目が飛び出そうになった。

 続いてアルコール・コーナーに向かうと、ビールは500ミリ×6本で9ドル(1350円)という格安商品があって安堵した。だが、10ドル(1500円)以下のワインボトルは皆無。ビール6本・赤ワイン1本・炭酸水1本を購入しただけで、日本円のカード決済額が4300円に上ったが、全てのモノが日本の2倍だと考えれば分かりやすい状況なのだ。

 スーパー情報で付け加えると、ルーメン・フィールドから徒歩圏のチャイナタウンに「宇和島屋」という日系スーパーがあり、比較的安価で食品を入手できる。筆者も試合日に出向いたが、キャベツ1玉が1ドル(150円)、小ねぎが50セント(75円)と日本と同じような値段で売っていたので、迷わず購入。ラーメンやサラダに入れたが、こうやって安い商品を探さなければならないのが、今の日本人のスタンダードなのかもしれない。

ポテトチップスも高嶺の花(筆者撮影)

サーモンステーキとビール1杯で6000~7500円は見込むべき!

 前回の訪米だった2014年ブラジルW杯直前のマイアミ合宿の時は1ドル=100円程度。物価もそこまで釣り上がってはいなかったので、「何もかもが高い」という印象は全く抱かなかった。あれから11年が経過し、日本の国力低下を痛感させられると同時に、将来に不安も覚えた。

シアトルは魚介類が有名(筆者撮影)

 スーパーへ行くだけで途方に暮れるのだから、外食はさらに難易度が上がる。太平洋に面するシアトルはシーフードが有名で、町一番の市場である「パイクプレイス・マーケット」でもイキのいいサーモンやエビなどの魚介類が数多く売られていた。このあたりのレストランに入り、サーモンステーキとビール1杯を注文すれば、安いところでも30ドル(4500円)は下らないだろう。そこに税金とチップが上乗せされるのだから、1回の外食は40~50ドル(6000~7500円)と考えるべきだ。

 ファーストフード店はチップがないため、一般人にとってはまだ利用しやすいが、マクドナルドのビッグマックセットが最低10ドル(1500円)程度。やはり日本の2倍近い。

シアトルの名所・パイクプレイス・マーケット(筆者撮影)

日帰り圏内のカナダ・バンクーバーは1ドル=106円で物価高がやや緩和

 実は今回、滞在終盤にカナダのバンクーバーまで高速バスで日帰り往復してきたのだが、こちらは1カナダドル=106円という為替レートだったこともあり、マクドナルドのビッグマックセットは10カナダドル(1060円)程度。まだ外食できるチャンスはありそうだ。

 実際、筆者もフードコートでサーモンと野菜焼きのランチプレートを注文。値段は税金とチップ混みで20カナダドル(2160円)で、日本と比較すれば高いのだが、まだ許容範囲の金額だった。ただ、W杯取材のような長期滞在になると、毎回、外食というわけにはいかない。1年後の2026年北中米W杯取材時はさまざまな工夫が必要になると感じた。

シアトルから車で3時間ほど北上したバンクーバーの港(筆者撮影)

 シアトルの物価高に話を戻すと、スペース・ニードルという市内有数の観光名所の入場料(18~64歳)が49ドル(7350円)という設定だったことにもビックリさせられた。65歳以上のシルバー世代は44ドル(6600円)と少し割安だったが、東京スカイツリーの平日2100円、回廊デッキ・展望回廊込みの3100円よりはるかに高い。この状況だから、海外から日本にやってくるインバウンドの観光客は気軽に日本国内の名所を行き来できるはずだ。再び円高方向に触れてほしいと心から願ってしまった。

バンクーバーのフードコートで食べたサーモンステーキ(筆者撮影)

環境・時差・移動…、2026年北中米W杯制覇を狙う日本代表が越えるべきハードルは多い

 円安・物価高に直面する我々の鬱憤を晴らすべく、1年後の2026年北中米W杯では、日本代表に何としても大躍進を遂げてほしい。今回の浦和は残念ながら早期敗退を強いられてしまったが、W杯優勝の大目標を掲げる森保ジャパンには、出来る限り、頂点に近づいてもらいたいものだ。

 試合会場がシアトルやバンクーバーになれば、6月でも気温10~25度と爽やかで過ごしやすいため、いいコンディションで試合ができるだろう。ただ、ご存じの通り、次回のW杯はアメリカ・カナダ・メキシコの16都市・16会場で開催される。広大なエリアを行き来しながら、最大8試合を戦い抜くのは過酷以外の何物でもないのだ。

 今回のクラブW杯でも雷雨で試合が中断したり、あまりの猛暑でベンチ入りメンバーがロッカールーム待機を余儀なくされるといった事態が起きている。日本代表がベースキャンプをどこに置くか、グループリーグ3試合の会場がどうなるのか、いかにして移動負担を軽減するのかといった点は成否を大きく左右する重要テーマになってくる。環境を制することが成功への第一歩と言っていい。

ルーメン・フィールドの外観(筆者撮影)

 組分け抽選に関して、現時点で決まっているのは、メキシコがA組、カナダがB組、アメリカがD組に入るということだけ。日本が抽選に有利な第2ポッドを死守した状態で、上記3組のいずれかに入った場合をシミュレーションしてみても、環境と移動負担は大きく変わってくるのだ。

 例えばAの2であれば、メキシコシティ→アトランタ→グアルルーペという移動になる。Bの2だとトロント→ロサンゼルス→シアトルでの3試合、Dの2ならロサンゼルス→サンフランシスコで2試合という流れになる。移動が一番少ないのはDの2だが、暑さを回避できるのはBの2。ただ、東側のトロントから西海岸のロサンゼルス、シアトルに動くということで、時差と移動負担は大きくなる。Aの2はタテ移動が続き、暑さとの戦いも強いられる。どこに入っても簡単ではないのが、1年後の大舞台なのだ。

 それ以外の組に関してはまだそういったシミュレーションもできないため、日本サッカー協会も準備が大変だ。拠点確保にも巨額の投資が必要になるし、日本円で全ての準備をしなければならない我々日本人にとって辛い大会になるだろう。

 そういう困難を跳ねのけ、大きな成果を残してくれれば、2011年女子W杯(ドイツ)で世界一になったなでしこジャパンのように国民に希望を与えられる。日本代表の成功はアメリカを筆頭に北米の現状をしっかり把握することからスタートする。強い覚悟を持って1年後に向かっていくべきだ。

シアトル・マリナーズの本拠地・Tモバイルパーク(筆者撮影)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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