
一般社団法人 日本患者支援財団は昨年9月に創立され、難病患者の支援を中心に活動している。患者と家族を継続的に支援するための仕組みづくりを目指しており、患者一人ひとりがより自分らしい生活を送るための羅針盤となり、必要な情報にアクセスし、安心して生活できる環境づくりをサポートするためのポータルサイト「かんしん広場」を運営している。
多くの難病情報サイトは知識レベルの情報提供が多いのに対し、「かんしん広場」はこの難病であればこの先生など具体的な記事が多く、日々の生活サポート情報など、より身近で実践的な情報発信が特徴となっている。難病患者同士のコミュニティ形成にも力を入れている。
今回は代表のデービット・リーブレックさんにインタビューしながら、難病患者の現状や、難病でも快適な生活を過ごすためのコツなどを聞いてみた。
日本の医療に貢献したいという使命感
――最初に財団の活動について簡単に教えてください
リーブレックさん 日本患者支援財団の理事を務めております、デービット・リーブレックです。
当財団の主な活動は、難病を中心に患者さんやご家族が適切な情報にアクセスし、安心して療養生活を送れるよう、難病に関する情報発信と、患者支援の仕組みづくりを行っております。
また、患者さんが適切な治療法を見つけ、医師や他の患者さんとつながり、彼らを助けることのできる人を見つけられるような支援も行います。具体的には、患者会のホームページ制作と情報発信の支援、難病患者さん向けの支援ポータルサイト「かんしん広場」の運営と、各種疾患の啓発活動、早期診断に向けた啓発活動を行っております。
私自身、20年以上にわたりWebサイト運営プラットフォームの開発に携わり、アイ・モバイル株式会社の代表取締役として3万件以上のWebサイト制作実績を積んでまいりました。ヘルスケアIT分野でも病院検索サービスを立ち上げており、日本の医療に貢献したいという強い使命感から、この財団を設立しました。
指定難病を中心とした希少疾患の患者さんへの支援活動
――最初に、「難病」の定義ですが、ガンや脳卒中は「治るのが難しい病気」ですが、難病ではないのですね?
リーブレックさん 「難病」は、発病原因不明で治療法が未確立、患者数が少なく、長期療養が必要な病気と難病法で定義されています。がんや脳卒中は、確かに治るのは難しいですが、患者数が多く治療法がある程度確立されているため、「難病」には含まれません。
当財団では、指定難病を中心とした希少疾患の患者さんへの支援活動を行っております。
希少疾患を持つ人の多くは、生活習慣病やその他の疾患も併発しています。こうした希少疾患を持つ患者さんを効果的に支援するためには、すべての患者さんを支援する必要があります。なぜなら、患者さんの中には、自分が希少疾患であることに気づかず、治療法や対処法があることすら知らない方もいるからです。

――想像するのも辛いですが、実際、希少疾患に罹患してしまった人や家族には、どんな苦労が待ち受けているのでしょうか?
リーブレックさん 難病に罹患された方やご家族は、複合的な課題に直面します。
まず、希少疾患ゆえに診断が下されるまで時間がかかり、適切な治療を受けるまで数年かかってしまうこともあります。あるいは、異なる疾患の診断を受け、複数の医療機関を受診しても原因が特定できず不安を抱えながら生活している方もいらっしゃいます。
診断を受けて疾患が判明したとしても、治療法が限定的であり根本的な治療方法が確立されていないこともあります。対症療法が中心となり、症状の進行や変化に日々向き合うことになり精神的・身体的負担を抱えてしまうことが多いです。
さらに、長期療養による医療費負担や、周囲の理解不足から就労が続けられないなど、経済的負担や社会的な孤立感も大きな課題となっています。
また、同じ疾患を患っている人や相談や悩みを共有できる相手も少なく、周囲からの理解も得られず、孤独を感じながら日々の生活を送っている方々がいるのも実状です。
この状況は、早期発見の重要性を浮き彫りにしています。もし、希少疾患の可能性に早期に気づく手助けができれば、彼らを支援し、病気の進行を防ぎ、さらには治癒へと導くことができるかもしれません。製薬会社の医薬品開発分野では、驚くべきイノベーションが次々と生まれています。患者さんやそのご家族にとって本当に役立つ、画期的で効果的な治療法を提案できる優秀な医師を見つけるお手伝いができるかもしれません。

サイトを通じて本当に役立つ情報を提供
――日本患者支援財団ではサイトを新設して、難病患者さんに役立つ情報を提供されています。
リーブレックさん 「かんしん広場」は2024年11月に開設し、患者会紹介と患者会のホームページ支援を中心に運営してまいりました。2025年5月に難病患者さんとそのご家族を支援するためのプラットフォームとして、リニューアルいたしました。難病患者さんを支える関係者(専門医、研究班、患者会、製薬会社、自治体など)の有益な情報をお届けし、患者さんの関心が高い病気や治療に関する情報から、他の患者さんの体験談、生活の支えとなる社会保障制度まで幅広く提供いたします。患者さんが安心して情報を探すことができる環境の実現を目指しています。
――サイトで最も関心を持って閲覧されている記事とは?
リーブレックさん 障害者手帳、生活保護など生活の支えになる記事は関心が高いです。長期療養が伴うため、経済的負担や就労の困難が大きな課題となっていることが伺えます。
社会保障制度の情報を整備したコーナーでは、公的支援情報に関する情報を、利用者にわかりやすく解説しております。行政の情報は難しく、自身が対象として利用できる制度が分かりにくい、という患者さんの声から立ち上げたコーナーになります。
生活を安定させ、安心して治療を続ける上で不可欠な情報なため、高い関心があるということがわかりました。
――サイト運営で最も苦労されている点について教えてください。
リーブレックさん サイト運営で最も苦労しているのは、「本当に役立つ情報とは何か」を常に模索し続けることです。患者さんの病状や生活は多様なため、信頼性と専門性を保ちつつ、誰もが「自分ごと」として受け止められる情報を、いかに分かりやすく、そして鮮度高く提供できるか。このバランスを取ることが日々最大の課題だと感じています。
そのためにも、接点のある患者会や関係者との意見交換を積極的に行い、難病の患者さんが感じている課題を理解し、私たちから提供できる情報を模索しています。
当財団のサイトを見つけるまでに時間がかかる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、私たちは日本全国の医師の方々と提携し、患者さんや患者会が必要とする情報をお届けするお手伝いをしたいと考えています。患者を勇気づけることが何よりも重要です。

一人で抱え込まない
――最後に、もし、家族や自分が難病の診断を受けた場合、どのようなアドバイスをされますか?
リーブレックさん 難病と診断が下された患者さんは、ご本人だけでなくご家族にとっても大きな試練です。
もしご家族の誰かが難病の診断を受けたら、まず「一人で抱え込まないで」と伝えます。私も家族が難病を患ったことがありました。そのとき、インターネットを通して、同じ思いをしている患者さんやそのご家族と繋がることができ、心の支えになりました。
また、情報を集め、サポート体制を整え、前向きに対処することで、困難に立ち向かう力になります。特に難病という患者さんが少ない病気において、「患者会」は心の支えになる存在になるのではないでしょうか。もちろん、診断をしてくれた医師や医療関係者の方々も専門的な知識を持っていますので、困っていることがあれば、ぜひ相談してみることをお勧めします。
正しい情報を得るために、専門医や信頼できる患者会、そして『かんしん広場』のようなプラットフォームを積極的に活用して欲しいです。同じ経験を持つ人との繋がりが、何よりも大きな支えになりますからね。
――ありがとうございました!

一般社団法人日本患者支援財団 代表デービット・リーブレックさん
大学時代から日本で過ごし、自身と家族の経験を基に、 日本のヘルスケアIT分野で貢献を使命とする。株式会社eヘルスケア創業者、会長(現任) 、医療機関検索サイト「病院なび」運営、数千件以上の医療機関Webサイトの導入を持つ。
文/柿川鮎子