
2025年6月22日、イスラエルとイランの戦闘が続く中、アメリカのトランプ大統領は、アメリカ軍によるイランの核施設の空爆を発表。
しかし23日には自身のSNSにおいて、イスラエルとイランの停戦合意を明らかにした。これに対してイランのアラグチ外務大臣は、「合意はない」とXに投稿するなど、事態は流動的だ。
そんな中、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から分析リポートが届いたので、概要をお伝えする。
なお執筆時期はトランプ大統領の〝停戦合意〟発表前であることを留意していただきたい。
米軍はイラン中部にある核施設を空爆、イランは米国を強く非難し報復措置の可能性を示唆した
トランプ米大統領は、日本時間6月22日の午前11時過ぎからホワイトハウスで演説を行ない、米軍がイラン中部のフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンにある核施設に大規模な空爆を行なったと述べた。
米国がイラン本土を攻撃するのは今回が初めてとなる。なお、米CNNテレビは、米国がイランへの追加攻撃は計画していないとの関係者の話を報じたが、トランプ氏はイランの対応次第でさらに攻撃を続けると警告した。
イランのアラグチ外相は同日、訪問先のイスタンブールで記者会見し、米国の軍事攻撃を最も強い言葉で非難するとし、攻撃を仕掛けたのはイスラエルと米国であり、イランに対し外交の場に戻るよう求めるのは見当違いだと述べた。
また、報復措置について、アラグチ氏は話す立場にないとしつつも、「我々は様々な選択肢を持っている」と発言し、報復の可能性を示唆した。
■イランの報復措置としての米軍基地攻撃やホルムズ海峡封鎖は、実際に踏み切ることは困難か
米国がイラン本土への攻撃に踏み切ったことで、中東情勢の先行きは一段と見通しにくくなった。
目先はイランの動向が注目されるが、前述のアラグチ氏の発言を踏まえると、核協議への復帰よりも報復措置の公算が大きいように思われる。
具体的な報復措置としては、
(1)核拡散防止条約(NPT)からの脱退、
(2)イラン周辺国に点在する米軍基地への攻撃、
(3)原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖、
などが考えられる。
現時点では、(1)が選択される可能性は相対的に高いとみられる一方、(2)の場合は、米軍基地のあるカタールやバーレーンなどを攻撃することになるため、イランはこれらの国々から強い非難を受け、孤立する恐れがある。
(3)について、イランメディアは、イランの国会が6月22日、ホルムズ海峡(図表1)の封鎖を承認したと報じた。ただ、海峡封鎖でイラン自身も石油輸出が困難になり、自国経済に大きな影響が及ぶことになる。

■イランの体制存続と核開発譲歩がどのようにバランスされ、停戦合意に至るかを市場は冷静に見守る状況
週明けの国内市場では、日経平均株価が前週末比142円ほど安く始まり、為替は、米ドルやスイスフラン、日本円の避難通貨や、ノルウェークローネやカナダドルなどの一部産油国通貨が、主要通貨に対し上昇した(図表2)。

朝方は、ドル円が一時1ドル=146円80銭近くまでドル高・円安が進み、WTI原油先物価格や北海ブレント先物価格も一時大きく上昇したが、その後はいずれも落ち着いた動きとなっている。
米国はイランの体制転覆を意図していないことや、イランにとって米国との本格交戦は体制存続の危機となり得ることから、両国の衝突激化の恐れは小さいと推測できる。
供給不安の高まりで原油価格や運賃などが急騰する事態とならなければ、市場への影響は限定的と考えられ、イランの体制存続と核開発の譲歩がどのようにバランスされ、停戦合意に至るのかを、市場は冷静に見守っている状況にあたと思われる。
構成/清水眞希