
夏の到来とともに強まる紫外線。今年の6月は晴れの日も多く、多くの人が日焼け対策に頭を悩ませていたことだろう。例年7月も晴天の日が多い傾向にあり、紫外線指数(UVインデックス)が高い日ばかりになるのは確実だ。
紫外線対策として、必須なアイテムが日焼け止めだ。しかし、たくさんの商品が並び、選ぶのも大変。そこで、皮膚科医で水道橋ひふ科クリニック院長の神島輪先生に日焼け止めの選び方について教えてもらった。
今さらだけど「SPF」と「PA」って何?

日焼け止め選びで大事なポイントが「SPF」と「PA」という値だ。これは、紫外線の2種類の波長をどう防御するかに関係してくる。
「紫外線には、UV-Aという肌の奥へ届き、たるみなどの光老化を招く波長と、UV-Bというメラノサイトを刺激し、シミやソバカスにも繋がる、日焼けの原因となる波長があります。SPFはUV-Bを、PAはUV-Aをそれぞれどのくらい防御するかを示しています」
つまり、SPFの値は、日焼けに対しての防御力を示し、PAの値は肌へのダメージを守る効果の高さを示しているわけだ。
「早朝や夜しか外出しないような人ならば、SPFは30くらいあれば十分です。ただ、10時~14時くらいの紫外線が強い時間帯に外にいることが多い人は、夏はSPF50のものを使用すると安心です。PAは+の数(+~++++)で高さを表しており、紫外線を多く浴びる日はこちらも値が高い++++のものを使いましょう」
■数値が高ければ高いほどいい?
日焼けを防いでくれ、肌の老化を防いでくれるのであれば、どちらも値が高いものを選べばいいのではと思ってしまうが、生活スタイルに合わせて数値が違うものを選ぶべきだという。
「たしかに、紫外線を防ぐという意味では数値が高い方がいいですが、その分入っている成分による肌へのダメージが強く出る可能性があります。だからこそ、冬の時期だとSPF50ではなく、30くらいで十分だという風に言われます」
「紫外線吸収剤」や「紫外線散乱材」は肌に良くないというウワサ

日焼け止めに入っている代表的な有効成分というのが「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」だ。これらが両方入っていたり、片方だけ入っていたりする。中でも紫外線吸収剤が「肌に良くない」という風に言われることもある。
「紫外線吸収剤は紫外線を吸収し、それを熱などに変えて肌に届かないようにする働きがあります。そして紫外線散乱剤は紫外線を反射させて日焼けをさせないという成分です。吸収剤の方が、UV-Bを遮断する力が高く、散乱剤の方は、UV-A ・UV-Bを幅広く遮断します」
紫外線を防ぐ方法や効果に違いがあるため、両方入っている製品が一番バランスはいいと言える。
「紫外線吸収剤は基本的に透明なタイプのものが多く、伸びもいい。そのため白っぽくなりづらく、塗り心地もいいでしょう。一方紫外線散乱剤は、白っぽくなり白浮きすることもあります。ただ、紫外線吸収剤は紫外線散乱剤に比べると肌荒れが起きやすいという特徴があります。軽くかぶれるだけではなく、人によっては塗ったら赤くなったり、カサカサしたり、ひどくなると痒みが発生する人も。中にはジュクジュクとした状況になるような人もいるほどです」
紫外線吸収剤が入っている日焼け止めを塗ることで、肌荒れが起きてしまう人がいるため、「良くない」というイメージをもっている人もいるのだ。SPF50やPA++++といった紫外線を防ぐ力が強い製品には、この紫外線吸収剤を多く含んでいることも多いため、肌へのダメージも出がちなのだ。
「近年では成分の研究もすすみ、肌に優しいタイプの紫外線吸収剤も出てきています。とはいえ、やはり紫外線吸収剤の成分に対してアレルギー反応を起こしてしまうなど、体質によって合わない人も存在します。紫外線吸収剤が入っている製品が全員に対してNG ということではありません。しかし、一度でも肌荒れを起こしたことがある人は避けた方がよく、紫外線散乱剤を中心に作られている製品を選ぶことをおすすめします」
テクスチャーは心地よいと感じるものでOK
ちなみに、テクスチャーについては、自分が心地よいと感じるものを選ぶといいそう。
「スプレータイプなどは頭皮にもさっとかけることができるので、特に男性におすすめですね。男性は女性に比べて髪の毛が短い人も多く、頭皮の日焼けも意識してほしい。頭皮へのダメージは髪の毛があって視覚ではわかりづらいですが、将来的な毛髪への影響などは無視できないため、対策をしてほしい」
基本的に日焼け止めは2時間に1回くらいは塗りなおしをした方がいいという。塗りなおしのしやすさなども考えて、自分の生活スタイルにあった日焼け止めを選び、紫外線から全身の肌を守ってもらいたい。
神島輪医師プロフィール
日本抗加齢医学会専門医、日本レーザー医学会認定医、日本皮膚科学会正会員、サーマクール認定医、ウルセラ認定医。東京女子医科大学を卒業後、東京女子医科大学病院、シロノクリニックなどを経て、水道橋ひふ科クリニックを開業。
取材・文/田村菜津季