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コロナ禍を経て視聴者のテレビやメディアとの接し方はどう変わったのか?

2025.06.26

地上波を含む放送やネット配信など視聴メディアにさまざまなオプションが生まれて、ライブ、アーカイブ、見逃し配信など自分の好きなタイミングでコンテンツ視聴ができるようになったが、生活者の“見たいもの”や”視聴の仕方”はどう変化したのか?

テレビを含む動画ビジネスを支えるデータ&システム会社であるビデオリサーチは、2017年から生活者のメディア接触の変化を把握する目的で、生活者の「生活行動」と「メディア接触行動」の特徴を読み解く取り組みを行っている。今回は、人々の生活実態を一日の流れで捉えることで生活者の情報接点が把握できるデータパッケージである『MCR/ex』(生活行動・メディア接触時間調査)のデータを基に、出来事や状態の変化など順序のあるデータを分析する解析手法である「ソーシャル・シークエンス分析」を使った分析の結果を発表した。

合わせて生活者に関するシンクタンク・ひと研究所所長の渡辺庸人氏とメディアデザイン研究所所長の奥律哉氏が分析した「コロナ禍を経て複雑に変化した生活やメディア接触行動」に関する情報も紹介していく。

従来の“テレビ専念”クラスターが分散してメディア接触が変化

『MCR/ex』の15分ごとの行動データを睡眠、外出、テレビ視聴など代表的なアクションを軸に再形成して、生活者の行動パターンを11通りに分類して分析したのが「シークエンス分析(2024年データ)」だ。なお行動パターンは次の通り。

(1)仕事や学校があり、月~金で定型的・外出が多い…(1)月~金・日中フルタイム・テレビ型(2)月~金・日中フルタイム・ネット型(3)月~金・遅めフルタイム型(4)月~金・時短外出型(5)在宅勤務型
(2)在宅していることが多く、在宅中はテレビ視聴が目立つ…(6)在宅-テレビ専念型(7)在宅-テレビながら型
(3)在宅していることが多く、在宅中はネット利用が目立つ…(8)在宅・ネット中心-日中外出型(9)在宅・ネット中心-夕方外出型
(4)在宅していることが多く、在宅中のメディア利用は限定的…(10)在宅・生活行動中心型
(5)昼夜逆転・夜勤など深夜行動あり…(11)深夜外出型

この分析では、2018年から2024年のデータを合算して解析した場合に出現していた「テレビ専念クラスター(テレビ専念視聴が多い人を示す集まり)」が、2024年単体のデータでは出現していないことが確認されたという。

要因としては、テレビをリアルタイムで専念視聴する人がほかのメディアへ分散したことや共働き夫婦や働き続けるシニアの増加で、家時間が減少したことが挙げられるという。渡辺氏は、「今は限定的な範囲のコンテンツであっても、SNSを通じて好きなもの同士でのコミュニケーションがとれるようになった。

その影響で生活者が職場や学校などのパブリックな興味関心以外にも“自分自身の興味関心”というプライベートな領域にフォーカスを当てやすくなっているのではないか」と分析している。

すきま時間を使って多様化した個人の興味関心分野に合うコンテンツをシームレスに行き来できるようになったので、特にショート動画は若年層を中心に興味関心の入口となりやすい傾向がみえる。

だがSNS上で話題になったコンテンツをテレビで専念視聴する若者も存在しており、動画配信サービスとテレビは補完関係にあるともいえるだろう。

奥氏も「以前は見たいテレビ番組があれば視聴者はテレビの前で待っている“メディアに生活を合わせる時代”だったが、現在は寝て・起きて・外出という生活の三行動の中にテレビ視聴を含めたメディア行動が分散されていく“生活の中のメディア行動”に変化している」と分析している。

若年層で朝のインターネット動画視聴が増加

一日の自宅内でのインターネット動画視聴行動の変化について、『MCR/ex』で分析すると朝のメディア視聴行動に変化があったという。2019年から2023年のデータを2年おきに分析すると、特に12歳から29歳の若年層では変化が顕著で、6時から8時台にかけて2021年では見られなかったインターネット動画利用の山が2023年では出現している。

コロナ禍で配信動画を視聴する習慣ができたことや朝の時間を有効活用する一環としてメディア利用に使うようになっている人が一定数いるといえるだろう。ひと研究所の「朝の動画視聴 生活サーベイ」でも特徴的な事例が挙がったという。

「海外ドラマやアニメを見ながら外出の準備をする」では、生活者は自分が好きな海外ドラマは作品展開で残り時間を把握できるため、身支度などのタイマー代わりに動画を視聴していることが想像できるという。

さらに夜の予定の時間や睡眠時間を確保するために、朝にスポーツの試合結果や好きなコンテンツを視聴する人も存在しているという。生活パターンに合わせてタイムシェアリングをして、観たいコンテンツをすき間時間に入れ込んでいく最近の傾向が見える。

今後のテレビのカギは「最速性」と生活行動との関係性

今後のテレビの可能性については、渡辺氏は「コンテンツ力があれば選ばれ、その力が今後より重要になってくると思います。SNSで情報が手軽に取得できる環境下、スポーツをはじめとする何が起こるか分からない瞬間を体験するにはリアルタイムでの視聴を選ぶ人が多いと考えられます。

リアルタイムで見て面白かっただけではなく、放送前の準備段階、放送後の感想の共有といった体験性もリアルタイムの価値です。テレビ視聴の議論をするとコネクテッドTVも含めたテレビという『箱』の中での視聴者の取り合いという話になりやすいですが、生活者を俯瞰して見えてくるのは、テレビモニターの視聴の外側にある生活行動との関係が重要であるということです。

メディア行動が生活の中に分散していく中で、「推し活」のような生活者の行動様式の特性は常に注目しなければならないと思います」と分析している。

一方の奥氏は、「インターネット動画の浸透とコロナ禍によって、生活の変化は3倍速で進みました。在宅勤務をはじめ、家の中で比較的自由に時間が使える生活を体験、加えて各種インターネット動画やコネクテッドTVなどさまざまなサービス拡大がほぼ同時に起こったことで、メディアはより人々の好みに合わせて選ばれるようになりました。

今後もメディア行動は分散の傾向にありますが、一方で行動の根底にある価値観など変わらないものもあります。時代ごとの背景の中で変わりゆく各世代の基礎的なメディア行動と人々の生活の仕組みや潮流がどこに向かっているかを捉え、一方で時間やお金といった有限なものを人々がどのように配分していくかも踏まえた上で、その先でコンテンツビジネスや広告ビジネスはトレンドセッターとして待ち構えていく必要があります」と分析している。

コロナ禍の影響や動画配信サービスの浸透で生活者の行動パターンは再構成されていると考えられるが、ドラマや映画でも「コンテンツ力」に加えて「最速」が「価値」になる傾向は見られるという。今後は「最速性」のようなリアルタイム視聴の新しい価値を見出すことが必要になりそうだ。

■分析担当者プロフィール

渡辺庸人氏
ソリューションユニット フェロー/ひと研究所 所長。社会学修士、専門社会調査士。2009年にビデオリサーチ入社。主に広告会社や広告主の調査企画・分析に従事し、若者研究や幸福研究などにも携わる。2017年よりひと研究所に参画して研究発信・セミナー登壇などを行う。2024年より現職。現在は、生活行動とメディア利用の関係を中心に研究中。

奥律哉氏
メディアデザイン研究所 所長。1982年、電通入社。ラジオ・テレビ局、メディアマーケティング局、MC プランニング局などを経て、電通総研フェロー、電通メディアイノベーションラボ統括責任者を歴任。2024年6月末に電通を退社し、ビデオリサーチにてメディアデザイン研究所 所長を務める。主に情報通信関連分野について、ビジネス、オーディエンス、テクノロジーの3つの視点からメディアに関わる企業のコンサルティングに従事。総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」構成員。NPO法人/放送批評懇談会 出版編集委員会委員。

「コロナ禍を経て複雑に変化した生活やメディア接触行動」分析概要

・シークエンス分析
サービス名:『MCR/ex』
調査期間:2018年、2020年、2022年、2024年「春調査(各6月実査)」
対象エリア:東京50km圏、関西地区、名古屋地区
調査対象:男女12歳~69歳
サンプル数:2018年:7764ss/2020年:7948ss/2022年:7575ss/2024年:7799ss(合計:3万1086ss)

・自宅内のインターネット動画利用行動率
サービス名:『MCR/ex』
調査期間:2019年4月~6月、2021年4月~6月、2023年4月~6月
対象エリア:7地区 (東京50Km圏、関西地区、名古屋地区、北部九州地区、札幌地区、仙台地区、広島地区)
調査対象:男女12歳~69歳
サンプル数:2019年:1万0814ss/2021年:1万1631ss/2023年:1万0926ss

・ひと研究所「朝の動画視聴 生活者サーベイ」
調査方法:モニターからの写真提供・インタビューなど
調査対象:モニタリングサーベイモニター(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県中心)
調査期間:2023年7月
調査実施:精クリエイティブ

『MCR/ex(エム シー アール エクス)』

『ビデオリサーチ』

構成/KUMU

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