
マンションを選ぶとき、「風通し」まで気にしている人は少ないかもしれない。
だが、毎日の暮らしの快適さを左右するのは、実はこうした見落としがちな要素だ。
熱気がこもってしまう部屋と、自然の風で過ごしやすさが保たれる部屋では、住み心地はまったく違ってくる。
この違いは、間取り図で窓の配置を確認すれば、居住前にある程度判断できる。
通風を意識して物件を探すと、新築だけでなく中古にも“掘り出し物”が見つかるかもしれない。設計のプロに、風通しの良い間取りの特徴とチェックポイントを聞いた。
風通しのカギは「窓の配置」
日本はモンスーン気候に属し、湿度が高く、夏には厳しい暑さが続く。
こうした気候の中で、室内の快適さを保つには風の通り道を確保することが欠かせない。
そのためにもっとも重要なのが、窓の位置だ。空気の入り口と出口、つまり「2方向に窓がある」ことで風は流れる。
たとえば、リビングに窓があるだけでなく、対角線上の個室にも開閉可能な窓があれば、空気の通り道ができる。「角部屋」や「両面バルコニー」の物件は通風を確保しやすいが、そうでなくても、窓の位置次第では風が抜けやすい物件になる。
間取り図を見るときは、風の通り道を想像してみよう。
対角線上に窓があり、風の通り道が確保されている住戸のほうが、暮らしやすさは格段に高まる。
中古マンションこそ「通風のいい間取り」は狙い目
外廊下のマンションは、バルコニーに加えて反対側の外廊下側にも窓があるので、風が住戸内を通り抜ける構造になっている。一方、内廊下の場合は、外気に触れる外壁面を多くする工夫が施されている物件もある。
両面バルコニーや吹き抜け構造を採用するマンションだと通風は理想的だが、新築マンションでは、建築コストなどの制約から数は少ない。そこで狙い目なのが中古マンションだ。なかには、今ではコスト的に難しいとされるような贅沢な設計がなされているものも多く、実は“掘り出し物”が眠っていることも。

通風と同時にプライバシー面もチェックを
外廊下の場合、廊下側の窓を開けた際に、室内が見えないように配慮されているかも重要だ。たとえば、外廊下の床より室内の床の方が高くなっていると、外を歩く人と視線が合いにくくなる。また、窓に視線を遮る「ルーバー面格子」が設置されていると安心だ。
風通しは窓の配置だけでなく、方位や隣接する建物の影響も受ける。窓の外に大きな建物があると、風の取り道が遮られることがあるため、周囲の環境にも注意したい。
見た目や設備に目を奪われがちなマンション選びだが、快適な暮らしを叶えるカギは、実は“通風”のような見えにくい部分にある。
間取り図に少し目を凝らすだけで、風の通り道や住み心地の違いが見えてくる。
そんな「目利き力」があれば、新築だけでなく中古にも、快適さを備えた掘り出し物がきっと見つかるはずだ。
この記事は、書籍『本当に価値のあるマンションの見つけ方』より、一部内容を抜粋・再構成したものです。書籍では他にも、購入前に知っておきたいマンション選びの視点を多数紹介しています。
■著者
日建ハウジングシステムは、1970年に日建設計より分社・独立。大規模ニュータウンが誕生したマンション黎明期に設立されて以来、50年以上にわたり、集合住宅などの設計に豊富な知見を生かし、「暮らし」の仕組みづくりを通じて住関連分野で高い信頼を築いてきた。これまでに12万戸を超える集合住宅を手掛けており、都市集合住宅の企画・設計および調査研究に卓越した専門性を誇る。2025年4月には日建設計と合併し、より幅広い住宅提案を行っている。
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この記事で紹介した内容は、まだほんの一部です。
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