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エリート系VTuberが誕生した理由とは?「にじさんじ」と「ホロライブ」の戦略の違い

2025.06.29

2025年4月「にじさんじ」から現役の精神科医として活躍するVTuberがデビューしました。VTuberはゲーム実況や雑談が配信する動画の大部分を占める中、睡眠や不眠をテーマとする専門性の高いコンテンツを作成しています。
「にじさんじ」は料理系VTuberユニットなど、新機軸を打ち出してきました。その背景には運営会社の戦略が隠されており、「ホロライブ」との明確な違いが現れています。

スターを生み出す仕組み化に注力する「ホロライブ」

「にじさんじ」を運営するANYCOLORと「ホロライブ」のカバーは、今期の業績が決定的に異なることが明らかになりました。
ANYCOLORは2026年4月期の営業利益を上限で前期比22.9%増と予想。下限でも16.7%増としました。およそ2割の営業増益を計画しています。一方、カバーは2026年3月期の営業利益を同2.5%増と予想したのです。ANYCOLORは2ケタの大幅な営業増益、カバーは微増となる見込みで、明暗が分かれました。
カバーの利益が伸び悩む主要因となっているのが構造改革費用。人員再配置や業務プロセスの見直し、販管費の最適化などを行うための費用を上期に計上します。
構造改革を行う背景の一つにあるのが、人気タレントの相次ぐ離反。2025年は登録者数が450万を超えて世界一だった「がうる·ぐら」、2期から活躍していた「紫咲シオン」も卒業しました。2024年には「湊あくあ」も離反しています。
カバーの谷郷元昭CEOは、決算説明会にて「タレントが活躍できる舞台を整えるため、音楽やライセンスなど、さまざまな事業の拡大や基盤を整えることに、金子(執行役員CFO)や私もリソースを割いてきました。その結果として、タレントとコミュニケーションを図る機会がなくなってきていた」と課題を分析。そのうえで、「タレントが卒業しているから抜けた分を入れよう」という考えはないとし、構造改革で新体制へと移行することによって「伸びているタレントをより伸ばすようなコミュニケーションをとりやすくなってきている状況かと思います」と語りました。
スターVTuberの相次ぐ卒業の穴を埋めるため、新人を大量にデビューさせることはしない姿勢を打ち出しました。既存のタレント育成に力を入れるといいます。これは、カバーのマネジメント体制を一層強固なものにする動きだと見ることができます。

VTuber業界の2台巨頭の決定的な違いは何か?

カバーはスター育成特化型のマネジメント体制を採用していました。
2025年3月末時点で所属するVTuber数は89で、従業員は679人います。一方、ANYCOLORのVTuber数は170、従業員は532人。カバーは少ないVTuberを多くの人員が支えているのです。
「ホロライブ」に所属するタレントは、楽曲の提供や歌·ダンスのレッスンなどの手厚い支援が受けられます。自然と活動するタレントにも統一感が生まれるため、「ホロライブ」というブランドそのものへのファン層が形成されています。
ANYCOLORはタレントの個性を重視し、自由に活動させる方針をとっています。いわば、カバーとは真逆の方針であり、VTuber個人や所属するユニットのファンがほとんどを占めています。
つまり、カバーはVTuberが形成する市場の中で成長する傾向が強い一方、ANYCOLORはマーケットにとらわれずに新たなファン層を獲得する潜在性を持っているのです。事実、ANYCOLORは2021年に結成した「ROF-MAO」のデビュー以来、女性ファンを数多く取り込むことに成功しました。
VTuberは女性タレントのキズナアイから出発したといわれていますが、マーケットを形成していたのはほとんどが男性でした。ANYCOLORはアイドルやアニメ、マンガ、女性向けゲームなどに興味を持っていた人を取り込むことに成功しました。市場を開拓したとも言いかえることができます。
ANYCOLORの営業利益率は38.0%で、カバーは18.4%と収益性に圧倒的な違いが生じています。これはANYCOLORの物販比率が高いことに起因していますが、ANYCOLORはライトファン層を多く抱えているため、アクリルスタンドなどの利益率の高い商品が販売しやすいのです。カバーはファンとの一体感を醸成するイベント·コンサートなどへの依存度が高く、マネジメントに必要な人員も多いために利益率が低い傾向にあります。
ANYCOLORは新たなファン層を獲得し、市場を開拓し続ける戦略をとっているのです。VTuberというマーケットを重視するかしないか。2社の違いはここにあります。

次々と誕生する新ジャンルのVTuber

その違いを踏まえると、「にじさんじ」からエリート系VTuberが誕生した理由がわかります。4月にデビューしたのは精神科医「一橋綾人」と、凄腕のセールスマン「五木左京」の2名。「一橋綾人」は睡眠に関連する動画を配信していますが、睡眠不足や寝つきが悪いなどの悩みを抱えている人をファンとして呼び込もうとしているのは明らか。VTuberに興味のない人が市場に参入する可能性を持っています。
「五木左京」も、仕事の悩みを抱える人や就職活動をする人をファンにできるかもしれません。
「にじさんじ」からは2024年8月に5人組のユニット「Speciale(すぺしゃーれ)」がデビューしています。5人は同じカフェレストランで働いているという設定になっており、料理やレシピに関する動画を多数配信しています。料理系VTuberです。「にじさんじ」が積極的に新たなジャンルを開拓しようとしている様子がわかります。
英語圏で活動する「NIJISANJI EN」からは2025年3月に「BY THE BEAT」がデビューしました。一時、活動を控えていた「NIJISANJI EN」ですが、再始動しました。海外は開拓の可能性を秘めた一番の市場であり、ANYCOLORは何としてでも成功させたいでしょう。開拓者としての手腕が問われる一年となります。


文/不破聡

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