
野辺山宇宙電波観測所に直撃取材!
パラボラアンテナは劇場版の予告映像のように本当に動くの?
自然科学研究機構 国立天文台
野辺山宇宙電波観測所 所長
西村 淳さん
大阪府立大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。専門は電波望遠鏡の開発(ソフトウェアと電波分光計)と、それを使った星間ガスの探査。豊富な知識をもとに映画の重要なシーンにも助言したそうだ。
予測不能ではあるものの 昼間も夜間も動く!
劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』の予告編を見るかぎり、事件と何か関係しそうな巨大パラボラアンテナ。これに似たものが、長野県に実在する「野辺山宇宙電波観測所」に設置されているのだ。
同所は山に囲まれた平坦地で、寒冷地ながら雪が少ない。水蒸気量も少なく、電波観測に最適なのだとか。その役割について、所長の西村淳さんは次のように話す。
「全国の大学や研究者に利用されている国立天文台の大規模な天文観測施設です。ここにある世界最大級の45m電波望遠鏡は1982年に運用を始めました。これまでには銀河の中心に巨大ブラックホールが存在することを初めて確認でき、世界中を驚かせました」
45m電波望遠鏡は運用開始から40年以上たった今でも世界最高性能を誇る。電波の観測は昼間でも行なっており、運が良ければ、映画と同様に巨大なパラボラアンテナが動くところを見られるのだ。
「観測シーズンは9月から5月頃。大学や研究者の観測内容は千差万別なので、いつでも動いているわけではありませんが……」
現在は運用されていないが、60台の電波へリオグラフが並ぶ光景や、ミリ波干渉計を移動させるためのレールが敷かれているのも見どころのひとつ。いずれも劇場版の予告に登場するシーンと重なり、写真スポットになりそうだ。基本的には研究機関なので、望遠鏡などは外からの見学となる。しかし、観測所のある南牧村がナイトツアーなどのイベントを不定期で開催していて、それを利用すれば、夜のパラボラアンテナも撮影できる。巡礼する際には要チェックだ。
現在稼働している望遠鏡各種とその配置
年末年始を除き、毎日8時30分から17時まで見学可能(無料/自由見学)。ミリ波干渉計の観測棟などを改修した展示棟では、4次元デジタルシアターなどを併設。
【1】45m電波望遠鏡
劇場版同様の巨大なサイズは圧巻! 高感度で〝分解性能〟も高い。太陽系内の天体、惑星の大気、宇宙の果ての原始銀河まで、広く観測を行なっている。
【2】ミリ波干渉計
小さな望遠鏡をたくさん集めることによって、ひとつの大きな望遠鏡のように観測できるのが特徴だ。現在、残っているのは6台で、いずれも運用は終了済み。
【3】電波へリオグラフ
太陽を観測する望遠鏡。運用は終了しているが、現在も60台が並ぶ。84台分のアンテナによって、直径500mの望遠鏡に相当する解像度を誇ったそうだ。
【4】太陽電波強度偏波計
太陽の電波の強さと特性を観測可能だ。8台のアンテナで7つの周波数を観測する。パラボラアンテナの直径が大きいほど大きな波長を拾える。
取材・文/内野智子(野辺山宇宙電波観測所)、宇野なおみ(長野県警察本部) 撮影/竹内望菜(長野県警察本部) 編集/田尻健二郎
©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
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