
スポーツの後やふとした瞬間、汗や身体のにおいが気になりやすい季節となった。身体のにおいといっても、体臭からわき臭、頭皮、口臭、加齢臭、さらには疲労臭など身体から発するにおいはさまざま。
“スメルハラスメント”という言葉も生まれ、エチケットとして気を付けたいのはもちろんだが、においは健康状態を示す「健康のバロメーター」ともいわれている。
そこで大正製薬は、20代から40代の全国の男女420人を対象に、『気になるカラダのにおい意識調査』を実施したので、身体のにおいのメカニズムについて、小林メディカルクリニック東京院長の小林暁子先生に解説とともに紹介しよう。
女性が不快に感じている男性のにおいは「口臭」!男性が不快に感じる女性のにおいは「タバコ」
男女それぞれに、不快に感じる異性・同性のにおい、また自分が気を付けているにおいについて聞いた結果、自分と周囲とでは不快に感じる(気にしている)においに少しギャップがあることが判明。
男女ともに周囲に配慮して自分自身で気を付けているにおいは、1.口臭(女性:45.7% 男性:32.9%)2.わき(女性:39.0% 男性:25.7%)3.汗(女性:29.5% 男性:24.3%)。
しかし女性が不快に感じる男性のにおいは、1.口臭2.タバコ3.加齢臭。一方男性が不快だと思う女性のにおいは、1.タバコ2.香水3.口臭が上位であった。
清潔志向が高まる中、自分のにおいには気を配っているつもりでも、「タバコ」や「香水」、「加齢臭」は本人にとっては習慣化されているため、気にならない(気づきにくい)のかもしれない。
身内のにおいには寛容!? 不快指数「恋人」は13.1%、「上司/先輩」は26.4%で他人になるほど数値がアップ
周囲でにおいが気になる人について尋ねた。「我慢している」「我慢できず離れた」「本人に伝えた」という“不快指数”は「恋人」で13.1%、「夫・妻・パートナー」17.6%、「兄弟」15.2%、「姉妹」10.5%だが、「同僚」25.0%、「上司/先輩」は26.4%と20%台に上昇。
「通りすがりの人・他人」は33.8%とさらにアップしている。家族・身内の人間のにおいにはいたって寛容で、“他人度”が高まるにつれ、においの不快度もアップするようだ。
男女でにおい意識にギャップあり!自分のにおいが気になる場所は?
回答で目立ったのは男女の差。ほとんど全ての回答で、においを気にする女性の数値が圧倒的に男性を上回っている。
例えば自分が気を付けているにおいで「特になし」は女性25.7%に対し男性は41.0%でトップであった。
「不快に感じる異性のにおい」で、「特になし」は女性26.2%に対し、男性は約半数の50.5%。自分にも周りも、においに敏感な女性、逆に無頓着で、においへの関心度が低い男性、という構図が見えてきた。
自分のにおいが気になる場所・シーンについても聞いたところ、「電車・バスの中」(26.0%)、「エレベーターの中」(16.4%)といった人の密集度が高い場所が上位になっていた。
次いで女性は「デートのとき」(14.3%)が3位と、ちょっぴり女心がうかがえる結果に。男性は「スポーツの後」(13.8%)が3位で、汗のにおいが気になるよう。
このほか「ご自身の理想の香り」の質問では、「石鹸・シャンプーの香り」(34.3%)を支持する人がトップ。自然で控えめなにおいが求められているようだ。
体臭・口臭の原因は、「食べ物」(40.7%)、「生活習慣」(38.3%)、「ストレス」(37.4%)と分析!対策は?
体臭・口臭の原因について尋ねた質問では、「食べ物」(40.7%)、「生活習慣」(38.3%)、「ストレス」(37.4%)、「加齢」(31.4%)の回答が上位を占めた。
にんにくなどにおいの強い食べ物や不規則な生活習慣、疲労からくるストレスが身体のにおいに悪影響があると考える人が多いようだ。
しかし「どんなにおいケアをしているか」聞いたところ、こちらは「お風呂に入る」(56.9%)、「歯を磨く」(41.2%)、「制汗剤の使用」(30.5%)と身体の表面を整える回答が上位となり、「体調管理に気を付ける」の回答は9.3%と少数派。インナーケアにまで気を配る根本的なにおい対策には至っていないようだ。
また、体臭・口臭と腸内環境が関係していることを知っていた人は、「なんとなく知っていた」を含めると約半数(54.3%)になるものの、「知っている」の回答は15.0%にとどまり、身体のにおいと腸内環境の関係については、まだまだ認知度が低いことが分かった。
皮膚から染み出す臭いは、腸内環境を整えることで改善を!小林メディカルクリニック東京院長 小林 暁子先生の解説
身体のにおいのメカニズムについて、小林メディカルクリニック東京院長の小林暁子先生に解説してもらった。
■においの原因
〇汗のにおい
「汗をかくとにおう」と思われがちですが、実は汗の99%が水分で、汗自体ににおいはほとんどありません。においの主な原因は、皮膚にすみついている常在菌。皮脂成分と汗が常在菌によって分解されてできる酢酸などの成分などが、においの正体です。
健康的な汗はさらさらしていてすぐに乾きますが、汗腺の機能が低下すると、ミネラルを多く含んだべたついた汗が分泌され、こうした汗は常在菌を繁殖しやすいため、においも強くなってしまうのです。
〇足のにおい
足の独特なにおいの原因は、多量にかく汗と、角質、靴にあります。足の裏には背中や胸に比べて5~10倍の汗腺があり、1日にコップ1杯ほどの汗をかくこともあります。
また、足の裏は身体で最も角質が厚い部分のため、靴下や靴で密封された状態で汗が蒸発せずにこもると、角質がはがれ落ち、それを栄養分として雑菌が繁殖。これによって足のにおいが発生します。
〇わきのにおい
わきは一般の汗とは異なり、汗自体がにおいます。わきの下など限られた部位に存在する「アポクリン汗腺」から出る汗がもとになっており、尿素やアンモニアなどが含まれるためです。それが細菌によって分解された脂肪酸などの物質と混ざることで、強い体臭になります。
〇加齢臭
加齢とともに皮膚の潤いを保つ役割をもつ皮脂の中に、パルミトレイン酸という脂肪酸と、過酸化脂質という物質が増加。
この2つが結びついて分解・酸化されると「ノネナール」というにおい物質が発生し、これがにおいのもととなります。男性では40~60代、女性は更年期後の60代以降に強くなる傾向があります。
また加齢臭は、皮膚の表面だけでなく、毛穴から放出されることもあります。腸の機能が低下すると、老廃物としてにおい成分が多く生成されます。
通常は肝臓で無臭化されますが、肝臓の機能の低下により、血液と共に体内のにおい成分が全身を巡り、これが毛穴から出ると体臭となるのです。
〇疲労臭(アンモニア臭)
疲労臭(アンモニア臭)は、腸内細菌の乱れや肝臓の働きが弱まったりすると、アンモニアが過剰に発生して体外に排出されることで起こります。
加齢やストレス、疲労で肝臓の機能が低下すると、体内のアンモニアの処理が追い付かず、血液中のアンモニア濃度が上昇。皮膚からの放散量が増えてしまい、においとして感じられるのです。
■においの対策
ストレスや偏った生活の乱れなどの悪い習慣があると、体内から発生するにおいを強める原因となります。また、何らかの病気が原因で体臭や口臭が起こるケースもあります。
特に肉中心の食事やたんぱく質の過剰摂取、運動不足は、においのもとになる皮脂の分泌を促し、ストレスは過酸化脂質をつくる活性酸素を増加させます。そのため、ストレスの低減とともに、疲労に気を付け、腸内環境を整えることがにおい対策として重要です。
また、皮膚表面のにおいには汗と皮脂、雑菌が大きく関係しています。これらの過剰な分泌や増殖を抑えることはにおいの予防のために大切です。
朝、シャワーを浴びて皮脂を洗い流し、体臭、汗臭を防ぐ効果のある薬用石けんなどで一時的に雑菌の繁殖を防いで、皮膚を清潔に保つことがおすすめです。
汗がにおいを発生させるまでは約1時間とされています。それまでに濡れタオルや汗拭きシートなどで、汗の成分や雑菌、皮脂汚れを取り除きましょう。
調査概要
『気になるカラダのにおい意識調査』
調査地域:全国
調査期間:2025年3月
調査方法:インターネットでのアンケート調査
調査対象:20~49歳までの420名(男性210名、女性210名)
有効回答:420名
調査会社:株式会社クロス・マーケティング
関連情報
https://www.taisho.co.jp/
構成/Ara