
三菱UFJフィナンシャル・グループの新たな金融サービスブランド「エムット」が、2025年6月2日よりスタートした。「エムット」とは、インターネットバンキング「三菱UFJ銀行アプリ」を中心に、MUFGのリテール商品やサービスを組み込んだサービスブランドだ。
名前の由来は、MUFGのM、MINNA(みんな)のM、MONEYのMからで、あらゆる人のお金に関わることをまるっとサポートするという意図がある。「まずはここから金融サービスを始めてみて欲しい」という思いを込めて名付けられた。
この「エムット」のサービス内容や、先行するSMBCの「Olive」との違いについて説明する。
MUFGの新たな金融サービスブランド「エムット」。
「三菱UFJ銀行アプリ」を中心に展開される「エムット」
「エムット」のスタートに合わせて、1000万人が利用する「三菱UFJ銀行アプリ」は、MUFGの各種サービスにアクセスしやすく、使いやすい資産総合管理アプリに全面リニューアル。お金を「つかう」「ためる」「ふやす」「つなぐ」シーンをサポートする機能を備える。
「三菱UFJ銀行アプリ」は全面リニューアルを行なった。
具体的には、「つかう」「ためる」では、クレジットカードの「三菱UFJカード」、QR決済サービスの「COIN+(コインプラス)」(2025年夏 実装予定)、Visaプリペイドカードアプリの「バンドルカード」に加え、貯まったポイントをVisaのタッチ決済で使えるモバイル決済アプリ「グローバルポイント Wallet」を新規リリース。
「エムット」の「つかう」「ためる」サービス。
「ふやす」「つなぐ」では、ネット証券の「三菱UFJ eスマート証券」、全自動資産運用サービスの「ウェルスナビ」、相続サポートとして「そうぞくガイド」や三菱UFJ信託銀行の
相続サービスを用意する。
「エムット」の「ふやす」サービス。
「エムット」の「つなぐ」サービス。
「新ポイントアッププログラム」で日々の買い物がよりお得に
中でも注目は、「三菱UFJカード」のショッピング利用で貯まる「グローバルポイント」の「新ポイントアッププログラム」がスタートしたこと。対象店舗で利用すると還元率が5.5%から7%にアップ。さらに各種サービスの登録や利用等でスペシャルポイントが貯まり、ポイント還元率は最大20%になる。
対象カードは、「三菱UFJカード」「三菱UFJカード ゴールドプレステージ」「三菱UFJカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード」。
ポイントアップの対象店舗は新たに7ブランドが加わり、合計30ブランドになる(「三菱UFJカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード」のポイント優遇は一部店舗)。
●還元率7%の対象店舗
【コンビニ】セブン-イレブン、ローソン(ナチュラルローソン、ローソンストア100を含む) 【自販機】コカ・コーラ自販機(タッチ決済、QUICPay、Coke ON) 【飲食店】くら寿司、スシロー、ピザハットオンライン、松屋、松のや、マイカリー食堂、ロッテリア、ゼッテリア 【スーパー】アオキスーパー、オーケー、オオゼキ、サンリブ、三和、フードワン、スーパー魚長、生鮮げんき市場、生鮮乃木市場、近商ストア、ハーベス、東急ストア、東武ストア、ドミー、肉のハナマサ、ジャパンミート、ヤマナカ、フランテ、フランテロゼ
ポイントアップの対象店舗はコンビニ、飲食店、スーパーにも及ぶ。
そしてポイントアッププログラムでは、「三菱UFJカード」のサービスやMUFGグループ会社のサービス、特定のサービスを使うことで、最大20%のポイント還元が得られる。
新ポイントアッププログラムの内容。
特定のサービスとは、携帯電話料金、電気料金のほか、以下のサブスクサービスのことで、利用分をカード払いに登録することで1登録ごとに+1.0%になり、最大+5.0%アップする。
●特定のサービス
Appleのサービス、ABEMAプレミアム、コミックシーモア、Hulu(フールー)、日経電子版、本の要約サービスflier、Uber One、三井のカーシェアーズ、カーブス
具体的な優遇サービスや特典は次の表に記した。
ポイント決済アプリでポイントが使いやすくなる
貯まったポイントは、新たに登場した「グローバルポイント Wallet」にチャージすることで、Visaのタッチ決済で日々のショッピングに利用できる。
また「MUFGカードアプリ」も全面リニューアルし、ホーム画面にポイント還元率とポイント残高が表示されるようになり、獲得ポイントなどが確認しやすくなった。
「グローバルポイント Wallet」でポイントが使いやすくなった。
「エムット」の今後の展望とは
今後、「グローバルポイント」はグループ共通のポイント「エムットポイント」に変更になる。ポイントは「COIN+」に交換することもでき、残高を銀行口座に無料で移動できるようになる。
また、日常の利用、日々の決済、資産運用など、取引状況に応じた5段階のステージランク「ロイヤリティプログラム」がスタート。ランクごとにポイント還元率や金利、手数料などが優遇される。
5段階のランクを設けた「ロイヤリティプログラム」がスタート。
そして新しいコンセプトのデジタルバンクを開業。AI×データによるパーソナルな提案「MAP(Money Advisory Platform)」を実施し、相続における新たなデジタルプラットフォームもリリース予定。いずれも2026年度後半にサービスを開始する予定だ。KDDIが開発中の最新技術を用いた次世代リモート接客プラットフォームの活用も予定されている。
「エムット」の現在のサービスと今後の展開。
SMBCの「Olive」とはどう違う?
キャッシュレス化が進み、技術も進歩したことなどから、銀行、証券、クレカ、保険など、様々なサービスが1つのアプリでシームレスに繋がる総合金融サービスとして提供されるようになった。
メガバンクの先駆けが「Olive」。「エムット」はそれに2年程度遅れる形でサービスを開始した。「Olive」がクレカを中心においたサービスなのに対して、「エムット」は銀行が主体。その違いがランクサービスなどにも現れている。
6月16日に三井住友カードは、Visaの最高ランクの「Visa Infinite」を2026年春に提供を開始し、「Olive」の最上位ランクの「Olive Infinite」を新設することを発表した。最大11万円相当の継続特典やカード積立最大6%ポイント還元、異次元の多様な体験価値など、最高レベルのサービスを提供するという。
一方で「エムット」は取引状況に応じて5段階のステージランクを設定する「ロイヤリティプログラム」を、2026年度中にリリースする予定だ。詳細は発表されていないが、ランクごとに手数料、金利、ポイントなど、各種サービスが優遇される。
ポイント還元率では両者、最大20%還元と同じだが、最大7%還元のポイントアップ加盟店ブランドが「エムット」の方が多く、コンビニ、飲食店だけでなく、スーパーも含まれているところが異なる。日々の買い物でよりポイントを獲得しやすそうだ。
「国内ナンバーワン金融グループとして、全ての方々に分かりやすく、楽しく、生涯にわたってお任せいただけるような金融サービスを提供していく責務があると考えています。
日常にも人生にも寄り添うことで様々なニーズに柔軟に応えていきたい。そのために様々な金融機能を有するグループ間の繋がりをより一層加速させ、もっと繋がるMUFGを目指していきます」と、三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規氏は、5月27日に実施された「リテール戦略発表会」で語った。
「エムット」はオープンプラットフォームではあるが、コアの金融サービスはグループ企業のものを採用する。一方、「Olive」はソフトバンクやSBIグループなど、提携している企業やグループ企業を問わず、顧客にとってベストな選択をしていく。大きな違いはこの部分で、それぞれの戦略によってアプリで利用できるサービスの広がりに違いが出てくると思われる。
これら両者のサービスをまとめたものが次の表だ。
「エムット」の核となるサービスは2026年度中のリリースを予定する。約3400万顧客、個人預金約93兆円と、圧倒的な規模や顧客基盤を誇るMUFGが、来年以降、いかに「Olive」を巻き返せるのか、今後の両者の展開に注目だ。
(左より) 三菱UFJニコス 代表取締役社長 角田典彦氏、三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 半沢淳一氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 代表執行役社長 亀澤宏規氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO山本忠司氏。
取材・文/綿谷禎子