
健康的な食事は体重が減らなくても心臓を守る
健康的な食生活に改めたのに体重が減らないからといって、イライラする必要はないかもしれない。体重は変わらなくても、健康的な食生活により心臓の健康には良い影響を期待できることを示唆する研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に6月5日掲載された。
この研究は、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnat Yaskolka Meir氏らの研究によるもの。論文の筆頭著者である同氏は、「健康のために減量が欠かせないとわれわれは刷り込まれてきており、体重を減らせない人に負の烙印を貼ってしまいがちだ。しかし今回の研究は、食生活を改めることで、たとえ体重が減らなくても代謝が改善し将来の健康リスクを下げられることを示しており、これまでの捉え方を根本から変えるものだ」と述べている。
Meir氏らは、研究期間が18~24カ月に及ぶ3件の大規模な生活習慣介入研究のデータを統合して、食生活改善が体重や心臓の健康に影響を及ぼす検査値の変化を検討した。解析対象者は合計761人で、平均年齢は50.4歳、男性89%、介入前のBMIは30.1だった。研究参加者は、低脂肪食、低炭水化物食、地中海食などの食事スタイルにランダムに割り付けされていた。
介入前後での体重の変化は全体で-3.3kg(-3.5%)であり、-5%以上の体重減を達成した「減量成功群」が36%、体重が減らなかった(または増加した)「減量抵抗群」が28%、そして変化率-5~0%の群が36%だった。減量成功群は、心臓の健康に関する検査値も3群の中で最も大きく改善していた。しかし減量抵抗群であっても、内臓脂肪面積は有意に低下し(-7.15cm2、P<0.001)、HDL-C(善玉コレステロール)は有意に上昇(+1.16mg/dL、P=0.008)。また、脂肪細胞から分泌される食欲に関連するホルモンであるレプチンにも、有意な影響が認められた。
Meir氏は、「解析結果は介入による代謝の大きな変化を表しており、このような変化は心臓の健康に影響を及ぼし得る。つまり、体重が減らなくても、健康的な食生活には効果があることが示された」と述べている。
一方、この研究では、5%以上の減量達成に関連のあるDNAメチル化部位(遺伝子発現に関わる可能性のある部位)が12カ所特定された。この点について、論文の上席著者である同大学院のIris Shai氏は、「この発見は、同じ食生活を送っていても異なる反応を示す生物学的素因を持つ人がいる可能性を示している」と解説。そして、「減量に成功するか否かは、単に意志の力や自制心の問題ではなく生物学の問題と言え、われわれは今、その理解に近づきつつある」と付け加えている。(HealthDay News 2025年6月9日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/eurjpc/advance-article/doi/10.1093/eurjpc/zwaf308/8154771
Press Release
https://hsph.harvard.edu/news/adopting-a-healthy-diet-may-have-cardiometabolic-benefits-regardless-of-weight-loss/
構成/DIME編集部
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