
シャープは、ウォーターオーブン「ヘルシオ」の新製品2機種を発表した。新製品の最大の特徴は、白物家電では業界初となる対話型生成AI「クックトーク」の搭載だ。AIアシスタント「九十九しおり」が、献立の提案から調理手順の案内まで、料理に関する幅広い悩みを解決してくれる。
対話型生成AIが、ヘルシオの魅力を引き出す
今回発表された新たなヘルシオは、「AX-LSX3C」と「AX-RS1C」の2機種。ともに容量は30Lで、2段調理に対応する。両機種の目玉機能が、白物家電で業界初となる対話型生成AI「クックトーク」だ。従来機が搭載していた音声対話機能では、あらかじめ登録されたキーワードに一致しない場合の応答が不可能で、会話のバリエーションが大きく制限されていた。しかし今回生成AIを搭載したことで、ユーザーのどんな発言にも適切に応じることが可能になった。「筋トレにいいメニュー教えて」「スタミナがつく料理が食べたい」といった料理に関する要望はもちろん、「何か楽しい話をして!」とお願いすれば雑談の相手もしてくれる。
↑左がAX-LSX3Cのプレミアムブラック、右はAX-RS1Cのダークメタル。これらのほかに、白系のカラーもラインナップする
クックトークとの対話は、ヘルシオと連携したスマートフォンアプリを介して行う。アプリは音声対話にも対応しており、マイクボタンを押せば、15分間のハンズフリーモードで会話が可能。調理中で手が汚れていても、気にすることなくAIと話せる。この音声対話機能には、シャープがロボホンやエモパーの開発で培った技術が活かされているという。
↑クックトークとの音声対話中。筆者が「スタミナをつけられるような料理を教えて」と依頼したら、夏野菜を使った回鍋肉などが提案された
アプリ内でユーザーとの対話役を担うのは、AIアシスタントの「九十九しおり(つくもしおり)。九十九という苗字の由来は、愛着の湧いた道具や物に宿るという九十九神(つくもがみ)で、長く愛される存在になって欲しいという思いが込められている。また、「九十九=クック」という言葉遊びの意味もあるという。名前の「しお」の文字は、ヘルシオの「シオ」から取ったものだ。
↑左が九十九しおり。家庭的な雰囲気のキャラクターだ。「今日は暑いね」から始まる雑談に応対しているところ
その機能は、大きく分けて6つある。まずは献立の提案だ。冷蔵庫にある食材や、いまの気分を教えると、最適なメニューを提案してくれる。この提案は直前の会話の内容も加味して行われるので、同じようなメニューが繰り返されることもない。そして、調理手順の案内。料理の初心者にもわかりやすいように、何をどのように切ればいいのか、調味料の使い方など、細かく教えてくれる。
↑クックトークによる案内。材料の切り方から下ごしらえの手順まで、きめ細やかにガイドしてくれる
材料が用意できたらヘルシオに入れて調理するわけだが、その際の使い方もAIがアドバイス。どの番号を選択して、どのボタンを押して、と手順をひとつひとつ説明してくれるので、操作に迷うことがない。また、家族の人数に合わせて材料の分量を変換して教えてくれる機能も搭載。さらに、このAIは料理に関する知識を大量に学習しているため、ヘルシオに関係のないことであっても、調理についての相談に乗ってもらえる。先述したように、雑談も可能だ。
ヘルシオは、あぶる、揚げる、焼く、炒める、蒸す、茹でるなど、さまざまな調理法に対応しており、多彩な料理を作れる。だがその機能の多さゆえに、ヘルシオを存分に使いこなすのは難しかった。そこでクックトークの出番だ。AIは、ユーザーが知らなかったヘルシオの活用法も提案してくれる。クックトークの搭載は、ヘルシオの魅力を最大化するための試みであるといえる。
↑ヘルシオで作れる多彩な料理。クックトークによるアドバイスによって、色々なメニューに手軽に挑戦できるようになる
新製品の企画に携わったシャープの川尻百恵さんは、発表会のプレゼンテーションで、自身が体験したヘルシオとのエピソードを語った。
「私は子供のころ、母が作る茶碗蒸しが大好きでした。しかし自分で作ろうとすると材料の配分や火加減が難しく、家での手作りを諦めていました。しかし数年前に社内の研修を担当することになったある日、ヘルシオチームのメンバーから『茶碗蒸しはヘルシオだったらすごく簡単にできるし、とても美味しいよ』と言われ、実際に作ってみたら本当に簡単に、しかも美味しくできました。それ以降、私の得意料理になっています。ヘルシオの調理力に加えて、人からのアドバイスがあったからこそ生まれた成功体験だと考えています」
クックトークによるユーザーへのアドバイスも、川尻さんがしたような嬉しい体験を数多く生んでくれそうだ。
ヘルシオトレーが進化。少量調理から温め直しまで対応
新製品の進化点は、クックトークの搭載だけではない。進化ポイントのひとつが、付属の「ヘルシオトレー」の活用範囲の拡大だ。ヘルシオトレー専用メニューが増えたほか、新たに「ヘルシオあたため(おいしさ復元)」にも対応。少量の惣菜や冷凍食品を、過熱水蒸気の力でできたてのように仕上げられるようになった。
さらに、分量・加熱設定不要のレンジ自動調理「らくチン1品」が冷凍食材に対応した。この機能では、ベジ・煮物・中華・カレー・パスタの5ジャンルで、冷凍食材を活用したメニューが楽しめる。冷凍ブロッコリーのサラダ、冷凍里いものそぼろ煮、冷凍なすとひき肉のピリ辛煮、きのこカレー、冷凍なすとさんまのかば焼缶の和風パスタなど、ラインナップは豊富だ。冷凍食材を活用すれば包丁でカットする手間も省けるので、調理がより手軽になる。
↑らくチン1品では、材料の分量や加熱状況を自動検知するので、メニューを設定するだけで調理できる
また上位機種のAX-LSX3Cでは、調理終了後最大30分間、保温しながら食材の乾燥を防ぐ機能「ほかほかキープ」が進化。従来は「まかせて調理」の一部メニューのみ対応していたが、新たにヘルシオトレーを活用した「らくグリ!調理」でも利用可能になった。また、調理スタート後でも設定できるようになったため、家族の帰りが急に遅れた場合などでも、出来立ての状態をキープできる。
発表会で実用性の高さを実感
筆者が参加した新製品の発表会では、新製品で調理した唐揚げ・焼き野菜と、冷製茶碗蒸しが提供された。どの料理もみずみずしさが際立つ仕上がりであったのは、いかにもヘルシオ。特に焼き野菜には適度なシャキシャキ感があり、焼き野菜と生野菜のいいところを足したような印象だった。過熱水蒸気によるパワフルで繊細な調理力は、新製品でももちろん健在だ。
タッチアンドトライでは、クックトークでの音声会話も体験したが、声は正確に拾ってくれるし、応答も自然だった。料理の提案では、ユーザーの求めに対して複数のメニューを出してくれるので、選択の幅も広い。ボタンの操作手順を案内しても実際の操作を代行してくれるわけではないといった改善点は残っているように思うが、実用性は高いように感じられた。従来のヘルシオを存分に使いこなせず、勿体無さを感じていた方には、特におすすめしたい。なおシャープによると、無線LANに対応した従来機のヘルシオにも、クックトークの機能提供を予定しているとのことだ。
市場想定価格は、「AX-LSX3C」が21万3000円前後、「AX-RS1C」が16万3000円前後。発売日は6月19日となっている。
文/畑野壮太