
FCNTが2025年6月17日、arrowsシリーズの最上位モデルとして「arrows Alpha」と、フィーチャーフォンシリーズの最新モデル「らくらくホン F-41F(以下らくらくホン)」を発表した。執筆時点では、arrows Alphaはオープン市場(SIMフリー)とNTTドコモより8月下旬、らくらくホンはNTTドコモより8月中旬に発売される。
〝手が届くハイエンドスマホ〟が新たに加わる
FCNTは、2023年5月に民事再生申請を正式発表したことで、大きな話題を呼んだ。その後、同年9月にレノボが事業承継を発表し、同年10月よりFCNT合同会社として、新体制でのスタートを切っっている。一時は、arrowsやらくらくシリーズの展開がどうなるかと、肝を冷やしたファンもいるかもしれないが、新モデル2機種の発表により、フィーチャーフォン、シニア向けスマホ、ミドルレンジスマホといった形で、計7機種をラインアップすることになる。
今回発表されたarrows Alphaは、arrows内の新しい上位ブランドという位置づけで、〝手が届くハイエンドスマホ〟をコンセプトに開発されている。いわば、新体制発足後、高機能モデルに初チャレンジする端末となる。
一方で、デジタルデバイド解消のために、「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」を目指すらくらくホンは、FCNTがこれまで担ってきた、社会インフラとしての役割を果たすべく登場する、伝統ともいえる大切なデバイスだ。
高性能なハイエンドスマホと、シニアにも安心して使ってもらえるフィーチャーフォンと、製品としてはギャップの大きい2機種だが、FCNTの責任感や、メーカーとしての熱量を非常に強く感じるのが、(個人的には)なんともうれしい製品発表会だった。前段が長くなったが、新モデルそれぞれの詳細についても、紹介していこう。
〝手に届くハイエンド〟の「arrows Alpha」とは
先に触れたように、arrowsの上位ブランドとして新たに登場したarrows Alphaは、「手に届くハイエンド」をコンセプトに、高機能を10万円以下に収めることを目指して開発された。
正式な販売価格は確定していないものの、オープン市場向けモデルは、8万円台を想定しているとのこと。近年はシャープのAQUOS Rシリーズに代表されるように、10万円前後の〝ミッドハイ〟や〝準ハイエンド〟と呼ばれる市場が盛り上がっており、arrows Alphaも、この市場に乗り込む形となる。
ミッドハイ市場の盛り上がりは、物価高の高騰に加え、スマホの基本スペックが向上していることで、フラッグシップモデルではなくても、多くの人が満足できる性能を有している端末が増えているという背景がある。
また、正式に価格が8万円台となれば、Pixel aシリーズのような、ミッドレンジスマホとも肩を並べることになる。10万円以下の価格帯では、どうしても最高峰のスペックを搭載することが難しいため、各メーカーは、どの部分を突き詰め、どこでコストカットをするのかという選球眼で勝負をすることになる。
arrows Alphaは、自分自身の価値観を大切にする人、価格などの観点から一度ハイエンドモデルから離れてしまった人、ハイエンドに興味はあるけどなかなか踏み出せない人などに訴求していきたいとのこと。ミッドレンジモデルからのステップアップや、最新のハイエンドモデルだとオーバースペックだと感じている人が、最大のターゲットとなるだろう。
■本体幅にこだわった持ちやすいデザインとarrowsらしいタフネスボディ
arrows Alphaは、本体サイズが約156×72×8.8mm。特に幅72mmは、人間工学に基づいた、最も握りやすいサイズ感になっている。背面左右の絶妙なカーブや、包み込みやすい厚みによって、かなり手に持ちやすい印象を受けた。質量は約188gとなっているが、実際に手に取ると、持ちやすさから、スペック以上に軽く感じられた。
背面パネルには再生プラスチック、メインケースの内部フレーム、カメラフレームには再生アルミニウムが採用されており、サステナビリティにも配慮されているが、高級感のある重厚なデザインになっており、所有欲も満たしてくれる。本体カラーはホワイト、ブラックの2色のみとなっており、強いていえば、コンセプトとなるもう1色が欲しいと個人的には感じているが、FCNTによると、多くのユーザーは、ホワイトとブラックの2色から選ぶとのこと。arrows Alphaのファーストモデルとしては、愚直なラインアップともいえるだろう。
デザイン性に加え、arrowsらしい耐久性もしっかりと踏襲されている。防塵性能はIP6X、防水性能はIPX6/8/9に準拠しており、MIL規格の耐衝撃性も有する。発表会では、落下テストやハンドソープでの丸洗い、氷漬けにしても動作をする様子が紹介されており、arrowsの圧倒的な耐久性がアピールされている。
■文句なしのハイエンドディスプレイと2日間の電池持ちを誇る5000mAhバッテリー
ディスプレイは約6.4インチでの有機ELで、ピーク輝度3000ニトと、かなり明るい表示ができるのが特徴。解像度は2670×1200となる。
特徴的なのが1Hz~144Hzの可変式リフレッシュレートで、必要な時には滑らかな動きで描画され、画面が制止するようなタイミングでは、リフレッシュレートを下げることで、省電力につながる。10万円を切るスマホとしては、非常に高水準なディスプレイといえるだろう。
加えて、バッテリー容量は5000mAhと、本体サイズを鑑みると大容量にアンっている。通常使用の場合、2日間の電池持ちを実現しており、1日中屋外に出る日や、夜のうちに充電を忘れてしまった日でも、あまりバッテリー残量を気にしなくていいのがポイントだ。
また、同梱される90Wの充電器を使用すれば、10分で40%、35分で100%まで充電できる。このあたりの仕様には、レノボ、およびモトローラのフィロソフィーが色濃く感じられる。
FCNTは、レノボが持つグローバルのスケールやリソースを活用しながら、日本のユーザーが使いやすい製品を提供していきたいと話しているように、FCNTが日本で培ってきたノウハウと、レノボが持つ、グローバル市場で求められるリソースがうまく統合されて生まれたのが、arrows Alphaだと感じる。
■Dimensity 8350 EXTREME搭載でオンデバイスAI機能「arrows AI」に対応
搭載SoCはメディアテックのDimensity 8350 EXTREMEで、メモリは12GB、ストレージは512GBとなる。チップセットの能力や構成的には、近年のミッドハイクラスというイメージ。
瞬間的なパフォーマンスではなく、高いパフォーマンスを、どれだけ安定して持続できるかに注力したとのことで、超大型のベイパーチャンバーやグラファイトシートを内蔵する。負荷の大きいゲームアプリをテストプレイできたが、躓くことなく、スムーズな操作ができ、本体の発熱もほとんど気にならないレベルにとどまっていた。
比較的高いチップセットの処理性能を生かし、グーグルのGeminiやかこって検索といったAI機能にも対応する。期待感が強いのが独自AI機能の「arrows AI」で、自然言語でAIに問いかけることで、スマホの設定をAIが肩代わりしたり、対応ページを表示してくれる。
文字を大きく表示したい、マナーモードにしたいといった各種設定が、arrows AIから直接アクセスできるのに加え、「ライトを付けて」といった操作も、音声やテキストで指示ができる。2025年秋冬には、多数のチャットアプリにまたがる形で、通知のようやく機能も実装予定だ。
本体左側面には、AI機能に早急にアクセスができるアクションキーを備える。アクションキーは、シングルクリック、ダブルクリック、長押しの3動作に、それぞれAI機能や、アプリ起動のショートカットを割り当てられる。
AIはカメラにも活用されており、集合写真の撮影時には、笑顔の検出機能と、複数フレームの撮影を掛け合わせ、全員が目を開き、笑顔で写っている画像に生成することができる。もちろん、夜景モード、ポートレートモードといった、さまざまな撮影シーンの裏では、AIが働いている。
なお、アウトカメラは約5030万画素のメインカメラ、約4990万画素の超広角カメラの2眼構成、インカメラは約4990万画素となる。望遠カメラは非搭載だが、5000万画素に近いインカメラはかなり珍しい高水準だろう。
そのほか、生体認証は指紋認証と顔認証の両方に対応。外部メモリとして、最大2TBのmicroSDXCに対応している。arrows We2シリーズに搭載された、自律神経を測定する機能も踏襲された。