
乳児期の犬への曝露は幼少期のアトピーリスクを低下させる?
犬を飼っている家庭の乳児は、幼少期にアトピー性皮膚炎(AD)を発症するリスクが、犬を飼っていない家庭の児よりも低い傾向があるようだ。新たな研究で、乳児期に犬に曝露することで、ADの発症に関与する遺伝子の影響が軽減される可能性が示された。英エディンバラ大学皮膚科教授のSara Brown氏らによるこの研究結果は、「Allergy」に6月4日掲載された。
Brown氏は、「遺伝子の組み合わせが小児のAD発症リスクに影響を与えることは分かっていたし、過去の研究でも、犬を飼うことがAD発症の予防に有効な可能性が示されている。しかし、分子レベルでその仕組みを示したのはこの研究が初めてだ」と述べている。
ADは、皮膚のバリア機能が低下することで刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、それによって免疫反応が引き起こされ、湿疹、かゆみ、炎症などの症状が生じる疾患で、遺伝的要因と環境要因が関与するとされている。研究グループによると、遺伝的にADを発症しやすい人がいることは判明しているものの、遺伝子と環境がどのように相互作用してADリスクを増大させたり低下させたりしているのかは明確になっていないという。
Brown氏らは今回、ヨーロッパで実施された16件の研究データを分析し、ADに関連する既知の24種類の遺伝的バリアントと、母親の妊娠中および児の生後1年間における18種類の環境要因の相互作用を調べた。
その結果、犬の飼育を含む7つの環境要因と少なくとも1つのAD関連遺伝的バリアントとの間に14の相互関係が示唆された。また、25万4,532人を対象とした追加解析から、犬への曝露と第5染色体に位置する遺伝的バリアント「rs10214237」との間に統計学的に有意な相互作用が認められた(相互作用のオッズ比0.91、95%信頼区間0.83~0.99、P=0.025)。rs10214237は、免疫応答の調節に関与するインターロイキン(IL)-7受容体をコードする遺伝子の近傍に位置する。
次いで、実験室でのテストにより、rs10214237と犬アレルゲン曝露との相互作用がADの発症リスクにどのように影響するのかを検討した。その結果、犬への曝露はこの遺伝的バリアントの影響を変化させて皮膚の炎症を抑え、AD発症リスクを抑制している可能性が示唆された。
研究グループは、今回の研究で得られた結果を確認し、今後の研究で犬が人間の遺伝子に与える影響についての理解を深める必要があるとしている。Brown氏は、「われわれの研究は、臨床の現場で問われる『なぜうちの子はADなのか』『赤ちゃんを守るために何ができるのか』などの最も難しい質問に答えることを目的としている」と話す。同氏はさらに、「さらなる研究が必要だが、本研究結果は、アレルギー疾患の増加に介入し、将来の世代を守るチャンスがあることを意味する」と述べている。(HealthDay News 2025年6月5日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/all.16605?utm_campaign=publicity%7Cwly&utm_content=wrh_6_2_25&utm_medium=email&utm_source=muckrack&utm_term=all
https://www.ed.ac.uk/news/pet-dogs-could-combat-genetic-eczema-risk-in-children
構成/DIME編集部
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