
超高齢社会を背景に「老化」に関する研究の重要性が年々高まっている。
こうした中キリンホールディングスは、国立長寿医療研究センターとの共同研究により、「フレイル」と「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)活性」に関係性があることを世界で初めて確認したと発表した。
フレイル及びpDCとは?
フレイルとは、活動的な生活(健常)と要介護状態の間に位置する状態を指す。この段階では、身体の予備能力が低下しており、些細なきっかけで体力が大きく損なわれ、要介護状態に移行するリスクが高くなるとされている。また近年、フレイルはインフルエンザなどのウイルス感染症に罹りやすく重症化につながるなど、免疫との関連性に注目が集まっている。
一方のpDCは、細菌やウイルスが体内に入ってきたときに重要な働きをする司令塔役を担う免疫細胞。これが活性化することによって、NK細胞やT細胞、B細胞などさまざまな免疫細胞が活発に働きウイルス感染から防御する。
研究方法と研究結果
今回の共同研究では、免疫機能の維持に重要な役割を果たすpDCの働きに着目し、フレイルとpDC活性の関連の解明を目指して実施された。
はじめに、2023年9月に大規模コホート研究NCGG-SGに参加している65歳以上の高齢者141名を対象とした特定健診を実施。次に、国立長寿研がフレイル診断を実施し、キリンが血液中のpDC活性に関するデータを測定した上で、フレイルとpDC活性の関わりを共同で研究・解析した。pDC活性については、全被験者の中央値である2.78%を基準とし、2.78%以下の人をpDC活性が低値の人、2.78%より多い人をpDC活性が高値の人とした。
研究の結果、健常な高齢者と比べた時に、プレフレイルの人では、pDC活性が高値であるオッズ比が約半分(0.52)(p < 0.1)、フレイルの人では、pDC活性が高値であるオッズ比が約1/5(0.21)(p < 0.05)となった。
これにより、フレイルの人では、健常な高齢者に比べてpDC活性が低いことが、世界で初めてわかり、フレイルの人は免疫機能をケアすることが重要である可能性があると示唆された。
出典元:キリンホールディングス株式会社
構成/こじへい