
2025年6月13日、イスラエルによるイラン国内施設への攻撃が開始され、直ちにイランも報復攻撃を実施。両国は戦闘状態に入った。
両国の軍事力については報道を見ると、イランは国際的な経済制裁の影響で戦闘機の多くが旧型機と言われている。一方、イスラエルはステルス戦闘機「F35」を導入するなど、近代化を進めている。
核兵器に関してはイスラエルがすでに保有、イランは原発開発を名目にウラン濃縮などの研究を進めていると言われている。
そんな情勢の中、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から、両国の軍事衝突が市場に与える影響について分析したリポートが到着したので、概要をお伝えする。
イスラエルのイラン空爆を受けて原油、金、米ドル、産油国通貨が上昇、主要株価指数は下落
イスラエルは6月13日からイラン各地の核関連施設や軍事施設などへの大規模な空爆を開始し、イランもイスラエルへの報復として弾道ミサイルで同国領土を攻撃した。
15日にはイスラエルが攻撃対象をインフラ施設にも広げ、イランの燃料関連施設などを狙った空爆を実施、イランも多数の弾道ミサイルなどの発射を続けており、両国の交戦は激化している。
イスラエルによるイラン攻撃の報道を受け、6月13日の金融市場ではWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格が急騰し、主要株価指数は日米欧を中心に軒並み下落する動きがみられた。
原油高によるインフレ懸念の強まりから、米国や欧州では長期金利の上昇が目立ち、為替市場では米ドルやノルウェークローネなど産油国通貨が対主要通貨で買われたほか、金先物価格も上昇し、4月につけた過去最高値に迫った。
■イスラエルはイランが米国との協議においてウラン濃縮活動の完全放棄に応じないと判断した模様
イスラエルとイランは過去、良好な関係にありましたが、イランでは1979年のイラン革命により親米のパーレビ王政が倒され、宗教を厳格に解釈したイスラム教シーア派による宗教指導体制が樹立された(図表1)。
新たな体制のもと、イランはイスラエルを「聖地エルサレムを奪った敵」と位置付けて国交を断絶、現在も反イスラエルを国是に掲げている。
最近の動きをみると、イスラエルは2023年10月にパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスと衝突して以降、ハマスを支援するイランへの攻撃を強めてきた(図表2)。
2024年4月にはイスラエルとイランが史上初めて直接交戦し、同年10月に再び衝突した。イランは米国との核協議を2025年4月から続けてきたが、イスラエルはイランがウラン濃縮活動の完全放棄には応じないと判断。今回の攻撃に踏み切ったと推測される。
■両国とも長期化は望まないと思われ米国の仲裁で早期に停戦合意なら市場への影響は一時的
現時点でイスラエルとイランの交戦は続いている模様であり、また、米国とイランの核協議について、仲介役のオマーンは6月14日、15日に予定されていた6回目の協議は中止になったと発表した。
一方、トランプ米大統領は6月15日、自身のSNSで「イスラエルとイランの間にまもなく平和をもたらすだろう」と投稿。米国が停戦に向けて関与する可能性を示唆している。
米国の仲裁で両国が早期に停戦で合意すれば、市場への影響は一時的と思われる。イスラエルのネタニヤフ政権は盤石ではなく、主な親イラン勢力(レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど)は弱体化しており、イスラエルもイランも交戦の長期化は望まないと考えられる。
イランによるホルムズ海峡の封鎖はリスクだが、イランの原油収入にも影響が及ぶため、市場では現実化の恐れは小さいとの指摘も多くみられる。
構成/清水眞希