
内閣府の「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報」によれば、2024年10月-12月期の家計可処分所得は前期比で減少傾向だったが家計最終消費支出は増加しており、収支バランスの悪化が懸念されているという。総務省の「家計調査報告(家計収支編)2024年平均結果」でも実質消費支出が減少する中で名目消費支出が増加しており、物価上昇による購買力の低下が示されている。こういったデータをみても2025年に入って物価高が続き、多くの家庭が「収入は変わらないのに支出だけが増える」という状況になっているといえるだろう。LINEやZoomなどのオンラインツールを使用して、さまざまな地域から簡単に相談できる弁護士法人mamoriでは、日本全国在住の20代から50代の男女550名を対象に「”物価高による生活影響”に関する意識調査」を実施して、そこから”見えない家計崩壊”の実態を明らかにしたという。
回答者の8割以上が生活必需品の支出増を実感していた!
生活必需品の支出に関しての質問では、「明らかに増えている」(54.9%)と「やや増えている」(26.4%)を合わせると81.3%に達しており、8割以上が生活必需品の支出増を実感していると回答している。一方で「変わらない」は10.9%、「減った(節約している)」は2.9%という結果だった。食料品やエネルギー価格といった生活必需品の高騰が家計に直接影響を及ぼしており、生活の基礎となる支出の上昇は家計の柔軟性を奪って余裕のない消費行動へとつながっているという。「減った」と回答した層では、価格が下がったというよりも「節約を強いられている」ケースが含まれているも多そうなので、実質的な負担感は深刻といえるだろう。
物価高での収入が追いついていない状況が判明
収入が「変わっていない」と答えた人は56.0%で半数以上という結果になった。収入増加については、「わずかに増えた」(20.4%)を含めても増えたと感じた人は25.5%しかいなかった。「わずかに減った」(7.8%)、「大きく減少した」(10.7%)と減収を実感している層も少なくなく、物価上昇に収入増加が追いついていない現状がみえる。収入が「変わっていない」が多数を占めており、実質賃金の目減りを感じている人も多そうだが、この傾向は家計の将来的な見通しに不安を抱かせる要因なので、消費マインドの低下を招く懸念材料になりそうだ。
我慢する支出は「食費や外食」が4割以上でトップ
支出を減らすために我慢しているものという質問では、「食費や外食」が45.6%で最多だった。2位は「趣味・レジャー」の24.0%だった。「医療・健康関連」(3.5%)や「教育費・習い事」(2.2%)といった項目は、重要度の高さから我慢が抑えられている状況のようだ。「食」や「娯楽」などの日常的な楽しみが削られるケースが多く、医療や教育など“削りにくい”支出は維持されても日常の質を維持する余裕が失われる節約行動の積み重ねは、心理的ストレスを引き起こすことにもつながりそうなので、対処する策は考えておきたいところだ。
家計が厳しくなると貯金を切り崩す人が3割以上!
家計状況が厳しくなった時は、「補填していない(我慢してやりくり)」が48.9%ともっとも多い回答だった。2位は「貯金の取り崩し」で34.5%だった。クレジットカードの分割(6.0%)、リボ払い(2.5%)、カードローン(3.3%)など借金的手段も1割以上はいた。家計が厳しくなった時に多くの人が「我慢」で対応しているが、貯蓄を取り崩している層も多く、家計の防衛力が徐々に削られていることがみてとれるという。
約7割が家計に不安を感じていた!
家計管理についての不安に関する質問では、1位の「常に不安を感じている」(39.8%)と2位の「多少の不安がある」(29.3%)を合わせると7割近くの人が何らかの不安を抱えていると回答。「なんとかやりくりできている」(19.5%)や「特に気にしていない」(9.3%)といった人は、今回の調査では少数派だった。現在の状況は、収支のバランスが一時的な問題ではなく、慢性的なプレッシャーとして家計にのしかかっていることがうかがえる。「なんとかやりくりできている」と回答した人たちも不安定な綱渡りの状態の可能性もあり、突発的な支出や収入減で一気に生活が破綻するリスクについても考えたほうがよさそうだ。
物価上昇と実質賃金停滞を見据えた収支計画が重要
今回の調査では「明らかに生活費が増えた」と感じる人が5割を超える一方で、「収入が変わらない」や「むしろ減っている」という回答が6割を占めていた。こういった家計の“収支の不均衡”は、日常的な支出を削るだけでなく、医療や教育費にも影響を与える可能性もある。4人にひとりはクレジットカードや借入を利用しており、「貯金を取り崩す」または「借金で補填する」という状態にある人が少なくない実態もみえたという。7割近くの人が“家計管理に不安”を抱えているという結果は、慢性的な経済的ストレスが日常に根を張っている様子もうかがえたという。物価上昇と実質賃金の停滞が長期化している状況では、家計が静かに崩壊し始めていく懸念も大きい。家計の収支については、今後も再考していく必要性が高まるだろう。
■「物価高による生活影響に関する意識調査」概要
調査期間:2025年5月19日
調査機関:ウェブアンケート(設問選択・記述式)
調査対象:日本全国在住の20代~50代の男女
調査人数:550人
構成/KUMU