
昨今、コミュニケーションから資産管理まで、あらゆる生活場面でスマホが中心となった社会では、スマホの持ち主が亡くなった後に残される「デジタル遺産」が新たな問題として深刻化しつつある。
物理的な遺品とは異なり、目に見えずかつ、アクセスも困難なデジタルデータは、遺族を大きな混乱に陥れる可能性があるためだ。
どのような対策をしておくのが良いのだろうか。もしもの時に、家族が慌てないための手段を本記事でまとめた。
生前整理市場規模としては、300億円台に近付く
出典:矢野経済研究所
2025年5月に矢野経済研究所が発表した調査報告では、人々が”人生の最期に関わる様々なビジネスやサービスがそれぞれ終活の一環として認識”してきており、市場規模は右肩上がりとなっている。
デジタル遺産の種類
従来の預貯金や不動産は、その資産の証明として何かしら目に見える物が、アナログ遺産として残る。一方、デジタル遺産は、目に見える物が残りにくい。
本人が情報を開示しない限り、家族であっても価値どころか存在すら把握することが難しい。サブスクの解約をし忘れて、故人の死後もクレジットカードへ料金が請求され続けて、負債として残り続けるといった経済的損失も起こり得る。
また、情報を把握していたとしても、IDやパスワードがわからないと正当な被相続人であっても故人の情報に触れることが難しいのが現状である。
さらに、故人のアカウントが放置されるリスクの深刻度も高い。SNSアカウントが乗っ取られ、なりすましによる不適切な投稿や友人・知人への詐欺行為に悪用される可能性もある。
また、メールアカウントが不正アクセスされ、個人情報が大量に流出する危険性もある。
下表に主要なサービスごとの故人のアカウントやデータの扱い方を整理したが、ログインに必要なIDとパスワードを教えてもらえることはない・・・。秘密にしておくのか、万が一の時は家族などに開示するのかは、きちんと整理をつけておく必要がある。
主要なサービス別の故人アカウントの扱い方
デジタル遺産のうち相続財産となるもの・ならないものの違い
大前提として、デジタル遺産は相続の対象になるのだろうか。
ネット銀行の預金やネット証券の株や投信託残高、仮想通貨などは、金銭的価値を持つため、原則として相続財産となる。一方、SNSアカウントやメールアカウントそのものは、本人だけが行使できる一身専属的な権利と解釈され、相続の対象とならない場合が多い。ただし、アカウント内にある写真や動画、メッセージなどのデータは、著作権や肖像権が発生し、相続の対象となりうる。
これらは、各オンラインサービスの利用規約により扱い方が変わる。ユーザーの死亡時のアカウントの取り扱いや、データの相続に関する規定が定められていて、例えば「会員資格は一身専属とし、相続できない」と明記されていれば、アカウントの引き継ぎは原則不可だ。
実際にデジタル遺産の相続が発生する場合は、弁護士や司法書士に相談したほうが、トラブルが生じにくい。