
すでにこの@DIMEでは6代目となる新型フォレスターの概要についての記事を公開しているが、ここでは新型スバル・フォレスターPremium S:HEV EXの、東京~浜名湖間往復約650kmを走破した公道試乗記をお届けしたい。あえて片道300km以上のロングドライブを試みたのは、新型フォレスターのストロングハイブリッドの燃費性能と、燃料タンクを48Lから63Lに増やしたことで1000km以上の航続距離が期待できる”足の長さ”を確認したかったからだ。
一目で新型と分かる存在感
スバルの正統派SUV、フォレスターはその開発でデザインを重視。実際、一目で新型と分かる存在感、スタイリッシュさがあり、インテリアもまた高まった質感、先進性、充実した装備満載の新型らしさがある。
具体的には、ボンネットは堂々たる厚みを持たせ、ヘッドライトをすっきり内側に収め、クリーンな水平基調のショルダーライン、世界的トレンドの横一直線のリヤコンビランプ、下半身の力強さを演出するサイドプロテクションのあしらい、フォレスターとして初のブラックルーフとなる2トーンボディの新採用など、どこから眺めても「カッコいい」と思わずにいられない。
しかしながら、クルマがどんどん大きくなる中で、先代比で全長と全幅のみ15mmの拡大にとどまるあたりは、スバルの良心を感じずにいられない。つまり、日本の路上、駐車スペースでもジャストなサイズを保っているというわけだ(全長4655×全幅1830×全高1730mm。ホイールベース2670mm)。
もちろん、基本部分はスバル自慢のSGPと呼ばれる最新のグローバプラットフォーム+インナーフレーム構造で、駆動方式は全車シンメトリカルAWD(スバル初の低負荷時にFF駆動になる制御あり)。雪道や悪路での脱出性能を飛躍的に高めるXモードも採用している。
インテリアに目を向ければ、ボンネット裏とワイパーが視界に入らないすっきりとした斜め前方を含むクリーンな視界に加え、11・6インチの縦型大型センターインフォメーションディスプレイ+インフォテイメントシステム、ナビゲーション機能が新鮮だ。シートはメーカーオプションとしてブラウン/ブラックの本革シート(ナッパレザー/ウルトラスエード 運転席・助手席シートベンチレーション付き)も用意されている。ちょっと気になったのは、新型フォレスターからETC車載器がアームレストボックスに移されたこと。カードの出し入れはしやすいものの、ボックスの容量が減ってしまうのが惜しまれる…。
ちなみに後席居住空間もゆったり。身長172cmの筆者のドライビングポジション基準の実測で、頭上に130mm(サンルーフ付き)はともかく、膝周り空間は265mm!!もあるのだから足元広々。後席エアコン吹き出し口はもちろん、シートヒーターは前後席ともに完備しているため、1年中、快適に過ごせる室内空間となっている。
ラゲッジルームの使い勝手、アレンジ性も抜群と言っていい。すべて実測で開口部地上高730mm、開口部段差15mm(ないに等しい)、最大奥行き925mm、幅1095~1205mm、最低天井高810mm。
また、後席をフラットに倒した時の奥行きは1655mm。しかし、フォレスター初のアクセサリーとなる簡単に脱着できる「リヤシートバックエクステンション」を用いれば、フロア奥行きは1880mmに達し、車中泊も容易な室内空間にアレンジできるのである。
グレードは最上級のPremium、アウトドアテイスト満載のX-Break、そしてSPORTが揃っているが、新型フォレスター最大のトピックは、パワートレーンにあると言っても過言ではない。PremiumとX-Breakには、クロストレックにいち早く搭載されたスバル最新の電動パワートレーン、水平対向2・5L直噴エンジン+2モーターのS:HEV=ストロングハイブリッド(e-BOXER)を。SPORTには水平対向1・8L直噴ターボ”DIT”を搭載。ストロングハイブリッド=S:HEVモデルのWLTCモード燃費はなんと、スバルの正統派SUV史上最上の18.4~18.8km/Lを達成している。
Premium、X-Break、SPORTにはEXグレードも用意。つまり、高度運転支援システムのアイサイトX搭載車となる。アイサイト、アイサイトツーリングアシストの機能とともに、渋滞時ハンズオフアシスト、渋滞時発進アシスト、アクティブレーンチェンジアシスト、カーブ前速度制御、料金所前速度制御まで加わるのだから最強である。
十分すぎる加速性能、車内の静かさも一級品
さて、新型スバル・フォレスターPremium S:HEV EXで走り出せば、出足はEV走行。一般道で駆動バッテリーに余裕があれば、粘り強いEV走行を行ってくれる。とにかく正統派SUVながら、素晴らしく上質かつスムーズに、静かに走ってくれるのだ。エンジン160ps、21.3kg-m+モーター119.6ps、27.5kg-mによる加速性能そのものも十二分、いや、ジェントルにパワフルと言っていいレベルにあり、アクセル操作に対する反応もじつにリニア。
デュアルピニオンのパワーステアリングのスムーズで気持ちのいい操舵感もあって、だから市街地の低速走行でも実に走りやすく、コントローラブルでもあるのだ(最小回転半径は先代同様の5.4mと小回りも効く)。もちろん、電子パーキングブレーキ&オートブレーキホールド機能付きである。
Premiumグレードはフォレスター初の19インチオールシーズンタイヤを履いているのだが、乗り心地は一般道、高速走行を問わず、硬質ながらフラットで、段差を乗り越えたときの収束性にも優れ、終始、快適そのものだ(他グレードの18インチタイヤ装着車のほうが乗り心地はややマイルドになるが)。高速走行での渋滞追従型ACCの作動のスムーズさ(加速、減速ともに)、首都高の渋滞で経験したハンズオフドライブの機能にも満足でき、アイサイト、アイサイトツーリングアシスト、アイサイトXの絶え間ない進化、熟成ぶりを実感できたのである。
浜名湖周辺では山道の走行も経験したのだが、ステアリング操作の正確性、カーブでの姿勢変化の少なさ、タイヤの接地感の確かさ、ライントレース性の良さもあって、全高1730mm、最低地上高220mmのSUVとは思えない安定感、安心感を見せつけてくれた。山道にはかなり狭い道幅のシチュエーションもあったのだが、全方向の視界の良さ、1830mmの車幅、最小回転半径5.4mの小回り性の良さもあり、スイスイと走り抜けることができたのである。
新型フォレスターは車内の静かさも一級だ。車体の遮音、吸音が徹底されていて、とくに高速走行では水平対向2.5Lエンジンのノイズはもちろん、ロードノイズまでしっかりと遮断されている(路面による)。先代フォレスターの走行性能は今でも文句なしのレベルにあるものの、とくに車内の静粛性については、新型が圧倒していると断言できる(新旧型比較済み)。今回、約650kmを走破した浜名湖往復の運転で、運転に関わるストレスがフリーだったのは、シンメトリカルAWDによる安定感、乗り心地の良さ、アイサイトの先進運転支援機能だけでなく、車内の静かさが大きくかかわっていたと思えたのも本当だ。
浜名湖湖畔のキャンプ場を訪れた際には、オプションのAC100V/1500Wコンセントでお湯を沸かし、コーヒーを淹れ、純正アクセサリーのリヤシートバックエクステンションやウインドー全周をふさぐウインドウシェードを装着し、折り畳み式マットレスを敷いて車中泊アレンジも体験。アウトドアではもちろん、災害時のシェルターとしての高機能も実体験できたのである。
つまり、新型フォレスターはデザイン、オンオフを問わない走行性能、快適性、静粛性、シートアレンジ性、装備の充実度に加え、車中泊を含むオールラウンダーな高い完成度を誇る正統派SUVと言える1台だと結論づけられる。ちなみに、今回の試乗では、外気温31度に達した夏日(浜名湖周辺)だったのだが、本革シートの備わるシートベンチレーション機能(パンチングレザーシートによる)によって、背中も腰回りも涼しく、快適そのものだった。
最後に、東京~浜名湖を往復した実燃費を紹介すると、最高気温31度(浜名湖)、エアコン23度オート設定フル作動、新東名120km/h走行、大人2名+犬+2泊3日分の大荷物満載、一部山道走行で約650kmを走破した結果、WLTCモード燃費18.4km/Lの約82%となる15.0km/Lを記録(区間最高平均燃費16.1km/L)。ガソリン満タン時の航続距離は、”今回の走行”を踏まえたうえで1120kmを示していた!! 水平対向エンジン+AWDの正統派(本格派)SUVとして文句なし、さすがストロングハイブリッド搭載の成果と言っていいだろう。スバルのSUVは走りや走破性、アイサイトによる安全性は認めても、燃費がちょっと・・・と二の足を踏んでいた人も、これなら全方位で納得できるに違いない。ストロングハイブリッドのS:HEVモデルの場合、すでに人気沸騰で納期に時間がかかりそうだが、待つだけの価値はあるはずだ。
なお、Premium S:HEV EXの車両本体価格は、アイサイトX、ナビゲーション、電動サンルーフなどを標準装備して404.8万円(本革シートなどのオプションを除く)と、内容からすればかなりお買い得という印象を持てる。
文/青山尚暉
写真/雪岡直樹