
オンラインカジノ。これは日本に限らず、世界各国で問題視されている。
たとえばインドネシアでは、オンカジに手を出した人だけでなくSNSでオンカジを宣伝した人が続々立件され、しかも実刑判決が出されている。そのあたり、インドネシアはやはり日本よりも遥かに強権的な国である。オンカジと何かしらの関わりが判明した預金口座も、OJK(インドネシア金融サービス庁)の指示で容赦なく凍結されている模様だ。
では、日本はどうか。実はここ最近、我が国の金融機関も「オンカジ利用阻止」に向けて大きく舵を切った。日本では違法になる賭博サイトへの入金に対して、厳しい態度を見せるようになったのだ。
金融庁が金融事業者へ「要請」を出す
先月のある日のこと。筆者は三菱UFJ銀行のインターネットバンキングを利用していた際、こんな注意事項を見つけた。
「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です」
日本では今、「有名人のオンカジ利用」が波紋を広げている。
お笑い芸人、スポーツ選手、そしてこの記事を書いている最中、テレビ局のアナウンサーが過去にオンカジをプレイしていたことが発覚し、活動を自粛するに至った。ここで注目すべきは「過去にオンカジをプレイしていた」という点である。「している」という現在進行形ではない。
つまり、預金口座からオンカジに入金していた記録は消すことはできず、それを追跡すれば最後のプレイから数年経っていたとしてもバレてしまうのだ。
オンカジのサーバー自体はマルタ島やイギリス領バミューダ、オランダ領キュラソーといったところにあるため、それを日本の捜査機関が取り締まることはできない。しかし、日本のプレイヤーとオンカジをつなぐ決済代行業者を取り締まることは可能だ。そこから誰がいくら、どの口座から入金した……という情報が捜査機関に明らかになってしまう。
こう書くと、まるで決済代行業者そのものが違法な業種と誤解されるかもしれない。しかし、決済代行業者は金融庁に事業許可を届け出れば日本国内でのビジネスを展開することができる。もちろん、オンカジへの入金を行っている業者はそれが発覚した時点で事業許可を取り消されてしまうだろう。
5月15日、金融庁は金融事業分野の各協会に対して「オンラインカジノに係る賭博事犯防止について(要請)」という文書を配信した。
オンラインカジノについては、海外で合法的に運営されている場合でも、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪となり、賭博罪等で検挙されるおそれがあります。
つきましては、傘下会員に対して、
・日本国内でオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪であることについて利用者へ注意喚起すること
・オンラインカジノにおける賭博等の犯罪行為を含む法令違反行為や公序良俗に反する行為のための決済等のサービス利用を禁止している旨を利用規約等で明らかにすること
・利用者が国内外のオンラインカジノで決済を行おうとしていることを把握した場合に当該決済を停止すること
など、オンラインカジノに係る賭博事犯の発生を防止するための取組みを実施いただくよう周知方宜しくお願いいたします。
この要請が、我々一般人の目にも見える形で効果が表れた。メガバンク、地銀、信金問わず、各金融機関が「オンラインカジノの利用に対する注意喚起」を盛んに行うようになったのだ。
各行の注意喚起
もっとも、この注意喚起はある意味で「金融機関の総意」だったようで、金融庁の発表の前にオンカジに対する注意喚起を公開している銀行も存在する。
まずは、みずほ銀行の公式サイトを見ていこう。
オンライン上でギャンブルをする「オンラインカジノ」は、海外で合法的に運営されているオンラインカジノサイトであっても、日本国内からアクセスして利用することは「賭博罪」などの犯罪となりますので絶対に利用しないでください。
また、スロットやカードゲームだけでなくパズルゲームやスポーツベッティング等、その名称や内容にかかわらず、オンライン上で行われるギャンブルは「賭博罪」などの犯罪となります。
次に、PayPay銀行の公式サイト。
Web上でスロット、ルーレット、バカラなどの賭博行為ができるオンラインカジノ(ネットカジノ)は、海外で合法的に運営されているサイトであっても、日本国内から利用した場合は日本の法律が適用され、犯罪となります。
実際に利用者が賭博罪で検挙された事例がありますので、絶対に利用しないでください。
最後は、静岡県の地方銀行静岡銀行の公式サイト。
オンラインカジノは、海外で合法的に運営されているものであっても、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪です。
バカラ、スロット、スポーツベッティング等、その名称や内容にかかわらず、オンライン上で行われる賭博は犯罪です。
「有料版」はもちろん、「無料版」や「無料ボーナス(ポイント)」であっても、オンラインカジノの利用は絶対に行わないでください。
なお、静岡銀行の口座でオンラインカジノの疑いがある取引が確認された場合は、預金共通規定に基づき、静岡銀行での取引を制限させていただきます。
これらを見比べてみると、静岡銀行の注意喚起は実際に金を賭ける有料版のみならず無料版にも及んでいることがはっきり視覚化され、非常に面白い。確かにその通りで、無料版であっても有料版に巧みに誘導されてしまう……というのがオンカジである。
アフィブログに対抗する
このような注意喚起を金融機関が行っている背景を、さらに見ていこう。
たとえばGoogleで「オンラインカジノ UFJ銀行」と検索してみると、ヒットするのはどのようなサイトだろうか。上述のオンカジの危険性を呼びかける三菱UFJ銀行の公式サイトがトップに来るのは当然だが、少し下を見ると「三菱UFJ銀行から入金できるオンラインカジノ一覧」というようなサイトのページが出てくる。これらは明確なアフィリエイトブログで、オンカジへの集客を目的にしていることは間違いないだろう。
が、いずれにせよ閲覧者に大きな誤解を与えている内容であることは変わりない。要は、そのようなブログに対抗する手段として各金融機関は注意喚起を配信するようになったのだ。「スロットやカードゲームだけでなくパズルゲームやスポーツベッティング等、その名称や内容にかかわらず」と念を押すように書いているのは、「アフィブログに何と書いてあろうと、当行の口座をオンカジへの入金に使うことはできませんよ」という意味に他ならない。
「今まで」より「今から」を重視か
さて、この記事を読みながらこのようなことを考えている読者もおられるのではないだろうか?
「自分は何年か前に少しだけオンカジをやっていた。それが銀行にバレてしまい、今後預金口座を凍結される可能性はあるのだろうか?」
この問いに対して明確な答えは出せないが、上述の金融庁から各金融機関への要請を読んでみると、これが「今まで」より「今から」を重視している書き方であることが分かる。
・日本国内でオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪であることについて利用者へ注意喚起すること
・オンラインカジノにおける賭博等の犯罪行為を含む法令違反行為や公序良俗に反する行為のための決済等のサービス利用を禁止している旨を利用規約等で明らかにすること
・利用者が国内外のオンラインカジノで決済を行おうとしていることを把握した場合に当該決済を停止すること
「過去の出入金記録を調査して、オンカジにつながる取引があれば口座を凍結すること」とは一切書かれていない。現実問題、顧客一人一人の過去の取引を改めて精査するのは簡単ではないだろう。
が、それは「バレない・バレていない」ということとは全く意味が異なる。また、各金融機関は既に姿勢を切り替え、「今後の過ちに対して温情はない」といった態度を見せている。アフィブログにどのようなことが書かれていようと、オンカジは日本では違法行為であり、預金口座を危機に追い込む「剥き出しの刃」なのだ。
【参考】
オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です-三菱UFJ銀行
オンラインカジノに係る賭博事犯防止について-金融庁
オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です-みずほ銀行
オンラインカジノの利用は犯罪です-PayPay銀行
オンラインカジノの利用は犯罪です!-静岡銀行
文/澤田真一
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