
月額利用から共同所有までライフステージに合わせて選べるシェア別荘サービス SANU 2nd Home。「自然の中にもう一つの家を持つ」をコンセプトに展開するこのサービスに、法人向けがあるのはご存知だろうか?
「SANU 2nd Home for Business」は、山梨、長野、栃木、千葉といった都内近郊を中心に、淡路島や奄美大島など 全国31拠点(*2025年4月時点) にある施設を、年30泊から従業員の保養所として利用できるサービス。個人の会員と同様に、自然の中にあるオリジナルキャビンで、利用者のウエルビーイングが高まる滞在を体験できる。
法人が契約する年間泊数(30泊、60泊、90泊など)の範囲で従業員が利用でき、利用者は1室1滞在あたり3300円の清掃費と、週末料金やペット同伴可能、サウナ付きといったオプション料金を負担することで滞在できるというシステム。
現在、240社以上が福利厚生として導入しており、そのうち宿泊経験のあるビジネスメンバーの85%以上が、会社の福利厚生としてSANU 2 nd Homeを利用できることに対して「魅力的」と回答しているという。社員のウェルビーイングの向上に寄与するこの取り組みについて、SANU CEOの福島弦氏に話を伺った。
都市と自然をブレンドする、新時代の働き方。癒しとひらめきが共存する場所、それがSANUの魅力。
――福利厚生サービスをはじめたきっかけは?
福島:SANU 2nd Homeは個人向けのサブスクサービスとしてコロナ禍にはじめたもので、実は当初から法人向けサービスを考えていたわけではありません。きっかけはとてもシンプルで、個人として最初に会員になっていただいた経営者の方々から『このサービスを自分だけでなく社員にも使ってもらいたい』という声が多く聞かれたことです。
――法人向けサービスの特徴、魅力は?
福島:大きく3つあると思っています。1つは、自然という相棒と一緒に過ごせるということ。自然に触れることによる心身の健康への寄与については科学的にも認められていますが、経営陣が自然に触れる大切さを体感として持っていらっしゃる企業にご利用いただいています。都心に暮らす社員が24時間自然の中で家族と過ごし、リラックスして帰ってくる姿を目の当たりにできるのは、利用する社員にとっても企業にとっても大きなメリットです。
もう1つは、滞在先で仕事ができること。それはリモートができる、ワーケーションができるということとも少し違って、自然の中を散歩しながらニューアイディアを考えるといったクリエイティビティを育てる時間を提供できる点にあると思います。ワークとライフをきっぱり分けるのではなく、ブレンドするような時間をもてるのが特徴です。
そして3つ目は、社員同士のコミュニケーションツールとしても利用できる点。社員同士のチームビルディングや社内研修のように使っていただくケースもあります。キャビンにはキッチンやバーベキューができるスペースがあるので、みんなで食事をつくったり、焚き火を囲みながら話をしたりして、就寝時はプライベートが保たれるキャビンに帰るといった使い方が可能です。社長、課長といった肩書きを取っ払って一緒に作業する交流は、レストランなどですべてのおもてなしが揃った会合などとはまた一味違ったものになると思います。
「心が満たされる体験が、仕事を変える」──従業員とその家族に届く、ウェルビーイングの本質。
――福島さんおすすめの、キャビンでの過ごし方を教えてください。
福島:経営陣におすすめなのは、Think week(1週間ほどひとりでこもり、外部との連絡を絶ってひたすら本を読む習慣のこと)ですね。で、ビルゲイツが実践していたことで知られますが、日常から物理的な距離をとって1人で自然の中にいることによって、ぐっと思考が深まります。
実際、SANU 2nd Homeのアイディアが生まれたのも、僕が山小屋に泊まってアイソレーションされて自然の中にいるときでした。車移動のときにアイディアが出るという方もいらっしゃいますが、どちらにしても、1つの場所に通勤して同じ業務をしながらプロセスを回しているだけでは出てこない考えもあると思います。
――どんな企業が利用していますか?
福島:2025年4月現在で、約240社に導入いただいています。従業員が100名前後の企業のボリュームが大きいところですが、1000名を超える大手企業にもご利用いただいています。
「保養所などの宿泊系福利厚生は、若年層の利用が低い」という課題について相談が寄せられていましたが、SANU 2nd Home for Businessでは20代から60代まで幅広く利用されており、有給利用推進にも貢献しています。
導入後の利用率は、企業の規模や業種によって差があるわけではなく、経営者や導入を決める立場の方がサービスをご理解いただいているかが大きく関わっているように思います。大きなレストランチェーンでは、誰よりも代表がいちばん多く利用してくださっていて「これ以上使うと社員に申し訳ない」と、個人で別荘の共同オーナーサービスをご購入いただいた例もありました(笑)。
――利用している企業からのフィードバッグにはどういうものがありますか?
福島:「サービスを利用した従業員から『最高でした!』とか『ありがとうございます』と言われる」と、経営者の方から話を聞きます。「日報にまで書かれていた」という声を聞くと、本当に嬉しいですね。
それから「従業員の家族からも『よかった』と言ってもらった」という声も多くあります。利用した方の喜びをつくり、心が充実した状態をつくることは、結果的に企業のアウトプットや生産性の向上につながります。従業員だけでなくその家族を含めて心身ともに健康な状況をつくれるか。それは、これからのウェルビーイング経営において、非常に重要な観点になるかもしれません。
また、これはフィードバックではありませんが、非常に嬉しかったことがあります。とある設備系のセンサーをつくる企業がサービスを導入いただけることになり、その経営者と会食したときに、こちらが感動するくらいの言葉をいただきました。
その方は、「うちはお客様に直接会って感謝をいわれる仕事ではないから、頑張っている従業員に対してどう『ありがとう』を伝えるか考えていた」と言います。もちろん金銭も重要ですが、それ以外の伝え方をずっと探していて、SANU 2nd Homeのサービスを知って「ついに出会ったと思いました」と言ってくださったんです。「ありがとう」を伝える手段として選んでいただいたと聞いて、非常に胸を打たれました。
後編では、経営者、従業員そしてその家族、双方のウェルビーイングを向上し、このサービスを福利厚生の新しい当たり前にするための今後の目標について伺う。
福島弦
SANU代表。北海道出身。McKinsey&Companyで日本、アジア、北米、中東にてグローバル企業の戦略立案、政府関連プロジェクト、とくにクリーンエネルギー事業に従事。プロラグビーチーム「Sunwolves」創業メンバーを経て、ラグビーワールドカップ2019日本大会の運営に参画。2019年、SANUを本間貴裕とともに創業。2021年に会員向けのセカンドホームサービスの事業をローンチ。
撮影/田中麻衣(小学館) 取材・文/山本章子