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スパコンランキングTOP500の7割以上が採用するNVIDIAの圧倒的な強さの秘密

2025.06.16

ドイツ・ハンブルクで開催されたISC 2025(期間:2025年6月10日~13日)で発表となった最新のTOP500スーパーコンピューターランキングでは、77%のシステムがNVIDIAを搭載しており、NVIDIAが引き続きスーパーコンピューティング分野をリードしていることが示された。

今回のトップ100のうち83システムがアクセラレーテッドコンピューティングを採用しており、CPUのみのシステムは17にとどまっている。

さらに、エネルギー効率ランキングGreen500の上位2システムはNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipを搭載、上位10システム中9システムがNVIDIAによって高速化されていることも判明した。

そんな同社から、最新スーパーコンピューターのさらなる高速化に関するブログが公開されたので、概要をお伝えする。

ハイパフォーマンス コンピューティングはブレークスルーを生み出すAIシステムの基盤

現代のハイパフォーマンス コンピューティング (HPC) は、単に高速計算を可能にしているだけではない。科学的なブレークスルーを生み出す AIシステムの基盤にもなっているのだ。

HPC は幾度となく進化を遂げてきたが、そのどれもがテクノロジの独創的な再利用を契機としている。例えば、初期のスーパーコンピューターは市販のコンポーネントを使用していた。その後、研究者たちはパーソナル コンピューターから強力なクラスターを構築して、ゲーミング グラフィックス カードを科学研究に採用することさえあった。

今日の HPCシステムは、その多くが NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティングを搭載しており、スピードを重視して設計されている。ISC 2025 で発表された、世界で最もパワフルなスーパーコンピューターの最新のTOP500リスト(https://top500.org/)は、その重要性を改めて明示している。リストに掲載されたシステムの77%は NVIDIA 搭載のものだ。

同時に、Tensorコアなどの革新的な機能により、行列乗算などの一般的な演算の計算が高速化され、混合精度 (複数の浮動小数点精度フォーマットを組み合わせる手法) などの手法の使用が増えることで、パフォーマンスとエネルギー効率が向上。気候科学や医療などの分野で飛躍的な進歩が促進されている。

■TOP500のリーダーにNVIDIAが搭載

NVIDIAはスーパーコンピューティングの分野をリードし続けており、最新のTOP500リストに含まれる381のシステムに搭載されている。これには、トップ10に新たにランクイン、初登場4位となったJülich Supercomputing CentreのJUPITERスーパーコンピューターも含まれる。

TOP500のトップ 100システムのうち、83システムがアクセラレーテッド コンピューティングを採用しており、CPUのみを使用するシステムはわずか17システムだった。

さらに、世界で最もエネルギー効率の高いFP64 スーパーコンピューターの最新 Green500リスト(https://top500.org/lists/green500/)の上位2システムは、NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipを搭載しており、上位10システムのうち 9 システムは NVIDIAによって高速化されている。

画像はイメージです

科学のためのTensorコア

AIの性能は、浮動小数点演算の演算量を増やすことだけでは向上しない。それゆえTensorコアの活用など、ハードウェアとソフトウェアの融合がますます重要になっている。

Tensorコアは、AIとディープラーニングの基盤となる計算である行列演算を高速化するために設計された、NVIDIA GPU に搭載された高度なコンポーネントだ。複雑な計算をより効率的に処理することで、モデルのトレーニングや推論などのプロセスを高速化する。

Tensorコアは、特に組織がモデルのトレーニングに FP8 などの低精度を採用するにつれて、一般的な行列演算の計算速度を向上させる。精度を維持しながら、精度を一段階下げるごとにスループットがほぼ 2倍になる。現在、シミュレーション ワークロード内の特定の演算のみが、Tensor コアの恩恵を受けることができる。これらの演算は、多くの場合、全体の実行時間のごく一部を占め、全体的なパフォーマンスに大きな影響を与えることはほとんどない。

AI 向けに構築された低精度の Tensor コアに割り当てられる GPUの物理領域が増えるにつれ、HPC コミュニティは再びハードウェアを利用して、科学的発見を推進する機会を得ている。

これを実現するため、NVIDIA は、科学シミュレーションに関連するより広範なユースケースで Tensorコアを活用するための新しい手法に投資しているという。

理化学研究所計算科学研究センターの内野佑基氏と芝浦工業大学の尾崎克久教授による論文では、Tensorコア内の Matrix Multiply Accelerators (整数行列乗算アクセラレータ) と「尾崎スキーム」と呼ばれるアルゴリズムを用いて、GPU の整数ユニットが FP64 を含む任意精度を実現する方法が示された。

この手法に着想を得て、NVIDIA は、GPU Tensorコアのより大規模なセットを用いて高精度テンソルおよび行列計算を高速化するライブラリを開発しており、精度、パフォーマンス、エネルギー効率の向上に重点を置いている。

これらのライブラリの使用によって、すでに驚くべき効果が実証されている。約1000 個の原子を紫外線にさらすシリコン シミュレーションでは、FP64 ハードウェアを使用した場合と比較して 1.8 倍の速度で実行、さらに同等の結果を導き出したことで、時間とエネルギーの両方を節約した。

図1:BerkeleyGW シリコン シミュレーションにおけるネイティブ FP64 とエミュレーションの性能比較

■AIスーパーコンピューティングが科学を推進

TOP500 リストは、今日のスーパーコンピューターの高精度な速度を強調しているが、混合精度とAIを組み合わせた科学的発見を支えている驚異的な影響力については語られていない。

2024年、ノーベル化学賞と物理学賞はAIを活用した研究者に授与された。Demis Hassabis 氏とJohn Jumper 氏は、Google DeepMind のタンパク質構造予測モデル AlphaFold の開発で受賞。また、トロント大学名誉教授の Geoff Hinton 氏とプリンストン大学名誉教授の John Hopfield 氏は、ニューラルネットワーク アーキテクチャの進化の功績で、それぞれ表彰された。

ハイパフォーマンス コンピューティング (HPC) 分野において権威あるゴードン ベル賞は、KAUST の David Keyes 氏のチームにも授与された。

同チームは、過去 80 年間の大気、地表、海洋波の変動を地表から高度80kmまでの137の高度レベルで1時間ごとに推定する、膨大なERA5気候データセットをエミュレートする混合精度手法を開発した。

混合精度とは、複数の浮動小数点精度フォーマットを組み合わせる手法だ。低精度のデータ型を使用することで、パフォーマンスと効率性が向上し、アプリケーションがリソースを削減しながらパフォーマンスを向上させることができる。

科学者が新しい AI モデルを構築して、科学ワークフローを加速させる中で、科学分野における混合精度の使用はますます一般的になりつつある。

英国では、NVIDIA Grace Hopper を搭載したブリストル大学のIsambard-AIシステムが、Nightingaleなどのモデルのトレーニングに混合精度を使用した。

Nightingale は、画像診断、心臓病学、電子健康記録を統合した、ヘルスケアおよび生物医学研究のためのマルチモーダル基盤モデルだ。他のヘルスケア向け大規模言語モデルとは異なり、Nightingaleはテキストベースのリーズニングだけでなく、画像パターンや標準的な診断手法を活用。膨大な患者データを用いて医学的知見を提供する。Nightingaleの目標は、医師のオフィス アシスタントや遠隔医療トリアージ システムなど、他のヘルスケア アプリケーションの基盤となることだ。

Isambard-AI は、混合精度を用いることで Nightingale のようなマルチモーダル LLM のトレーニングに必要な大規模かつ高い精度を、トレーニングや推論に過剰なハードウェアを必要とせずに実現した。

■HPCの次のイテレーションに向けて

アクセラレーテッド コンピューティング、高度なテンソル テクノロジ、そして混合精度手法の組み合わせは、計算科学を変革することで、AIを活用したさらなる革新の可能性を示している。

JUPITER のようなシステムが TOP500 に加わり、Isambard-AI のようなAIを科学研究に活用する新たな研究や、高精度タスクにおけるTensorコアの性能を加速させる尾崎エミュレーション手法などのイノベーションが生まれるにつれ、新たな時代が到来しつつあると感じさせられる。

スーパーコンピューターは、いくつかの指標で高速化を続けえちくが、速度だけでは十分ではない。重要な科学的課題に対する新たな洞察を得るには、科学的な厳密さを損なうことなく発見を加速して、科学コミュニティや HPC コミュニティ、そして世界のニーズを満たす、スマートで柔軟なアプローチが不可欠となってくるはずだ。

関連情報
https://www.nvidia.com/ja-jp/

構成/清水眞希

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