
生産終了から長い時間が経った人気車種を手に入れる。これは文字にするだけでもロマン溢れる行動である。
だが、10年もしくは20年以上も前に生産を終えたモデルには最新の装備がない。特に問題になるのがドライブレコーダーだ。この10年で、日本人は煽り運転にはドラレコの映像が有効だということを学んだ。後述するが、動画カメラが小型化する以前は煽り運転をされたら力で対応するしかなく、殆どの場合は一方的に暴力を振るわれるだけだった。ドラレコはそれを記録し、証拠として警察に提出できるようにしてくれたのだ。
古いモデルの車を手に入れたら、たとえ前方だけでもいい。ドラレコをつけるべきだ。今回の記事では、ところどころでそれを強調させていただきたい。
ドラレコはスマホで代用できない!
さて、筆者は車を買ってしまった。ダイハツ・コペン「ファーストアニバーサリーエディション」である。新車発売は2003年7月から。
特製の本革製シートと木目調のMOMOハンドルが美しいこの1台、何とカーナビが搭載されている。これはデフォルト装備ではないはずで、先代もしくは先々代のオーナーがデフォルトのオーディオと交換した……のだと思う。そうでなかったらすみません!
このカーナビは残念ながら今年3月一杯で地図更新サポートが終了してしまい、今はただのラジオ兼ワンセグテレビと化している(Bluetooth未対応)。それでも、カーナビであればスマホの地図アプリで代用ができる。いや、今日びスマホアプリのほうがカーナビよりも優秀ではないか。
しかし、ドラレコに関してはスマホで代用が利かない。
これは非常に危ない。
昔の煽り運転対策
煽り運転が今や重大な犯罪行為であることは言うまでもないが、かつて「無理やり停車させられて因縁をつけられる」という出来事に出くわすと、ただひたすら謝るか殴られるかしか手段がなかった。筆者は10代の頃に組み技格闘技の第一人者のA先生に弟子入りしていたが、A先生は高速道路上で強制停車させられた際に暴漢を組み伏せたという逸話を持っている(筆者はその場面に出くわしてはいないが)。
飛んでくる拳を内側から掴み、そのまま柔道で言うところの体落としをかけてアスファルトにズド――――ン! とやったそうだ。さすがは我が師! 筆者はこの話を道場の先輩から聞かされて大いに興奮したものだが、冷静に考えるとこんなことはA先生のような超人にしかできない。
こういう場合、史上最強のプロレスラーとして知られる「鉄人」ルー・テーズならダブルリストロックに取って暴漢の腕をバキッとやるだろうし、「神様」カール・ゴッチなら相手の両足をもぎ取ってしまうだろうが、残念ながらそこまで戦闘力の高い人はあまりいない。
運転免許証を所持する殆どの人は、暴漢の映像をドラレコに収録してそれを保存する必要がある。そして、それ自体が煽り運転を抑制する大きな武器にもなるのだ。
前方カメラだけでも大きな効果!
しかし、自動車整備士ではないただのドライバーがドラレコなど設置できるのだろうか?
それを証明するために、筆者は新しくドラレコを購入した。ユピテルの『DRY-ST510P』だ。発売は2022年3月だが、カメラとしての性能は10万画素720Pに留まっている。前方のみのいわゆる「エントリーモデル」。
実は当初は後方カメラがセットになっているモデルも購入しようと考えていたのだが、それはやめた。理由は2つ。まず、筆者の購入した車はコペンというオープンカーであり、後方カメラの設置には専用の部品が必要という事情がある。これはなかなかの値段で、しかもそれを設置するとなると「ドラレコが路上での安全を担保してくれる」という記事の主旨から逸脱してしまうと考えたからだ。
もうひとつの理由は、たとえ720Pの前方カメラのみでも十分な安全性確保につながるということを強調したいからである。
後方から追突されたら、その瞬間を映像として記録することは当然できない。が、「車がどのように走っていたか」の記録があるだけでも過失割合が左右する可能性もある。これは後方からの煽り運転に遭遇した際にも当てはまる理屈だ。
720Pで十分!
『DRY-ST510P』の最大記録画角は対角105°(水平90°、垂直50°)で、これは前方の視界を常時監視するという意味では十分な性能と言えるだろう。
また、1080Pや4K撮影が当然となっている今の時代、敢えて720Pカメラにした理由は「路上トラブルの記録に映像美は必要ない」ということと「同じ容量のSDカードでもより長い時間録画できる」からだ。路上で相手に体落としをかけないようにするのがドラレコ設置の目的である。
また、『DRY-ST510P』はシガーソケットから電力を供給する仕組みの製品であることにも言及しなければならない。そのため、車の電気系統に配線をつないで……という技術を要する作業は一切不要だ。
ただし、ドラレコとシガーソケットの間をつなぐケーブルはどうしても出てしまう。これを内装に埋め込む手もあるが、ここはより簡単にケーブルを円形に束ねて、運転席の足元に設置したフックにかけるということをやってみた。「設置はより簡単に済ませる」というのが、今回のコンセプトである。
できるだけ早くドラレコ設置を!
この『DRY-ST510P』は、エンジンをかけると自動的に録画が始まる。そして、安価ながらGセンサーも搭載され、事故や急ブレーキを感知してくれる。
筆者はこれを、Amazonで8,580円で購入した。ある筋からもらった1万円分のアマギフを使ったため、実質無料だ。
これで筆者のコペンは、最低限の煽り運転対策装備を身につけたことになる。言い換えれば、旧車もしくはそれに準ずるモデルを購入した場合、できるだけ早くドラレコを設置するべきということだ。
小さな動画カメラが、ドライバーの窮地を救ってくれることは間違いない。
【参考】
DRY-ST510P-ユピテル
文/澤田真一
支払い総額37万円!物価高の真っ只中に激安の名車、初代「コペン」を買っちまった話
物価高が我々の背中に圧し掛かっている。 何か大きな買い物をする際、頭をよぎるのは日々消費しているものの価格だ。自分はこんなものを買う以前に、米すらも買えないので...