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老後資金の出口戦略、大丈夫?FIRE実践者たちが提唱する〝4%ルール〟が日本で通用しない可能性

2025.06.13

日本で検討すべき主な出口戦略いろいろ

では、具体的に日本の個人投資家が使える主な出口戦略を紹介します。

【定率引き出し: 資産に応じて一定割合を取り崩す】

定率引き出しは、毎年資産残高の一定割合(%)を取り崩していく方法です。例えば「毎年、年初時点の残高の3%を生活費に充てる」といったルールを決めて運用と引き出しを並行します。資産の増減に応じて引き出し額が増減するため、マーケットが低迷した年は支出も自動的に抑えられ、資産寿命が延びやすい利点があります。いわば果樹園の収穫を毎年の実り高に合わせて調整するイメージで、凶作の年でも木自体を残し、豊作の年にはたくさん収穫するイメージです。

例えば毎月の食費や光熱費など基礎的な支出は別途安全資産から賄い、旅行や贅沢品などは資産収益の状況に応じた定率引き出し部分から出す、といった具合にメリハリをつけると安心感が増すでしょう。

【定額引き出し: 毎月・毎年一定額を取り崩す】

定額引き出しは、その名の通り毎年(あるいは毎月)決まった金額を取り崩す方法です。例えば「毎月20万円ずつ預金を取り崩す」「毎年240万円を年初に売却する」など、金額ベースで計画を立てます。定率方式と逆で、生活費の額が安定するため家計管理は容易です。公的年金の定額給付と合わせれば、会社勤め時代の月給のような感覚で収入を得られ、精神的な安心感があります。

しかし、マーケット環境に関係なく一定額を取り崩すため、資産残高の減り方によっては途中で枯渇するリスクがあります。特に退職直後に市場暴落が起きて資産評価額が大きく減ったのに従来通りの額を引き出し続ければ、元本へのダメージは定率方式より深刻です。また長生きして計画期間を超えてしまった場合、文字通りお金が尽きてしまう危険もあります。定額引き出しは「資産が十分に大きい」「残り寿命もおおよそ想定内」という場合に向いており、実際には定率と定額を組み合わせて柔軟に調整するのが現実的です。

公的年金との併用:土台となる収入と資産を組み合わせる

日本の老後資金戦略で忘れてはならないのが公的年金の存在です。多くの人にとって65歳以降の基礎収入となる年金は「第二の給与」のようなもので、生涯にわたり受け取れる安心感があります。出口戦略を考える際は、まず年金収入で賄える部分(ミニマムな生活費)を洗い出し、不足分をどう資産取り崩しで補うかという発想が有効です。言い換えれば、公的年金で生活費の土台を支え、不足分や余裕部分を自分の資産から取り崩す「二本立てプラン」です。

例えば公的年金で毎月15万円得られる人が、ゆとりある生活に毎月25万円必要なら、差額10万円を資産から取り崩す計画を立てます。年金は物価連動で多少増減するとはいえ基本的に定額収入ですので、この差額分について上記の定率・定額・バケット等の戦略を適用していく形です。年金受給開始前に早期退職する場合は、受給開始までのブリッジ期間も考慮しましょう。

例えばFIREを目指す人なら、年金が出る65歳までの生活費は全て自分の資産でカバーする必要があります。その場合、65歳までの無年金期間用の資金と、65歳以降の年金補填用の資金を分けて計画すると、安全圏が見えてきます。

公的年金を「堅い土台」としつつ、自助の資産運用で上乗せするイメージは、家を建てる土台と柱に例えられます。土台(年金)がしっかりしていれば多少の地震(経済変動)が来ても家計は倒れにくいですが、土台だけでは質素な暮らしに留まります。そこで柱(私的資産)を上手に使って豊かな生活空間を作っていくのです。柱の太さ(取り崩し額)は臨機応変に調整しつつ、土台とのバランスを取りながら長期にわたって家計を支えていきましょう。

可変的支出管理:支出にメリハリをつけて資産寿命を延ばす

最後に、出口戦略の視点から日々の支出管理にも触れておきます。資産を長持ちさせるコツは「出て行くお金」をコントロールすることにもあります。退職後の生活費を一律に○万円と決めるのではなく、景気や資産状況に応じてメリハリをつけるのです。具体的には、生活費を「必要な支出」と「柔軟に増減できる支出」に色分けして考えます。

例えば食費・住居費・医療費など最低限必要な支出(いわば固定費)は極力安定的に確保し、一方で旅行や外食、贅沢品購入など可変的な支出(娯楽費や嗜好品費)は資産の余力に応じて増減させるのです。こうすることで、市場が悪化して資産が目減りした年には贅沢費を絞り、資産の目減りを緩やかにできます。逆に運用が順調な年には少し旅行に出かけるなど、楽しみも取り入れつつ資産寿命を延ばすことが可能です。言ってみれば、家計にも「緊急時モード」と「平常時モード」を用意しておくイメージです。

このような可変的支出管理は、予算に対する意識を高めてくれる副次効果もあります。「今月は出費が多かったから来月は抑えよう」といった調整は、現役時代の家計管理でも普通に行いますよね。それを老後の資産管理にも応用するだけです。大切なのは無理のない範囲で楽しみと節約のバランスをとることです。ずっと緊縮生活では張り合いがありませんが、一方で気づけば湯水のごとく浪費していた…では資産が持ちません。自分なりの優先順位を決めて、使うときは使い、引き締めるときは引き締める。このメリハリこそが、長い老後を豊かに過ごす鍵と言えるでしょう。

まとめ:自分に合った出口戦略で「人生100年時代」を豊かに生きる

老後資金の出口戦略は、一度決めたら終わりではなく、人生の状況変化に合わせて見直し続けるものです。市場環境、健康状態、家族構成、公的制度の変更など、長い人生では様々な変化が起こります。大事なのは「これが正解」という単一のルールに頼り切るのではなく、複数の戦略を組み合わせて自分なりの安心プランを作ることです。

4%ルールのような単純な指針も出発点としては役立ちますが、それにとらわれず、日本の現実に合った安全率で設計し直す視点が必要です。

老後のお金の不安を減らしつつ、せっかくの人生を「やりたいことを我慢せずに楽しむ」ための出口戦略を身につける第一歩、それは今まさに計画を立てることから始まります。

文/鈴木林太郎

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