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世界で注目を集めるスイス発の学習プログラム「国際バカロレア」とは?

2025.06.12

 未就学児から中高生のお子さんを持つ親御様の間で、近年、国際バカロレアが注目を集めています。国際バカロレアは英語でInternational Baccalaureate、略してIBと呼ばれ、スイスのジュネーブに本部を置く非営利教育財団によって1968年に設立された国際的な教育プログラムです。グローバル社会で活躍できる人材の育成を目的としていることから、国際的に注目されているのはもちろん、日本においてもIBのプログラムを導入する学校が増えてきています。

国際的に通用する大学入学資格

 IBは世界共通のカリキュラムを提供しており、教育課程においては単なる知識の詰め込みではなく、批判的思考力、探求心、自己管理能力を養うことに重点を置いています。そのカリキュラムは、3歳から19歳までを対象とした以下の4つのプログラムで構成されています。

1.PYP(Primary Years Programme):3~12歳向け(小学校)
2.MYP(Middle Years Programme):11~16歳向け(中等教育)
3.DP(Diploma Programme):16~19歳向け(大学進学準備)
4.CP(Career-related Programme):職業教育志向の学生向け

 特にDP(ディプロマ・プログラム)は世界的に認知度が高く、各国の大学進学に有利とされています。DPは2年間のプログラムで、日本でいえば高校2、3年生の課程にあたり、以下の6つの教科群のなかからそれぞれ1科目ずつ選択します。

1.言語と文学(母国語)
2.言語習得(外国語)
3.個人と社会(歴史、経済など)
4.理科(生物、化学、物理)
5.数学
6.芸術

 さらに、上の教科を受けるほかに以下の3つのコア科目を取る必要があります。

1.EE(Extended Essay):独自の研究論文を執筆
2.TOK(Theory of Knowledge):知識の本質を探る哲学的な学習
3.CAS(Creativity, Activity, Service):創造性、活動、社会貢献

 DPを修了すると世界統一の卒業試験を受け、一定の成績を取れば国際バカロレアのディプロマ(修了資格)が授与されます。このIBディプロマは国際的に通用する大学入学資格で、世界のトップ大学で広く認められていることから、日本でも注目を集めるようになっています。

 日本では文部科学省がグローバル人材育成の観点からIBの普及・拡大を推進しており、ディプロマ保有者は日本の大学入試の受験資格も認められています。DPを提供する国内の国際バカロレア認定等校は昨年末時点で71校(うち候補校7校)で、その他のプログラムを提供する学校を含めると、全部で251校(うち候補校73校)となっています。

好奇心や思いやりを育み、知識やスキルを発展させることを重視

 IBディプロマが注目を集めている理由は、国際的な視野と未来のグローバル社会に対応できる人材を育成する教育方針にあります。特に次の5つ「大学進学の道」「批判的思考力と探求心の育成」「幅広い教養の習得」「自己管理能力の向上」「他言語習得の機会」が評価されています。

 1つ目の「大学進学の道」については、IBディプロマは、前述したように世界中の多くの大学でその資格が認められています。それだけでなく、IBのカリキュラムは大学レベルの研究やレポート作成スキルを養うため、大学入学後の勉学や研究においてスムーズな移行が可能となります。

 2つ目の「批判的思考力と探求心の育成」については、IBでは「IBの学習者像」という10の人物像が示されており、それは「探求する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念を持つ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」となっています。

 ここでは、好奇心や思いやりを育み、知識やスキルを発展させることの重要性が説かれています。そのため暗記型の学習ではなく、自ら問いを立て、論理的に問題を解決する能力が重視されます。さらに、「知の理論(TOK)」や「課題論文(EE)」などのコア科目を通じて、独立した思考力や研究能力が鍛えられます。

「知の理論(TOK)」は知識の本質とは何かを学ぶ教科で、物事の本質に切り込む意義ある問いの立て方と、それにどのように取り組むか等について学びます。「課題論文(EE)」は生徒が自分の関心のある研究分野に取り組み、研究成果を論文にまとめるというものです。

 3つ目の「幅広い教養の習得」は、上に挙げた「言語と文学(母国語)」「言語習得(外国語)」「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」の6つの教科群をバランスよく学ぶことが求められることから、特定の分野に偏ることなく、総合的な視野とスキルを持った人材の育成が可能となります。

 4つ目の「自己管理能力の向上」は、IBプログラムでは課題やレポートが多く、長期的な計画を立てる力が必要なことから、生徒は学業だけでなくCAS(創造性、活動、社会貢献)活動なども通じて、時間や課題の管理といった管理・調整スキル、および感情やモチベーションを管理する情意スキルの両方を含む自己管理スキル、リーダーシップを身に付けることができます。

 そして5つ目の「他言語習得の機会」は、IBプログラムでは母国語以外の言語で学習を行うことが求められており、英語、フランス語、スペイン語など多言語に触れることができます。複数の言語でコミュニケーションを行うことで異文化への理解と敬意を育むことができ、これは将来的な国際的なキャリアを考えるうえで非常に有利です。

世界各国からの同級生たちと寝食を共にして学ぶボーディングスクール

 前述したように、日本でIBプログラムを提供する学校は増えつつありますが、海外には昨年10月時点で、160の国と地域に約5900校もあります。海外のほうが学校の選択肢が圧倒的に多いという点と、早いうちからの異国での異文化・多言語経験ができるということを考えると、小中高校生のうちからの海外留学には数多くのメリットがあります。

 その場合、現地のインターナショナルスクールに入学し、学校以外の滞在先はホームステイという方法もありますが、「ボーディングスクール」と呼ばれる全寮制の学校に入学するケースもあります。スイス留学では、ボーディングスクール留学が主流となっています。

 ボーディングスクールは比較的小規模なところが多く、学校の寮で同級生たちと生活を共にしながら、昼間は学校で授業を受けます。親と離れて生活するため自立心が養われ、勉学だけでなく普段の生活も同級生たちと一緒であることから、語学能力やコミュニケーション力、公共の精神も磨かれていきます。

 ただし、海外の多くのボーディングスクールやインターナショナルスクールではIBプログラムを採用していますが、学校を選ぶ際には注意すべきポイントがあります。例えば、IBプログラムを提供している学校がすべてのIB教科を提供しているわけではなく、IB教科のうちの一部のみを提供する学校もあります。

 そのため学校を選ぶ際、特に大学入学準備コースともいえるDBを受けたいと考えている場合には、卒業後に自分が進学したい大学や学部が特定の教科のIB得点を求めているかを確認し、その教科が留学を考えている学校で提供されているかを確認する必要があります。また、学校によっては生徒のIBの平均得点が高いところがあり、海外の有名大学に進学したい場合は、そのような学校を選択して高得点を狙う必要もあります。

 IBのカリキュラムは勉強量がかなり多く、例えばスイスのボーディングスクールでは大自然を活用した肉体的に負荷が高い屋外アクティビティにも参加する必要があり、限られた時間のなかで勉強や課題もこなしていかなければなりません。

 DPでIBディプロマ取得に挑戦するとなると、最後の2年間は学業でとても忙しくなるため、高校生活を思うようにエンジョイできないこともあります。しかし、その2年間で得られた知識や時間管理、自己管理能力は将来必ず役に立つことでしょう。

 また、ボーディングスクールで寝食を共にして学んだ同級生たちとの国際的な人脈は、社会に出てから大きな財産となることは間違いありません。これも、海外のボーディングスクールでのIBプログラムが国際的に注目されている大きな理由の一つなのです。

文/田山 貴子(たやま・たかこ)
「日本の子どもたちに、スイスの教育環境を活用していただきたい」という想いのもと、日本の子どもたちが将来、国際社会の中で、充実した生活を送ることができる成人になるための最適な教育環境を提供すべく、日本とスイスの架け橋をするなど、留学サポート活動を行っているhttps://swiss-ryugaku.com/

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