
返礼品が貰えて、寄附額に応じた税控除がある制度「ふるさと納税」の総額は、1兆円台を突破し、その利用者は右肩上がり。その一方で、納めたお金の使い道の透明性が低いという課題もある。
“自分が寄附したお金がどこへ行き、どんな結果を生んだのか知りたい!”
そんな欲求を満たしてくれる新しいふるさと納税制度として、クラウドファンディング型のふるさと納税というものがある。
「ガバメントクラウドファンディング」とも呼ばれ、ふるさと納税のITプラットフォームを運営するトラストバンク社が商標登録もしている。
クラウドファンディング型のふるさと納税にはどのような特長があるのか。従来のふるさと納税と何が違うのか。税控除は受けられるのか。詳しくまとめた。
ふるさと納税の受入額の推移とクラウドファンディング型の実施状況
出典:総務省
制度開始から約15年で受入額が1兆円を突破したことがわかる。また、このうちクラウドファンディング型は約167億円で全体の1.5%と僅少に見えるが、今後の増加は容易に想像がつく。
クラウドファンディング型ふるさと納税の例
・ふるさとチョイス
クラウドファンディング型ふるさと納税で先駆け的なサービスで、公共インフラの整備や、福祉や教育課題などの自治体が抱える課題解決プロジェクトが多い。また同社リリースによれば、2013年9月に佐賀県のNPO支援プロジェクトが、クラウドファンディング型ふるさと納税の初事例として紹介されており、歴史は10年以上あることがわかる。
・ふるなびクラウドファンディング
上場企業が運営するふるさと納税サービスである。イベント開催や観光呼び込みなど募集地域での新たな取り組みへの応援を募るプロジェクトが多い。
従来のふるさと納税と「クラウドファンディング型ふるさと納税」の違い
従来のふるさと納税とクラウドファンディング型のそれとの違いを見てみよう。
下表に一般的クラウドファンディングとの違いも含めて、項目別に違いを整理した。この比較表を基に共通点と相違点を詳しく説明しよう。
【クラウドファンディング型ふるさと納税と類似施策の比較】
(1) 従来のふるさと納税との共通点・相違点
共通点は、国の法律によって定められている「ふるさと納税制度」の枠組みの中で運営されている点。納税された資金の使途やその進捗、返礼品の取り扱い、プロジェクトの企画、目標金額の設定などの運用面は、各自治体が条例などで定めている。そのため、自治体によって多様性に富んだ制度になっている。
相違点は、資金使途の具体性や、納税者の寄付動機など。従来のふるさと納税では、返礼品が中心となり、魅力的な返礼品を用意しそれを好む人が、ふるさと納税の動機となっている。一方、クラウドファンディング型では、特定のプロジェクト内容や目的への共感、支援したい気持ちが主な動機となっている。ふるさと納税と同じで税控除が可能な金銭的メリットがあるものの、返礼品の設定はほぼない。
(2) 一般的なクラウドファンディングとの共通点・相違点
共通点は、特定のプロジェクトに対し、期間や金額を定めて出資を募集する点。
相違点は、プロジェクトの運営者や起案者やリターンの性質が異なる点。クラウドファンディング型ふるさと納税は、運営者・起案者が地方自治体に限定されている。また、一般的なものは、金銭や製品・サービスの利用がリターンとなっている。