
歌いかけはぐずる乳児の気分を落ち着かせる
乳児に歌いかけることは、乳児の気持ちを落ち着かせる簡単で安全、かつ費用もかからない方法であることが新たな臨床試験で明らかになった。新しい歌や歌を使った育児のアイディアを教えられた親は乳児に歌いかける頻度が高くなり、その結果、乳児の全般的な気分が改善することが示されたという。オークランド大学(ニュージーランド)心理学分野のSamuel Mehr氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に5月28日掲載された。
論文の筆頭著者である米イェール大学児童研究センターのEun Cho氏は、「歌うことは誰にでもできるし、ほとんどの家庭ですでに実践されている。われわれは、このシンプルな習慣が乳児の健康に実際に効果のあることを証明した」と話している。また、研究グループは、乳児の気分の改善は、親と乳児双方の生活の質(QOL)の向上につながるため、結果的に家族全体の健康にも有益であると述べている。
この研究では、米国とニュージーランドの乳児の親110人を対象に10週間のランダム化比較試験を実施し、乳児期に親が子どもに歌いかけることの効果を検討した。対象者は、介入群(54人)と対照群(56人)にランダムに割り付けられた。1週目はテスト前期間、2~5週目は介入群の介入期間、6週目はテスト後期間とし、その後、対照群にも同じ介入が4週間にわたって行われた。介入は、親による乳児への歌いかけの頻度を増やし、歌のレパートリーを広げることを目的としたもので、具体的には、親に新しい歌を教えるためのカラオケ風の歌の動画や乳児向けの音の出る歌の絵本の提供、週に1回のメールでのニュースレターの配信、定期的な連絡だった。全期間を通じて、スマートフォンで乳児と親の気分などを質問票を通して記録するEMA(エコロジカル・モーメント評価)が実施された。
その結果、介入により親が乳児に歌いかける頻度が高まることが明らかになった。論文の共著者であるアムステルダム大学(オランダ)心理学分野のLidya Yurdum氏は、「乳児にもっと歌いかけるよう促し、それをサポートするための基本的なツールを提供すれば、親は自然に乳児に歌いかけるようになる」と話す。
また親は、乳児に歌いかけることが増えただけでなく、ぐずる乳児を落ち着かせるための方法として歌を使うことも明らかになった。Mehr氏は、「われわれは親に、乳児がぐずっているときに歌いかけるようにと伝えてはいないが、親は実際にそのために歌を使ったのだ」と話す。そして、「親は、乳児を落ち着かせる上で歌がどれほど効果的なのかを介入を通してすぐに理解し、乳児の感情をコントロールするツールとして直感的に歌の力を借りたのだろう」との見方を示している。
さらにEMAからは、歌いかけの頻度が高まった親の乳児は、対照群の乳児と比較して、気分が全体的に大きく改善したことも示された。ただし、親自身の気分には有意な改善が見られなかった。
研究グループは、「これらの結果は、乳児への歌いかけを推奨する低コストプログラムが乳児を落ち着かせ、その結果、親のストレス軽減に役立つ可能性があることを示唆している」と述べている。またYurdum氏は、「同程度に効果的で導入の簡単な方法があるのだから、高価で複雑な介入にばかりに焦点を合わせる必要はない」と話している。(HealthDay News 2025年5月29日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cdev.14246
Press Release
https://medicine.yale.edu/news-article/singing-to-babies-improves-their-moods/
構成/DIME編集部
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